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聖女候補4

各話表紙:嘘つき聖女 嘘つき聖女~

 ここで聖女と認定されなくては、家族を養うための多額の報奨金は二度と手に入らないのだ。

 その焦りがアシャンの声を荒くさせた。

「なにが困るのですか? お金目当てだからですか? 我々は慈善事業団体ではありません」

 微笑んだままのダリルに聞き返され、アシャンは言葉に詰まる。

「……っ。わ、わたしは……」
「はい、言いたいことがあるなら伺いますよ」

 なぜか一向に笑顔を崩さないダリルの顔が、酷く冷たいものに思えてくる。

(この人は、見た目通りの人じゃないんだ。こんなにやさしい笑みを浮かべているのに、少し怖い)

「わたしは、ただ、わたしが聖女になることで家族にもっと楽をさせてあげたくて……それで……」

「報奨金が欲しかったんですね。気持ちはわかりますが、認めることはできません。神殿はお金を恵む場所ではありませんから」

 ダリルのいうことは正論だが、アシャンの心はどんどん重く沈んでいく。

「どんな理由があるにせよ、邪な心を持った者が聖女になれるはずがないでしょう?」

 足を組み、膝頭に組んだ手を置いたダリルは、氷のような微笑を浮かべていた。

「……」

 そして、さらに追い打ちをかけるようにダリルはこう言った。

「前の四人も含め、あなたたちは一ヶ月間、投獄されます」
「な……ん、ですって……」

 投獄の二文字に、アシャンは体が凍りつく。

 頭から氷水を浴びせられたような衝撃に、紫の瞳が見開かれた。

「聖女になろうとする者が、神を欺き嘘をつくからこういうことになるんです。しかし、神も非情ではありません。一ヶ月、牢で反省すれば、また家に戻ることができるのですから」

 にっこりと微笑んだダリルが、馬車の天井から自分の手元に垂れ下がった紐を引くと、アシャンが座っている座席が後ろへ回転し、荷台らしきところに転がり落ちた。

「きゃあ!」

 転がり落ちたアシャンだが、思いのほか痛くない。

 さっと周りを見回すと、先に馬車に乗った四人がいた。

「まあ、あなたもダメだったのね」
「大丈夫?」

 と口々にほかの聖女候補に気遣われた。

「さて、これで全員揃いましたね。これから皆さんは首都まで連行されます。首都についたら、神を欺いた罪で洞窟でできた牢に入れられることになります。それではまた、後ほどお会いしましょう」

 柔らかな笑みを浮かべたダリルは世間話をするような口ぶりで言い、荷台の扉を締めたのだった。

「なっ、なっ……なによこれー! こんなのいやー!」

 市場に売られる子牛の気分を味わいながら、アシャンは叫んだ。

 

 聖女候補――と偽った五人の乙女を乗せた馬車は、辺境の村から首都へ向けて駆けていく。

 規則正しい蹄の音が荷台に乗っていても聞こえてくる。

(どうしよう。わたしがいなくなったら誰があんなに時間がかかる洗濯するのよ! まだ乳飲み子だっているのに)

 アシャンは村に残してきた家族のことが気になって仕方がない。

「お願い、ここから出して!」

 こうやって査察官のダリルに懇願するのは、もう何度目か。

「それはできません。何度も言ったでしょう? 神を欺いた罪を償ってもらわなくてはならないと。こちらも迷惑しているんです。偽物の聖女候補が後を絶たないので、時間も労力も余計にかかっているんです。二度とこういうことがないように、戒めの意味も込めて一ヶ月の投獄という形になっているのですよ」

「だったらせめて三日に短縮して!」

「ダメです。あなただけ贔屓するわけにはいきません。もとはと言えば、聖女だと偽ったご自分の身から出た錆でしょう。諦めてください」

 穏やかな笑みとともに正論を告げられ、アシャンはぐうの音も出なくなった。

(ああ、こんなことなら聖女候補なんて応募しなきゃよかった! お金欲しさに、なんてバカな選択をしちゃったの……)

 自己嫌悪に陥ったアシャンは、両膝を抱え小さくうずくまる。

「アタシたちが言えた義理じゃないけど、元気だして? 一人なら心細くても五人ならきっとなんとかなるわよ」

 隣に座る女性に励まされ、辛いのは自分だけじゃないのだと、ほんの少しだけアシャンは気持ちが軽くなった。

「それにしてもあんまりよねぇ。なにも投獄までしなくていいのに……」
「だけど、嘘ついちゃったのは事実だしね……」

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嘘つき聖女~
~桜猫*日和~