★2/15:雑記更新 ・「嘘つき聖女候補~」と「座学の女王さま~」をメインに更新中。

聖女候補2

各話表紙:嘘つき聖女

 アシャンは幼い妹を抱っこして立ち上がる。

 そして、窓際で母乳を与えている母親の元へ歩み寄った。

「お母さん、そろそろ時間みたいだから、わたし行ってくるね。期待して待ってて?」

「アシャン、本当に行くの? 大丈夫かねぇ、お母さんは心配だわ。だって、偽物だとばれたら首都まで連行されて牢送りになるってうわさだよ」

 生後半年の妹に乳を飲ませながら、母親は心配そうにアシャンを見上げる。

「大丈夫よ! なんとかなるって! じゃ、またあとでね。お父さんにもよろしく言っといて」
「はいはい、気をつけてね」
「はーい!」

 元気よく返事をしたアシャンは、妹のニーナをそっと床に下ろすと軽い足取りで広場へと向かったのだった。

 

 ――同時刻。広場の手前に立派な馬車が止まっていた。

 馬車の窓から外の様子を伺うように、青年はちらりと辺りを見回した。

 それから、やれやれといった様子で溜息を吐く。

 どうやらこの村は、彼が今まで訪れたどの土地より鄙びているようだ。

 アーモンド型の美しい琥珀色の瞳に小さな落胆が映る。

 村の広場にはすでに四人の『聖女候補』が来ていた。

 事前情報では五人と聞いていたのだが、あと一人来ていない。

 しかし、彼女たちの誰一人として、癒やしの力を持っていないことがひと目見ただけでわかり、また無駄足だったかと彼は視線を外から馬車の中に戻したのだった。

「一人残らず牢送りにしてあげます……偽りの聖女など」

 そう呟くと彼は静かに立ち上がり、馬車を降りた。

 

「あ! もうみんな集まってるじゃないー! 急がなきゃ!」

 広場の手前二十メートルまで来ていたアシャンは、慌てて駆け出した。

 前方には四人の聖女候補と青年が一人立っている。

 近づくにつれ、青年がきっちりとした衣装をまとっていることや、その容貌がとても整っていることが窺えた。

 アシャンがほかの聖女候補の一番右に並んだとき、ちょうど約束の時間を知らせる鐘がなった。

 午前と午後の間、お茶の時間ともいう。

(よかった、なんとか間に合った! 聖女になろうっていうのに、いきなり遅刻したら印象悪いものね)

 間に合ったことに、ほっと胸をなでおろすアシャン。

「聖女候補の皆さんはじめまして。私は査察官のダリルと申します。本日はお集まりいただきありがとうございます」

 そう言って、微笑んだダリルはとても優しそうで、男性なのに綺麗だと評したくなるほどだ。

 アシャンだけでなく、ほかの聖女候補たちも、目の前の美しい査察官の笑みにときめいてしまったようだ。

 丁寧で柔らかな物腰に、不思議を人を落ち着かせるような微笑みは上辺だけでない品の良さを感じさせた。

 同じ村の男など比較にもならない。

(すごい……こんな綺麗な人が男だなんて。首都の男の人たちはみんなこの人みたいに綺麗なの?)

 アシャンはダリルに視線が釘付けになる。

 真珠のような温かみのある白い髪は、襟足が長く前髪は鼻のあたりまで伸びて頬にかかっている。

 琥珀色の瞳は光の加減で金色にも見える。

 白と水色を基調とした、落ち着いた色合いの査察官の服もとてもよく似合っていて、貴族と並んでも遜色ない。

 そんなアシャンのことなど歯牙にもかけない様子で、ダリルは話を続ける。

「これから一人ずつ、馬車の中で面談を行います。順番に呼びますのでお待ちください」
「はい」

 聖女候補たちはそれぞれ返事をし、順番を待つ。

「では、あなたから始めましょう」

 さっそく一人目の聖女候補がダリルと共に馬車の中に入っていった。

 二人の姿が見えなくなると、アシャンの隣りにいた聖女候補が口を開く。

「ねえねえ、あの査察官すごく素敵ね! 生きたお人形さんみたいじゃない!?」

「わかるー! アタシもそう思ってたの! あんな人が恋人になってくれたらいいわよねぇ。あなたもそう思わない?」

 と話を振られ、アシャンも頷く。

「そうね。あんなに綺麗な男の人なんて生まれて初めてみたわ」
「ねー! 声も知的で落ち着いた大人の男性って感じで、すごく好みだわぁ」

 広場に残った聖女候補たちは美しい査察官の話で持ちきりだ。

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嘘つき聖女~
~桜猫*日和~