★2/15:雑記更新 ・「嘘つき聖女候補~」と「座学の女王さま~」をメインに更新中。

悪霊憑きと浄化6

各話表紙:嘘つき聖女

 ただでさえ美しいダリルに蕩けるような笑顔を向けられ、アシャンは頬が熱くなるのを感じた。

 なぜか嬉しいと思ってしまった。

(なっ、なんなの。この嬉しいような恥ずかしいような気持ちは――)

「もう少しゆっくりしたら、一緒に寝ましょう」
「え?」

「悪霊は神出鬼没ですから。いつでも対応できるようにしておく必要があります。そのためにあなたと寝食を共にするのです。心配は無用です。必ずあなたを悪霊から守ってみせます」

「同じベッドで寝るんですか?」
「敬語になってますよ、アシャン」
「あっ。同じベッドで寝るの?」

 慌てて言い直すアシャン。

「はい。すぐ対応できないと困りますから。なにか不都合がありますか?」

 金にも見える琥珀色の瞳で覗き込まれると、アシャンの鼓動がどくんと跳ねた。

 彼自身は意識していないのだろうが、そこはかとない色香が漂う。

「いえ……べつに……」

 なぜか無性に気恥ずかしくて、アシャンはふいっと視線を逸らしてしまった。

 それから、しばらくして寝る時間が訪れた。

 アシャンとダリルはベッドに横たわり毛布を被った。

 大きめのベッドは二人寝転んでも、まだ余裕がある。

「おやすみのキスをしてもいいですか?」
「え?」

 思いもよらぬ言葉にアシャンはドキッとする。

「あなたは男女の触れ合いに慣れていないようですので」
「……家事に追われて、恋愛なんて……二の次だったから」

 アシャンが力なく笑うと、ダリルがそっと頬に触れ優しく撫でる。

「苦労したんですね」
「苦労とは少し違うわ。九人家族で大変だけど、弟や妹たちの世話は楽しいから」

 家族のことを思い出し、アシャンの表情がやわらかくなる。

「頑張りやさんなんですね」

「それは当たってるかも。我ながらよくやってると思うわ。家族が着ている服は全部わたしの手作りなの」

「それはすごいですね。ですが、ここでは頑張らなくていいですよ。神に与えられた息抜きだと思って、楽にしてください。困ったことがあれば、すぐ私を頼るように」

 慈愛に満ちた瞳でダリルに見つめられ、アシャンは心がぽかぽかと温かくなった。

「ありがとう。最初はなんて酷い奴なんだろうって思ったけど、あなたはいい人だったのね」

「馬車で首都まで連行されたのですから、そう思われても仕方のないことです。神殿側としては、あのような手段を取らざるをえないほど、偽の聖女候補が多いということです」

「査察官っていうお仕事も大変なのね」
「そうですね。では、そろそろ眠りましょうか」
「そうね、おやすみなさい」

 アシャンがおやすみの挨拶を言うと、ダリルがそっと顔を寄せ、アシャンの額に口づけた。

「おやすみなさい、アシャン」

 不意にダリルに額に口付けられ、焦ったアシャンは、その夜あまりよく眠れなかった。

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嘘つき聖女~
~桜猫*日和~