10/24:雑記更新 10/23~:更新再開「吸血鬼と不良神父の溺愛情事」10/22:祝☆完結「癒やしの聖女は神官に体を狙われています」

悪霊憑きと浄化4

各話表紙:嘘つき聖女 嘘つき聖女~

 神殿内のダリルの執務室から外に出ると、辺りはすっかり日が落ちて真っ暗になっていた。

 ぽつぽつと民家の灯りが点っているが、ダリルが手にしたランプがなければ視界が悪いことこの上なかっただろう。

 道すがらダリルが話を続ける。

「言うまでもないことですが、このことは誰にも言わないように。あなたが悪霊を宿した状態で神殿内にいるとわかれば、手荒な真似をする者がでてくるでしょうから」

「はい……」

(言われるまでもないわ。こんな……浄化のために、この人と体を重ねなくちゃいけないなんて知られたら、恥ずかしさで死んじゃうわ)

「それから、明日からあなたは私付きの神官見習いとして、共に過ごすことになります。特に難しいことはありません。私の後をついて回るだけで大丈夫です」

「はい……」

 頭では理解できても、心が納得できない状態で、アシャンの返事は歯切れが悪い。

 それに加え、見知らぬ土地で見知った顔もなく、頼れる者もいないことがアシャンの気持ちをより寂しく不安にさせた。

「手を繋ぎましょうか」

 自分を振り返ったダリルにすっと片手を差し出される。

「え、あの、なんで?」
「別に深い意味なんてありません。嫌ですか?」
「そんな、ことは……」

 アシャンはダリルの手をじっと見つめる。

 すらりとした綺麗な手だが、しっかりと男性のものだとわかる大きな手だ。

 戸惑いながらアシャンは彼の手のひらに自分の手を置いた。

 すると、包み込むように優しく握り返された。

 自分の手などすっぽりとダリルの手の中に収まってしまう。

 触れ合う肌を通して、彼の手のぬくもりが伝わってくる。

 手のひらのぬくもりが、実家においてきた弟や妹たちを思い出させて胸がキュンと締め付けられる。

 それと同時に、気持ちが落ち着いていくのをアシャンは感じた。

 五分ほど歩くとダリルの家に到着した。貴族の屋敷のような立派な家だ。

 門をくぐると玄関まで二十メートルほど歩いた。

 重厚感のあるドアを開けて中に入ると、召使いたちが出迎えてくれた。

「お帰りなさいませ、旦那さま」
「ただいま戻りました。彼女をお風呂に入れてあげてください。着替えも忘れずに」

 ダリルの言葉に召使いたちは「かしこまりました」と言い、アシャンを風呂に案内する。

「どうぞ、こちらです」
「は、はい……」

 家についた途端、風呂に直行させられ落ち着かないが、今日一日でいろんなことが起きすぎて、ゆっくりしたいと思っていたのも事実だ。

 アシャンは雛鳥のように召使いの後をついていく。

 案内された風呂は一面白のタイル張りで、とても広くて所々に繊細な装飾が施され綺麗だ。

 脱衣所で服を脱ぎ、浴室に入ったアシャンは体を洗うと、湯に浸かった。

「はぁ……きもちいい……」

 温かなお湯に全身を包まれると、体中の緊張が解れていくのがわかる。

 あまりの心地よさにこのまま湯船で眠ってしまいそうだ。

(わたし、これからどうなっちゃうんだろう……聖女候補になれないばかりか、悪霊まで憑いてたなんて――)

 しかも、その悪霊を浄化するにはダリルと肌を重ねなくてはならないのだ。

 早く終わって欲しい気もするが、それは自分が望まぬ相手に純潔を捧げることにほかならない。

 アシャンは複雑な心境だ。

「せめて癒やしの力があれば……」

 ないものねだりをしても仕方がないことはわかっているが、口にせずにはいられなかった。

 聖女として認められていれば、報奨金が手に入ったのだ。

 それなのに自分は、悪霊を祓い終わっても得るものがなにもない。

「帰ったらまた地道に頑張らなきゃなぁ……」

 しばらく湯に浸かり、体が温まったところでアシャンは風呂を出た。

 ふたたび脱衣所に戻ると、綺麗に折り畳まれた着替えが用意してあった。

 そっと手を触れると、肌触りがとてもよい。

 上質な布でできた服だ。

 手にとって広げてみると、それは清楚なデザインのネグリジェだった。

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嘘つき聖女~
~桜猫*日和~