★2/15:雑記更新 ・「嘘つき聖女候補~」と「座学の女王さま~」をメインに更新中。

02*潰れたリンゴ2

表紙:各話

「殿下の健康管理もわたくしの業務の一部です。あなたが王都から離れこのような田舎に来られたのは療養のためと伺っております」

「……まあな」

「すでに傷が塞がっているようですが、その脇腹の傷は女性に刺されたものだと聞いております」
「ごふっ」

 ズバリ言われてラウルは食べかけの果実を喉に詰まらせた。

「な、なぜお前がそれを知っている!? 口止めしたはずだ」
「ふふ、守秘義務がありますのでお答えできません」
「くそ、一体どこから情報が漏れたんだ……」

 パキッと暖炉の中で薪が弾ける。雪解け水が流れる季節とはいえ、まだまだ寒さは拭えない。

 少し火力が弱いと判断したジェシカは、暖炉に追加の松の木をくべた。

「性欲に寒さは関係ない、ということでしょうか」

 ポツリと呟く。

「うっせえ。俺はまだ二十一だぞ。この程度の寒さどうってことない」

「さようでございますか。女性は冷え性が多いので、もう少し気遣ってあげた方がよろしいかと」

「余計なお世話だっての」

 初対面にして王子の皮が剥がれてしまったラウルは、ジェシカの前で素を晒している。

「この屋敷には今後性的な目的で女性を招くことは禁止させていただきます。ご了承くださいませ」

「なに!? お前俺に欲求不満で死ねというのか?」

「ご自分の右手があるではありませんか。身から出た錆、という言葉がございますね」

「冗談じゃない。大体ただのメイドの癖にお前はなんでそんな偉そうなんだ。ここが城ならお前は不敬罪で斬首だぞ」

「要らぬお世話でございます。朝食がすんだら、共に薪拾いに参りましょう」
「なぜ俺が薪拾いなどしなくてはならん。召使の仕事だろう」

 確かにラウルの言うことはもっともだ。

 ジェシカはリンゴを手に取るとこう口にした。

「なぜなら、この屋敷には殿下とわたくしの他にはいないからです。出来ることはしていただかなくては、生きていけません」

「俺がメイドごときの言うことを聞くと思うのか?」

「お手伝いいただけないのであれば、その日のお食事はありません。あまりにも酷いようですと……」

 手にしたリンゴを王子の目の前に差し出すジェシカ。

 その手にぐぐっと力を込めていくと、リンゴはいびつに歪みぐしゃっと潰れた。

「……!」

 ラウルは信じられないという顔をジェシカに向ける。

 無理もない、自分より細腕の彼女がリンゴを握りつぶすなど予想の斜め上を行っていた。

「――握りつぶします」

 なにを、とは言わない。

 

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王子は巨乳好き~
~桜猫*日和~