★2/15:雑記更新 ・「嘘つき聖女候補~」と「座学の女王さま~」をメインに更新中。

03*薪拾い

表紙:各話

 おいおいおい。一体どうなってるんだよ、このメイドは……!

 ラウルが狼狽えるのも無理はない。

 一般的に女性というものは非力な存在だ。

 この国にも女騎士は数えるほどしかいないし、男でもリンゴを握りつぶせる猛者はそうそういないのではなかろうか。

「どうかなさいましたか?」
「い、いや」

 ジェシカのビン底眼鏡に見つめられ、ラウルは思わず青い瞳を逸らした。

 畏怖と称賛の気持ちがないまぜになり複雑な心境のラウルである。

「そんな薄着では風邪を引いてしまいます。どうぞこちらをお召しください」

 ジェシカは防寒もかねた衣装をラウルの座るベッドにそっと置く。厚手のコートに襟巻き、皮の手袋などが一式揃えられている。

「って、えらい厚着だな」
「このくらい当然です。薪拾いに行くんですから」
「そんなもの近くの町で買って運ばせればいいだろう」

「それでは殿下のためになりません。これを機に庶民の生活を味わっていただきたく存じます」

「そんなクソめんどくせぇことやってられるか。俺は絶対行かないからな」

「勇者ジェイがそのようなことを聞いたらさぞがっかりするでしょうね。自分が守った王家の子孫がこんなものかと」

 そこでラウルの表情が変わる。
 勇者ジェイ。国中の少年の憧れと言ってもいい存在だ。

 もちろんラウルも例外ではない。

 スターフィールド国が危機に陥ったとき、仲間と共に魔王軍に立ち向かい見事討ち取ったと言われている。

 絵本にもなっている、この国では誰もが知る伝説の勇者だ。

「聞き捨てならねぇな、その言葉。よし、薪拾いでもなんでも受けて立つ」
「……存在するかどうかもわからない勇者をずいぶんと信じていらっしゃるのですね?」
「真偽の程は問題じゃない。男の子は誰だってジェイに憧れているさ」

 言いながらラウルは着替えに手を伸ばす。

「さようですか。やる気が出たなら良しといたしましょう」

 ジェシカはラウルの着替えを手伝いながら秘かに微笑んだ。

 女遊びで王を困らせている王子も英雄譚に憧れていたとは、と。

 最後にふわりとラウルの首に毛糸の襟巻きを巻いてやる。

 すると、すんすんとラウルが鼻を寄せてきた。

「なんだかいい匂いがするな、お前」

「わたくしを口説いてもなにもでません。そしてわたくしはお前でも貧乳メイドでもなく、ジェシカという名があります」

「かわいげのねー女だな」
「貧乳は女ではないのでしょう?」

 それは何気なく口にした一言だった。

 自分で言っておきながらラウルはとてつもなく居心地悪くなった。

 

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王子は巨乳好き~
~桜猫*日和~