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座学の女王様4

各話表紙:座学 無垢で落ちこぼれな~

「ああ……やはり母さんの言うとおりだったな。そのつもりで荷物は準備しておいた。うしろの扉の横に鞄があるだろう?」

 学院長の言葉にうしろを振り向けば、旅行用の鞄が置いてあった。

「まぁ……準備の手間が省けました」

「アンネリーゼ、私は無理強いはせん。だが、母さんがすごく乗り気でな……お前が魔力を使えないのは難産で自分が上手に産まなかったからだと、ずっと気に病んでいたらしい。普段は気が強くてまったくそんな素振りは見せんのだが……来年の春でお前が卒業できなかったらと思うと、藁にもすがる思いだったようだ」

 アンネリーゼの母親がそう思うのも当然だ。

 このドラクール魔術師学院では、留年は二年までという規約がある。

 もし、進級テストの実技で魔法が使えなければ、どんなに優れた知識を持っていようとアンネリーゼは退学となってしまうのだ。

「そう……お母さまが賢者に頼ることを決めたんですね。お父さま、お母さまに伝えておいてください。わたしは、お母さまの子供に生まれてよかったって」

 それは嘘偽りのない、アンネリーゼの正直な気持ちだ。

 魔法を使えないことで馬鹿にされたりと辛い思いはしてきたが、アンネリーゼの母親はそれに負けないくらい愛情を注いでくれた。

 『実技が駄目なら筆記試験で一番になればいい』と励ましてくれたのも彼女だ。

  そして実際、皮肉交じりではあるが『座学の女王さま』といわれるまでになり、それがアンネリーゼの現在の心の支えになっている。

 そしてアンネリーゼの母親は、父親である学院長の補佐としてここで働いている。

「そうか……お前は強い子だな。とても誇らしい」

 感極まったのか、椅子から立ち上がった学院長は、アンネリーゼに歩み寄り力強く抱きしめた。

「わたし、絶対に魔法を使えるようになって戻ってきます! それまで待っていてくださいね、お父さま」

「ああ、もちろんだ!」

 アンネリーゼは、心なしか学院長である父が涙ぐんでいるような気がした。

 熱い抱擁から解放されると、意を決して旅立ちの言葉を口にする。

「お父さま、わたしは大丈夫です。……では、行ってきます」
「アンネリーゼ……ああ、行っておいで。お前ならきっとできる」

 アンネリーゼは旅行鞄を両手で持つと、学院長に向き直り可憐な花が咲き綻ぶように笑みを浮かべた。

「はいっ!」

 そしてアンネリーゼが部屋の外に出ようと扉を開けると、その先に彼女の母親が立っていた。

「お母さま!?」
「アンネリーゼ……! ごめんなさいね……ごめんなさい、私がもっとちゃんと……」
「お前、見送るのが辛いって家に戻ってたんじゃないのか?」

 予想外の展開に学院長は驚きを隠せないでいる。

「あなた……だって、何日後に再会できるかわからないのよ? そう思ったらこの子の顔を見ずにはいられなくて……!」

 今度は母親に熱い抱擁をされるアンネリーゼである。

「お母さま、見送りに来てくれてありがとう。必ず魔法を使えるようになって戻ってきます……!」 

(確信なんて無い。だけど、なんだかできそうな気がする……ううん、なにがなんでも魔法を使えるようになるんだ!)

「ええ、そうね。でも辛かったらいつでも戻っていらっしゃい。そしたらまたなにか他の方法を一緒に考えましょう」

 母親の腕から解放されると、アンネリーゼは離れがたく気持ちがぐらついたが、それになんとか耐えた。

 涙ぐんだ母親の顔はアンネリーゼの心を激しく揺さぶった。

「気をつけてね、アンネリーゼ」
「父さんと母さんはいつでもお前を見守っているし、味方だからな」

 前もって待たせておいた馬車まで見送られ、アンネリーゼは馬車の窓越しに頷く。

「お父さま、お母さま、行ってきます!」

 アンネリーゼが言い終わると同時に御者が手綱を捌き、馬車が出発したのだった。

 

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無垢で落ちこぼれな~
~桜猫*日和~