10/24:雑記更新 10/23~:更新再開「吸血鬼と不良神父の溺愛情事」10/22:祝☆完結「癒やしの聖女は神官に体を狙われています」

座学の女王様2

各話表紙:座学 無垢で落ちこぼれな~

「しかもこれで学院長の娘なんだから、笑えるわよね~! 勉強はできるくせに一度も魔法を使えたことが無いんだもの! きゃはははっ!」

 さらに別の生徒がつけ加える。

「遠い先祖に竜の血を引く者がいるのに、あなたにはその欠片も受け継がれていないのねえ?」

 筆記試験で常に首位であるアンネリーゼへの嫌味が、ふんだんに含まれていて、言葉の棘が見えるようだ。

「……っ」

 ここまで言われて悔しくないわけではないが、素直でやさしいアンネリーゼは黙って耐えるだけだ。

 血がにじみそうなほど唇を噛みしめ、今にも溢れそうな涙を必死に流すまいと我慢する。

「およしなさい! そういうあなたたちは一度でも筆記で彼女に勝ったことがあるのですか? 講師としてこれ以上の侮辱は許しません。あなた方は魔法を極めんとする仲間なのですよ」

 講師の諌めるような言葉に、教室内がしんと静まり返る。

 ――誰も、ただの一度も、アンネリーゼに筆記試験で勝てた者はいなかったのだ。

 そして、そのことがアンネリーゼの存在意義にもなっていた。

 彼女が度々訪れる誹謗中傷に耐えてこられたのは、自分は筆記試験では誰にも負けないという確固たる信念があるからだ。

 実際、アンネリーゼは大好きな魔法の講義を熱心に学び講義が終わってからも、さらなる知識を求め古代語魔法の本を解読することが趣味で日課になっている。

 もっとも現存する古代語魔法に関する書物は蔵書がほとんどない上に入手しづらく、さほど作業は進んでいないのだが……。

(講義が終わったらお昼休みだし、また図書館に行って古代語魔法関連のことを調べよう)

 やがて魔法理論の講義が終わると、アンネリーゼは席を立ち、学院の東側にある図書館へ向かう。

 その途中、風に揺られて子供が手を開いたような形をした葉っぱが、ひらりと宙を舞う。

「ネイガルの葉がもう黄色に……秋なんですね。綺麗な色」

 アンネリーゼは赤や黄色に色づきはじめた木々を眺めながら、わずかに目を細めた。

 口元にも控えめな笑みが浮かぶ。

 間もなく図書館の入り口に着こうとしたところで、うしろから声をかけられる。

「アンネリーゼさん、学院長が呼んでいます」

 自分を呼び止めた女生徒が顔なじみでないことから、おそらく通りすがりに言伝を頼まれたのだろう。

「お父さまが?」
「はい。院長室でお待ちです。ちゃんと行ってくださいね。伝言は伝えましたからね!」

 言うべきことを伝えると女生徒はさっさと立ち去っていった。

「……わたし、なにかしてしまったんでしょうか?」

 知りようのない不安にアンネリーゼの表情が曇る。

 院長室は図書館とは正反対に位置する。

 アンネリーゼは、とぼとぼと院長室を目指し歩きはじめた。

 五分ほど歩き院長室の扉の前まで来ると、アンネリーゼは深呼吸をし重い気持ちで扉を叩く。

 間をおかずドアノブが回り扉が開いた。

 目の前に院長である父親が立っている。

 しかし、その表情は晴れやかではない。

「来たな、アンネリーゼ。入りなさい」
「失礼、します……」

 アンネリーゼが扉を閉めると、すでに父である学院長は窓を背にして執務机の奥の椅子に腰かけていた。

 四十代なかばの聡明で穏やかな雰囲気の男性だ。

 裾の長い落ち着いた乳白色のローブが似合っている。

「あー……アンネリーゼ、お前が頑張っていることは、よく知っている。それで、だな……その……」

 自分から呼び出しておきながら、父である学院長の言葉はとても歯切れが悪い。

「お父さま、わたしになにを仰りたいのですか?」

 アンネリーゼは詰め寄りたい気持ちを抑えて、執務机の前に立つ。

2+
↑読了ついでにポチッと(*´ω`*)桜猫にちゅ~るが贈られます。
↑読了ついでにポチッと(*´ω`*)桜猫にちゅ~るが贈られます。
無垢で落ちこぼれな~
~桜猫*日和~