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座学の女王様

各話表紙:座学 無垢で落ちこぼれな~

 講師の女性らしい柔らかなひとことに教室内がざわめく。

 体のラインにゆったりと沿ったロングドレスの上から黒のローブを羽織った理知的な大人の女性だ。

「あの魔法理論のテスト、ありえなくらい難しかったわよ」
「俺の耳よ、今こそ外界の雑音を退けるのだ!」

 あちこちから結果を知るのが怖いといった様子で、生徒たちの呟く声が聞こえる。

 生徒たちが動揺するなか、アンネリーゼは落ち着いた表情で教壇を見つめる。

 今年二十歳になったばかりの彼女は、一途に魔法のことばかり勉強してきたので、恋愛にはまったく縁のない生活を送っている。

 魔術師学院の制服に身を包んだアンネリーゼは、頭に白いカチューシャをつけ、長い髪はふわりと腰の辺りで広がっている。

 そして、その髪は魔力を色濃く宿す青色だ。青と言っても深い色ではなく、淡い瑠璃色といった様子である。

 花を例えに出せばネモフィラの花びらの色だ。

 この世界では、その身に魔力を宿す者は必然的に青い髪で生まれてくる。

 ひと目で魔力の有無がわかるのはいいが、魔術師を目指す者にとって髪が青でないことは死刑宣告を食らうにひとしい。

 ――ここはグリムフェザー王国の首都オレアンにある、数百年にわたる伝統を誇る『ドラクール魔術師学院』だ。

 入り口の鋼の門には、優雅なデザインのドラゴンの紋章が装飾されている。

 ドラゴンはこの魔術師学院のトレードマークだ。

 荘厳だが華美にならない程度の装飾をなされた窓から初秋の日差しが光の帯のように差しこみ、年代を感じさせる木造の床や机を暖かく照らす。

 ドラクール魔術師学院は、魔法を極めんとする者すべてにその門戸が開かれている。

 老若男女問わず志があれば誰でも入学でき、在籍している者はほとんどが二十代までの若者である。

 全寮制で各自に個室が与えられている。

 ここで魔法に関することを学び、習得した者だけが魔術師と名乗ることを許されるのだ。

 また、可愛いと評判の制服が、入学を希望する少女たちがほかの学院ではなく、ドラクール魔術師学院を選ぶ大きな理由のひとつにもなっている。

 紺色を基調としたジャンパースカートは真ん中が深紅の布で色分けされており、色の変わり目に燻し金のボタンが十二個、縦に並んでいる。

 ジャンパースカートの下には紺色のブラウス。

 袖口は通常のブラウスより倍近くあるディープ・カフスで、五個の燻し金のボタンが縦に並んでついている。

 足元は黒のハイソックスかタイツ、頭にはヘッドドレスのような可愛らしい紺色の帽子があるが、これは個人の自由で身につけてもつけなくても良い。靴も自由だ。

「最高得点は満点、アンネリーゼさん」

 講師の成績発表を聞いたアンネリーゼの表情が、わずかにやわらいだ。

 髪と同じ青い瞳に安堵の色が浮かぶ。

(よかった……今回も首位を守れたわ)

 今回「も」とアンネリーゼが思うのにはわけがある。どうしても自分の中でこれだけは他人に譲れないのだ。

 なぜなら――。

「さっすが、『座学の女王さま』は違うな~! 今回も満点だってさー!」
「ほんと羨ましいぜ、筆記試験だけならトップだもんな~! 筆記だけなら!」
「ちょっと、あんたたち妬みはかっこ悪いわよ?」

 さまざまな声が上がったが、どの言葉もアンネリーゼを心穏やかにしてくれるものではない。

 彼らの声には程度の差はあれ、明らかな嘲笑が含まれている。

 『座学の女王さま』――それはアンネリーゼにとって嬉しくない称号だった。

 その言葉には多大な皮肉がこめられていると知っているからだ。

「そうは言ってもよぉ、こいつ実技はドンケツじゃん?」
「そのせいで二年も留年してるしなー」

 彼らのひとことで教室内の半数以上の生徒が笑い声を上げる。

 耳に入れたくない核心を突く言葉に、アンネリーゼは苦しくなった胸元をギュッと手で掴んだ。

 悪ノリした女生徒がさらに続ける。

 

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無垢で落ちこぼれな~
~桜猫*日和~