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帰らずの森の賢者2

各話表紙:座学 無垢で落ちこぼれな~

 ――そのころ、アンネリーゼはというと。

「今、門をくぐったと思ったのに……ここは、玄関のようですね」

 辺りを見回すと、目の前の建物は巨大な木と一体化したものであることがわかる。

 貴族の屋敷ほどもある太い幹のあちこちに窓や階段がついている。

 高さは魔術師学院にある時計塔よりもあるだろうか。

 蔓系の植物の葉に大部分を覆われ、この巨木の家はほぼ緑色だ。

 途中から生えた枝には小鳥たちがとまっているのが見える。

(おとぎ話に出てきそうなメルヘンなお家……こんな可愛らしい家にさっきの賢者さまが住んでるなんて、ちょっと面白い)

 などとアンネリーゼが和んでいると、突然、目の前の扉が開いた。

「……っ」

 アンネリーゼはとっさのことに言葉が出ない。

 扉から顔をのぞかせたのは、さきほど見た白虎と――見目麗しい青年だった。

 魔力の証である青い髪はポニーテイルにしていて、それでも膝のあたりまで垂れているほどに長い。

 白い長衣を身にまとい高位の魔術師といった感じだ。

 アンネリーゼが事前に確認していた情報では二十六歳である。

「お前が、アンネリーゼとやらか。学院長の娘だと聞いているが……」

 そう告げる賢者と思われる青年の切れ長の目が、確認するようにアンネリーゼを頭からつま先まで一瞥する。

「け、賢者さま……ですか?」

 アンネリーゼは青年の顔に釘づけになる。

 彼の理知的な左右の瞳は色違いだった。

 俗にいうオッドアイだ。

(右目がアイスブルーで、左目がアイスグリーン……まるで真冬の凍った湖のような……)

「違うと言ったらどうする?」

 自分を見下ろす色違いの瞳は、目の前にいるアンネリーゼ自身にまったく興味が無いとでも言いたげだ。

 人というより無機物を見ている感じに近い。

「えっ……違うん、です、か?」

 確かに声は森のなかで聞いたものと同じだが、問い返されたアンネリーゼは不安になる。

 戸惑いの色を浮かべ青年を見上げれば、小さな溜息を吐かれてしまった。

「……言ってみただけだ。それで、お前は正真正銘、女なのか?」
「え……?」
(どこからどうみても女にしか見えないと思うんだけど……)

 アンネリーゼが訝しんでいると、ニュッと胸元に大きな青年の手が伸びてきた。

 それはそのまま、アンネリーゼの胸を撫でまわす。

「よくわからん……ささやかだがあるようにも感じるし」

 判断しかねるといった様子で、賢者の青年は顎に手を置き考えるような仕草をする。

「きゃ、きゃあぁっ! なっ、なにするんですかっ! あなた変態ですか!」

 いきなりのことに呆けていたアンネリーゼが我に返り悲鳴を上げる。

 慌てて、同年代の女性と比べると控えめな胸を両手で覆い隠す。

「誰が変態だ。俺は真実を確かめようとしているだけだ。実際、お前の胸はなさすぎて男女の区別がつかん」

「なっ……ひ、ひどいです! 胸で判断するなんて! 声だって体格だって、顔だってどう見ても女性でしかないと思うんですけどっ!」

 アンネリーゼは恥ずかしさと悔しさで泣きそうだ。

(なぜこんな仕打ちを受けなくてはならないの!? わたしは、ただ魔法を使えるようになりたいだけなのに……)

「なら、お前が正真正銘、女だという証を見せてみろ。そしたら家の中に入れてやろう」

「そんな! 人の胸を勝手に触っておいて、それは虫がよすぎるのではありませんか!?」

「しるか。俺は信用ならん者を家にあげるつもりはない。もういい、俺がじかに確かめる」

 賢者はそう言い捨てると、聞き覚えのない短い単語を唱えた。

 なにか魔法を使ったのだろう。

 そして、その数秒後――。

「え? や……いやあぁっ!!」

 アンネリーゼが身につけていた服が一瞬にして木っ端微塵に弾け飛んだのだ。

 ……下着の一枚までも。

 とっさに胸と秘所を隠そうとしたのだが、それより早く賢者の手がアンネリーゼの両手首を掴み阻止された。

 思いもよらぬ事態に、アンネリーゼの顔が一気に熱くなる。

(いや! 見ないで、見ないで! 恥ずかしくて死んでしまいそう……っ)

 動揺するアンネリーゼの一糸まとわぬ裸体を、賢者の冷めた目が上から下まで一瞥した。

「……ついてないな。正真正銘、女のようだ……入るがいい」

 淡々と告げた賢者は、さっさと部屋の中に入っていった。

「な……なんなんですか……もう……っ!!」
(変わり者だとは聞いていたけれど、これはあんまりだわ!)

 アンネリーゼは涙目になり、へなへなとその場にへたりこんでしまった。

 ――この最悪ともいえる出来事が、アンネリーゼと賢者の出会いであった。

 

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無垢で落ちこぼれな~
~桜猫*日和~