★2/15:雑記更新 ・「嘘つき聖女候補~」と「座学の女王さま~」をメインに更新中。

憂いの王4

魔導王:各話表紙

「夢ならわたしも見ました。ディースさまのものとは内容が違いますが……今よく思い返してみると、夢の中のあの綺麗な人は、あなただったのかもしれません」

「私は、ひと目見て君だとわかったよ。候補者の列が近づくにつれ、深紅の髪の娘を見るにつれ、何度席を立ちかけたことか。だけど君を遠目に見つけて、気がつけば歩き出していた」

 ディースファルトは穏やかな青紫の瞳で、ノエリアをじっと見つめる。

 見ているこちらが恥ずかしくなるほどに、慈愛に満ちた眼差しだ。

「そ、そうですか」

 こうも真っ直ぐ見つめられると、わけもなく恥ずかしい。

 ノエリアの頬が自然と赤みを帯びた。

「君もそうだと思ってたよ。ほかの嫁候補がいる前であんなに真っ直ぐ見つめてきたから」

「だ、だってあの時は……自分でもわからないんですけど、どうしても目が離せなくて、ずっと見つめていたいと思ったんです」

(ああ、言ってるそばから恥ずかしい。一瞬で、王様のことを好きになってしまった。だって強烈に、『この人に違いない!』って思ったんだもの)

 ディースファルトは微笑む。

 自分の隣で頬を赤らめるノエリアが可愛くてしょうがないらしい。

「ねえ、それは、私に一目惚れしてくれたと受け取ってもいいのかな?」

 ズバリ言われて、ノエリアはびくっと肩を震わせた。

「へっ? えっと、あの、その………………はい」

 図星な問いに激しく動揺しつつ、答え終わったときは消え入りそうな声だった。

 どうして初めて会ったその日にこんなことを聞かれる羽目になるのだろう。

 そう思うとノエリアの胸は早鐘を打ち、体中の血液が沸騰するのではないかと思えるほど顔が火照ってしまう。

 恥ずかしさのあまり今すぐにここから消えていしまいたいと思った。

「照れなくてもいい、私も君と同じだからね」
「……ほんとう、ですか?」

(こんなに綺麗な王様が、村娘にすぎないわたしに惚れる要素なんて皆無に思えるけど……)

「ほんとだよ。私も君から目を離せなくて立ち往生していただろう?」
「言われてみれば……そうでした、ね」

(あれは完璧に二人の世界に入っていたわ……)

「ノエリア。いきなり花嫁候補と言われてもぴんとこないだろう。その上、私たちはお互いのことをよく知らない。だから、ね。一週間余裕を持たせようと思うんだ。一週間同じ城で過ごしてみて、私と今後やっていけるか答えを出してほしい」

「ディースさまは本当にお優しいのですね。わかりました。試用期間ってことですね」
(花嫁になれと命令してしまえば済むことなのに。王様は強要しないんだ)

 ノエリアが微笑むと、ディースファルトは彼女の頬にそっと手を添える。

 そして声のトーンを少し落として、耳元で囁いた。

「もっとも、私はもう君を手放すつもりはないのだけどね」

 すらりと伸びた形の良い指が、頬を撫でたかと思うと唇を淡く掠めて離れた。

 たったそれだけの行為で、ノエリアの胸の鼓動は激しく高鳴った。

 そればかりか思わず腰がゾクリ、と疼いてしまった。

(男の人なのに、なんて艶っぽい顔をするんだろう。そんな声で囁かれたら、誰だって恋してしまうわ。まして彼氏いない暦イコール年齢のわたしなんてイチコロよ)

 

 ――と、いうようなことがあり、ノエリアは与えられた自室でぼーっとしていたのだ。

「ディースさまって、本当に素敵な王様ね……そんな素敵な人がわたしの旦那さまになるかもしれないんだ」

 村を出るときは正直村人たちを恨めしく思ったノエリアだが、今となっては感謝しかない。

(ありがとう、みんな。これから先どうなるかわからないけど、後悔だけはしないように頑張るわ)

 あのあと更に会話を楽しんで、部屋に戻ってきたらすっかり日が暮れていた。

 しかし、ディースファルトは日が暮れて間もないというのに、ノエリアを部屋まで送り届けたころにはとても眠そうにしていた。

「すまないね。もっと君と話していたいけど、そろそろ寝る準備に移らなくては。また明日会おう。おやすみ、ノエリア」

 そう言うと、ディースファルトはくるりと踵を返し自室へ歩いていった。

 そしてノエリアは彼の背中が見えなくなるまで見送ってから、部屋の扉を閉めたのだった。

「明日も会えるんだ……楽しみだな」

(さて、夜も更けてきたことだし、わたしもそろそろ寝よう。おやすみなさい)

 

↑読了ついでにポチッと(*´ω`*)桜猫にちゅ~るが贈られます。
↑読了ついでにポチッと(*´ω`*)桜猫にちゅ~るが贈られます。
贄の魔導王は~
~桜猫*日和~