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憂いの王3

魔導王:各話表紙 贄の魔導王は~

 視界に誰もいないことを確認すると、ディースファルトはふう、と溜息をついた。

(妻か……。この一日十二時間しか起きていることの出来ない体で)

 ディースファルトはその身に大きな欠点を抱えていた。

(この身は私が魔力を使うほどにその反動として、強制的に眠りに引き込まれてしまう。きっと娶ったとしても、王の仕事をこなしながらでは中途半端になってしまうだろうな。普通の人間より触れ合う時間も短いだろう。構ってやれず寂しい思いをさせるかもしれない。逆に私が寂しくなるかもしれないな)

 寂しい思いをするくらいなら、最初から妻などいなくて良い。

 その方がお互い幸せだ。妻が欲しくないわけじゃない。

 だがそれはもう数百年も前に諦めたことだ。

(――きっとこの身は国が滅ぶ最後のそのときまで、この地に囚われているのだろう)

 そんな未来が容易く想像できるからこそ、ディースファルトは最初の伴侶を失ってから、新たに妻を迎えることをしなかった。

「……」

 浮かぬ気持ちのまま、ディースファルトはその夜眠りに落ちた。

 

 赤い花弁がひらひらと舞っている。

 ダンスを踊っているようだ。

 それを掴もうと手を伸ばすと、その手は誰かの肩に触れた。

 赤い花弁は流れるような長く美しい深紅の髪へ変じる。

 視界に入ってきた深紅にディースファルトの胸がどくん、と脈打った。

 今まで見たこともない見知らぬ女性なのに、その存在を感じただけで言葉に尽くせぬとてつもない安心感に包まれたのがわかる。

(彼女はいったい、何者なんだ? 他人に対してこんな感覚を抱いたのは初めてだ)

 深紅の髪の女性は振り向くと、ふわりと笑ってこう言った。

 しかし顔はぼやけてよく見えない。

「いままでずっと孤独で辛かったでしょう? でも、もう大丈夫。わたしがいるから安心して」
「君は、誰だ?」

「わたしは****。あなたを救うために来たの。魔力に縛られたあなたを解放するために」
「そんなことが、ただの人間にできるわけがない……」

(解放されるものならそうなりたい。私は強大な魔力を持ったために、人としての寿命も超えて今日まで生きてきた。いや、魔力に生かされてきたのかもしれない――)

「見ててね?」

 なにを? と思ったが、女性の言うとおり見守ることにする。

 彼女はディースファルトの手を両手で包み込むように握る。

 するとそこから淡い光が発生し、蛍のようにあたりを漂い始める。

(よく知っている……これは魔力の源であるマナだ。しかも、これほどはっきりと見えるのは稀だ)

 ディースファルトは少し驚きつつ静観し続ける。

 蛍のような美しいマナは、ディースファルトの肌に雪が溶けるようにすうっと吸い込まれていく。

 あとからあとから、磁石に引き寄せられるかのごとく吸い込まれていく。

 それに伴い、ディースファルトの中に力が漲ってくる。

「……信じられない」
「遅くなって、待たせてごめんなさい。もうすぐ会えるから――」

 ずっと顔はあやふやで見えない彼女が、微笑んだのが気配でわかる。 

「わかった。待っている。ここで、この王都で。ずっと待っている。だから早く……私のそばにおいで――」

 ディースファルトがそう言い終ったとき、同じタイミングで女性の姿は大気に溶け込むようにすうっと消えた。


「――というわけでね、星術師の予言だけなら私も重い腰を上げなかったのだけど。あんな夢を見てしまったら、藁にもすがる思いというか、限りなくゼロに近い希望であっても可能性にかけてみたくなったんだ」

「夢……」

「そしたら、本当に君が現実に現れた。今更花嫁候補を募るなんて我ながら馬鹿げていると思っていたけど、思いつきでもなんでもやってみるものだね」

 ディースファルトは心底嬉しそうに、ノエリアの深紅の髪に触れ、愛でるように撫でた。

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贄の魔導王は~
~桜猫*日和~