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憂いの王2

魔導王:各話表紙 贄の魔導王は~

「はい、では、ディース……さま、と呼ばせていただきます」
「さまも要らないのだけどね」
「だだだ、駄目です、無理ですっ。まだ死にたくありません」

 自分のような田舎娘がディースファルトを呼び捨てにして、不敬だと罪に問われでもしたら大変だ。

「その言いようだと、私の名がまるで呪いの呪文に思えてしまうね」
「わああっ、ごめんなさい! 違うんです、あまりにも恐れ多くてですねっ」

 ノエリアはあわあわと狼狽える。

「ふふ。わかった、様付けで妥協しておこう」

 ふわりと微笑んだディースファルトの美しさといったら。

(なんて綺麗な笑顔で笑うんだろう……)

 思わずノエリアは見蕩れていた。

 そして我に返るのに、ディースファルトに数回名前を呼ばせてしまった。

「申し訳ございません……」

 恥ずかしくて恥ずかしくて、見蕩れていたなどと、とても口に出来ない。

 まともにディースファルトの顔を見ることも出来ず、ノエリアは俯いてしまう。穴があったら入りたいとはこのことだ。

「ノエリア、謝らなくて良い。手を握っても良いだろうか?」
「はい」

 恥ずかしくて逃げてしまいたいと思う気持ちとは裏腹に、美しい王に触れてもらえるのが嬉しくて、ノエリアは素直に返事をする。

 ディースファルトはそっとノエリアの手を取ると、両手で羽毛でも包み込むように優しく握り締めてくる。

「緊張しているね、私の花嫁候補殿は。私が怖い?」

 ノエリアはふるふると頭を振った。

(こんなに優しく接してくれる人が、怖いはずがない。村には王様みたいな触れ方をしてくる男の人は、一人もいなかったもの。女性というよりは友達に近い感覚だったわよね、みんな)

「ノエリア、君と出会えて本当に嬉しい――」

 ディースファルトは彼女と出会ってからずっと上機嫌だ。

(さっき出会ったばかりなのに、こんなに喜ばれると逆に恥ずかしいというか……。わたしなんてただの健康なだけの村娘なのに)

「あの……どうしてわたしなんですか? わたしはディースさまと違って強大な魔力も持ってませんし、外見だって飛びぬけて綺麗なわけじゃないのに」

「結論から言うと、一目見て『君』だとわかったからだよ。実は妻を娶ることなど微塵も考えていなくて、花嫁候補を募ったあとも乗り気じゃなかった」

「ではなぜ募集をかけたんですか?」
「うん、実は――」

 ディースファルトは順を追って話し始めた。

 ――今からひと月前のこと。

 星の動きを読み、未来を予言する星術師たちが神殿の一角に集まりざわついていた。

 それから一時間もしないうちに、王であるディースファルトにある予言がくだされたのだ。

「陛下、本日行った星読みの結果、半年以内に<呪粉>の強化が起こるようでございます。そしてそれを防ぐには陛下お一人の魔力だけではきつい状況になるようです」

「そうか……また私の活動時間が減りそうだね」

「ですが、悪いことだけではありません。魔力の源泉が国内にいるという結果がでました。そしてその存在は、陛下の生涯の伴侶である可能性が高いのです」

 星術師は顔の見えない深い紺色のフードの下から続けて語る。

「魔力の源泉とは、無尽蔵のマナを湧き立たせる者。その者のマナを十分に享受するには、惜しみない愛情が必要です。陛下が愛をもって接するほどに、マナの供給は安定し御自らのお心も潤いましょう」

「伴侶か……なんだろう、暗に妻を娶れと言われている気がするな」

(魔力の源泉が存在することはありがたいが、私はもう妻を娶る気はないというのに。魔力を大量に消費し、普通の人間以上に休息を必要とする体では、十分に愛してやれないだろう)

 ディースファルトの表情が曇る。

(私は国王とは名ばかりの――――いや、考えるのはよそう)

「しかし<呪粉>の強化が起こるとは厄介だな。結界が破られることは早々ないだろうけど」

「はい、陛下。ですが万が一ということもございます。どうか、魔力の源泉を妻としてお迎えすることをご一考ください」

「わかった。とりあえず頭の片隅には置いておこう。君たち星術師の予言はこれまで外れたことの方が少ないからね」

「御意」

 そう短く答えると星術師はすっと王の前から姿を消した。

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贄の魔導王は~
~桜猫*日和~