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憂いの王

魔導王:各話表紙 贄の魔導王は~

「はあ……夢みたい」

 ノエリアは夢見心地で、ぼーっとしている。

 頭の中は王であるディースファルトのことでいっぱいだ。

 国を治めて数百年と聞くからには外見通りの年ではないだろうが、見た目はノエリアと同じ二十代半ばだ。

 月の光を丁寧に紡いだような、銀の髪。

 青にも青紫にも見える不思議な、心の中まで見通すような綺麗な瞳。

 すっと通った鼻筋。薄く引き締まった唇。

 初めて目にした王は、最高の職人が作り上げた繊細な人形のように美しかった。

 すらりとした体躯に純白の正装がとてもよく似合っていた。

 一国の王というよりは最高位の魔術師といった風体だ。

 当然王の威厳のようなものは伝わってきたのだが、それだけではなかった。

 耳に心地よい低めの声は、落ち着いていて波立たない湖面のような穏やかさだった。

 その声を聞いているだけで、王都まできた疲れが取れていく気がした。

 柔らかく上品な物腰は、ノエリアを彼の私室に引き入れるまで自分がお姫さまだと思ってしまうくらいだった。

「王様なのに全然威張ったところがなくて素敵な人だったな。それなのに気品が溢れてて、やさしくて……」

 ほかの候補者たちが騒ぐのも頷ける。

(だけど、本当にわたしが、わたしなんかが……わたしでいいの? これって夢じゃないわよね)

 ノエリアは何度も確認した、自分に与えられた部屋をもう一度見回す。

 大理石の床に白亜の壁。窓には繊細な編みこみのレースのカーテンがさがっている。

 天蓋つきのお姫さまが寝るような豪華なベッドに、足の先まで見事な彫刻の施されたテーブルセットが並ぶ。

 室内は元いた自分の家など比べ物にならないほど広い。

 テーブルの上に飾られている花も美しく、それを活けてある花瓶もひと目で高価なものだとわかる。

 しかし成り上がりの領主のように、派手で趣味の悪いものはこの部屋には一つもない。

「今日から、ここで暮らすんだ。わたし……」

(だけど王様も大胆なことするなぁ。あんな、花嫁候補者がたくさん見ている前で、手の甲にキスするなんて。そりゃあ、内心凄く嬉しかったけど……!)

 あの瞬間は、自分がお姫さまになったような気分がしたものだ。

 実際はど田舎のしがない娘でしかないが。

「きゃー!」

 今更ながら頬を真っ赤にして恥ずかしがるノエリアだった。

 

 少し時間は遡る。

 国王ディースファルトと見つめあった後、ノエリアはそのまま手を引かれ城の中を歩き、私室に案内された。

 ワインレッドのふかふかのソファーに王は腰を下ろす。

 そして隣に座るように促され、ノエリアは端にちょこんと腰かけた。

「なぜそんな端っこに座るのかな?」
「いえ、わたしみたいな田舎娘が座ったら汚れちゃいそうで……」

 ディースファルトの言葉にノエリアは苦笑いで返す。

「そんなことはない。それに汚れたら洗えばすむことだ。もっと近くに来てくれないだろうか」
「……はい」

(この人は王様なのに全然威張ってなくて、やさしい。一言、近くに座れって命令すればすむのに、こっちの意思を尊重してくれているんだわ)

 だからノエリアは彼に触れそうな、ぎりぎりのところまで距離を詰めた。

 しかし、赤の他人なのだ。やはりいくらか恥ずかしい。

「君の名前を教えてほしい」
「わたしはノエリアといいます。ディースファルト陛下」
「長いだろう、ディースでいい。ノエリア」

 ノエリアに語りかけるディースファルトの声は仄かに甘い。

 名を呼ばれただけで胸がキュンと高鳴る。

「そっ、そんな! 陛下の名前を気軽に呼ぶなんて恐れ多くて出来ません!」

「大丈夫、本人が良いといっているのだからね。不安なら周りの者たちにも言い含めておこう。だから、ディースと呼んでほしい」

 ここまで言われると、断ることが逆に失礼になりそうで、ノエリアはこくりと頷いた。

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贄の魔導王は~
~桜猫*日和~