Oops! It appears that you have disabled your Javascript. In order for you to see this page as it is meant to appear, we ask that you please re-enable your Javascript!

王都へ5

魔導王:各話表紙 贄の魔導王は~

「実はわたし、生まれてこのかた恋愛に縁がなくてですね……」

 ノエリアは村で自分だけが独り身であること、王の花嫁募集をしったことで村人たちに盛大に送り出されたことを騎士に説明した。

 のだが。

 優しげな騎士は肩を震わせ、口元を手で覆い隠している。

(あのー、必死に隠してくれてるのはありがたいのですが、笑いをこらえてるのがまるわかりなんですけど……)

「可笑しければどうぞ笑ってください」

 ノエリアの拗ねたような一言に、くくっと笑いを漏らす騎士。

「いや、申し訳ない。あなたのような理由で来る方もいるのですね……万歳三唱で……くっ」

「そんなに可笑しいなら、素直に笑ってください。逆に恥ずかしいわ」
「あははははは!」

「ふん。どうせ記念参加みたいなものだし、王様とやらのゴソンガンを拝見したらとっとと帰りますよ」

「ああ、どうか気を悪くしないでほしい。笑ってしまってすまなかった。私は騎士団長のオードリックと申します」

 言いながらオードリックと名乗った騎士は、ノエリアに右手を差し出す。

「……クルミ村から来たノエリアと申します」

 やや仏頂面なのは大目に見て欲しい。

 複雑な気持ちでノエリアはオードリックの手を握り返し、握手した。

 そして手を離すと、前方からざわざわとどよめきが起きた。

 なにがあったんだろうと、視線を戻すとその先に居たのは――――。

 

 この国、ワイアール国王ディースファルトだった。

 

「陛下! このような所まで出てきては……」

 瞬時にオードリックの表情が引き締まる。

 しかし、国王ディースファルトはノエリアを見つめたまま、ぴたりと動きを止めてしまった。

 それはノエリアも同じだった。もう彼しか目に入らない。

 二人はただただお互いをじっと見つめ続けている。

 理屈どうこうではない。

 目を逸らす気もまったく起きない。

 ひたすらお互いの存在を確認し認める。

 この世に、今この瞬間に、確実に存在していると。

 存在しているという事実だけで、言葉に尽くせぬほどの満ち足りた気持ちになる。

 王は優雅な足取りでノエリアのほうへ歩みを進める。

 一歩、また一歩と彼との距離が縮まるごとに、ノエリアの鼓動が跳ねる。

 言葉を交わしたことすらないのに、王の存在そのものがノエリアにとって至上の喜びだと深く、強く感じる。

 勝手に魂が喜びに打ち震えるのがわかる。

(どうして、こんな気持ちになるの? この人と会えたことが、嬉しくて嬉しくて堪らない……ずっと昔から恋い焦がれていたような気さえする……――)

 王はノエリアの手を取ると、そっと口付けを落とす。

 そして、大輪の花が咲くように、それはそれは綺麗な笑みを浮かべる。

 

「待っていた、君を――――」

 

 紡ぎだされた言葉は短いものだったが、それだけでノエリアは切なくて泣きたくなった。

 そして、彼を幸せにしたいと、心底思ったのだった。

 

1+
↑読了ついでにポチッと(*´ω`*)桜猫にちゅ~るが贈られます。
↑読了ついでにポチッと(*´ω`*)桜猫にちゅ~るが贈られます。
贄の魔導王は~
~桜猫*日和~