★2/15:雑記更新 ・「嘘つき聖女候補~」と「座学の女王さま~」をメインに更新中。

ノエリア4

魔導王:各話表紙

「余計なお世話だわよ……」

 顔を引き攣らせながら朝食を済ませると、回覧板を返すためにノエリアは村長の家へ向かう。

 村長の家はノエリアと正反対の場所だ。そのため村中を歩き回る羽目になった。

 てくてくと草に覆われた小道を歩いていると、さっそく声をかけられる。

 牛飼いのスヴェンだ。

 今年で八十九歳という高齢を感じさせない元気な老人だ。

「おう、ノエリア。回覧板のアレ見たぞ。頑張って王様射止めてこいや!」
「いや、応募しないから……」


「なぁに寝ぼけたこと言っとる! 男なら一度はビッグドリームを追いかけなアカン!」
「……」

(わたしは男でもないしビッグドリームとやらにも、興味はないのですが!)

 心の中で答える間に、スヴェンおじいちゃんはガッハッハと高らかに笑いながら行ってしまった。

「もしかして、このパターンが村長の家まで続く?」

 まったくもってノエリアの予感は的中した。

 やがて彼女は村の真ん中にある、ちょっとした広場に出た。

 村唯一の広場は畑で取れた野菜や花を売る人たちで賑わう。

(今買うと荷物になるから、回覧板返したら帰りになにか買おうかな)

 ノエリアは売り物を流し見つつ、そこを通り過ぎようとした。

「ノエリア!」

 若く可愛い女性の声に呼び止められる。

 さっそく来たか……と思いながら、ノエリアは錆びた歯車のように鈍い動作で声のするほうに振り向いた。

 花かごを手にした可憐な女性が満面の笑みを浮かべている。

「アンジェリーヌ、おはよう」
「おはよう。回覧板見たのね。もちろん、立候補するのよね?」

 どきどきわくわく乙女心がとまらなーい! といった様子でアンジェリーヌは訊いてきた。

 彼女は二十歳だがすでに二人の子持ちである。

「えっと、それに関しては、なにも思うところはないというか、興味ないというか」

「迷ってちゃだめよ! これはあなたに与えられた最後のチャンスなの! これで王様に見初められてロイヤルウェディング……ああ、なんてロマンチックなの」

 人妻である彼女の瞳は恋する乙女になっている。

「あはは……」

 妄想の世界に旅立ったアンジェリーヌに力なく愛想笑いを返し、ノエリアはそこからそそくさと移動する。

(いくらわたしが未だに独り身だからって、どうしてこうどいつもこいつも王の嫁に立候補させたがるのよ。わたしにだって相手を選ぶ権利がある! それに結婚するなら絶対、相思相愛でラブラブな結婚じゃないとイヤ。愛のない夫婦生活なんて絶対イヤ!)

 更に歩みを進め、村長の家が見えてきた。

 扉についている呼び鈴を鳴らすと、間の抜けた声で「あいてるよぉ~」と許可を得たので部屋の中に入る。

「おはようございます、村長」
「やあ、ノエリア。元気そうだのぅ」
「……」
「……」

 二人の間に訪れる暫しの沈黙。

 先に口を開いたのはノエリアだ。

「村長、この回覧板……仕組んだのは、あなたですね?」
「はて、なんのことかのぉ~?」

「ふざけんじゃないわよ、このたぬきじじぃ! この村に独身女がわたししかいないって知ってるくせに、わざわざ花嫁募集の知らせだけを回覧板につけて回してんじゃないわよー!」

「ほっほっほ。ちょっとしたお茶目じゃないか。そう怒らないでおくれ」
「おかげで恥かいたわよ。いい笑いものよ!」

 ちょっぴり涙ぐむノエリア。

 

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贄の魔導王は~
~桜猫*日和~