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ノエリア2

魔導王:各話表紙 贄の魔導王は~

「手が……疲れた。わたしにも素敵な旦那さんがいたらメレンゲ泡立てて貰うのになぁ。魔法でメレンゲも作れたら楽なのに」

 ノエリアはフライパンを用意し、火を起こすために呪文を唱える。

 すると小型の石造りのかまどに火が点いた。

「きゃあぁっ!」

 火が点くまでは良かったが、その瞬間火柱になった。

 この世界には魔法がある。

 小さな火を起こしたり氷を出したり、風を起こしたりと、小規模な魔法は誰でも使うことができる汎用魔法だ。

 専門的な魔法は深い知識と多くの経験を必要とするため、お金がかかる。

 そのため魔法使いの多くは貴族出身だ。

 このような片田舎の村人は学ぶことすらできない。

 ノエリアは魔法を使うことは出来るが、事あるごとにトラブルを起こしている。

 例えば、今、目の前で燃え盛る火柱のように。制御するのが下手なのだ。

「おうちが燃えちゃう~!」

 冷や汗をかきながら慌てて薪に水をかける。

 火柱になったのが一瞬だけだから良かったが、これが強力な魔法であれば恐ろしい結果となっていただろう。

「あー焦ったぁ~。どうしてわたしの魔法ってこんなムラがあるのかしら……」

(必要なときはちょろ火しか点かないくせに、弱火で良いときは火柱になるなんて!)

 しかし、ノエリアはこの程度ではめげない。

 もう一度火の呪文を唱え、隣のかまどに着火する。

 すると今度はうまく薪に火が点いた。

「メレンゲと卵黄をまぜまぜよ~っと♪」

 意味不明の歌を歌いながら、ノエリアは保温程度になるように薪を減らした。

 次にバターをフライパンに少量落とし、満遍なく塗り広げる。

「うん、いい感じかな」

 お玉でパンケーキの生地を掬いこんもりと盛るようにフライパンに並べていく。

 二人分なので三つずつ焼く。

 蓋をして片面ずつ数分焼くと完成だ。

「ああ……いい匂い。今すぐ食べたい……けど、おばあちゃんに持っていってからね」

 二人分のパンケーキを焼き終わると、皿に盛り付け上から蜂蜜をかける。

 それをトレイにのせて虫除けに蓋を被せる。

 再び外に出て、隣の家へ向かう。玄関の呼び鈴を二階鳴らすと、

「入っといで、ノエリアだろ?」

 と声がしたので、

「はーい、おじゃましまーす」

 と遠慮なく中に入る。右のほうから声がしたということは、今日は日当たりの良い庭の方にいるようだ。

 庭に回ってみると予想通り、一人の老婆が長椅子に座り日向ぼっこをしている。

「ルネおばあちゃん、おはよ! パンケーキ焼いてきたよ」
「おはよう、ノエリア。毎日ありがとうねえ」
「ふふ、気にしないでね。一人分も二人分も大して作る量変わらないから」

「そんなことないよ。足の不自由なアタシのために毎日本当に良くしてくれて……本当の孫みたいに思っているよ」

 ルネはふくよかな、けれど皺いっぱいの顔を笑顔で更にしわくちゃにして喜んだ。

 年老いているのに子供のような屈託のない、可愛らしい笑顔だ。

 彼女の体つきは丸っこく押すところんと転がってしまいそうである。

 可愛いおばあちゃんだ。

「わたしも本当のおばあちゃんみたいだと思ってるよ」

 ずり落ちたショールを直してやってから、側のテーブルにパンケーキをのせたトレイをそっと置く。

「紅茶、淹れてくるね」

 そう言い残すとノエリアはこの家のキッチンへ向かう。

 両親を早くに亡くしてから、ずっとルネは親のようにノエリアの面倒を見てくれていたのだ。

 今はノエリアのほうが彼女の面倒を見ている。

 毎日通うこの家の配置は、全て覚えてしまった。

 一日中つけっぱなしの小型の暖炉の上で、ヤカンが蒸気を吹き上げる。

 ノエリアは戸棚から茶葉を取り出すと慣れた手つきで紅茶を淹れた。

 柑橘系の爽やかな香りがあたりに漂う。今日はアールグレイにした。

「お待ちどうさま」

 言いながら彼女はルネに横からそっと紅茶を手渡した。

「まあ、おいしそうね。パンケーキと合わせていただくわ」

 ルネはふわふわのパンケーキをひと口サイズに切ると、フォークで刺して口に運んだ。

 ふわふわな食感は食べているものを幸せにする。

 ルネはもぐもぐと食べながらにっこりと笑みを浮かべる。

 

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贄の魔導王は~
~桜猫*日和~