★2/15:雑記更新 ・「嘘つき聖女候補~」と「座学の女王さま~」をメインに更新中。

「好き」は魔法の呪文5

各話:表紙

「ん、んぁっ……は……」

 我慢できずに漏れた声とともに、咥内にたっぷりと溜まっていた唾液が口の端からつうと流れ出た。

 そればかりか、悪戯にうなじをそっと撫で上げるミゲルの指がさらに快感を煽り、お腹の奥が熱く強く疼いてたまらない。

 まだ直に触れられていないというのに、マリアの豊かな胸の先が硬く立ち上がり服に擦れて、ゾクゾクしてしまう。

 その弾みで思わず奥へ舌を引いてしまい、ミゲルがそれを甘噛みして引っ張り出す。

 そして逃さないとばかりに強く吸い上げた。

「んんんっ、……っ……は……ぁ」

 舌の付け根から先まで繰り返し吸われると、もう体に力が全く入らないほど脱力してしまう。

(おかしいな……精気を奪っているのは私の方なのに、私が奪われているみたいだ……。でも、気持ちいいから、そんなことはもうどうでもいいか)

 そう思いながらひたすら心地よい感触を味わっていたのに、そっと唇が離れ、触れた外気に冷たさを感じる。

 ゆっくりと両目を開ければ、ミゲルの苔緑の瞳がやさしく自分を見下ろしている。

「マリア、オレのキス好き?」
「ん……」

 好きと答えようとしたら、恥ずかしいことにろれつが回らず彼女は小さく頷いた。

 マリアの口元の唾液をそっと舐め取ると、ミゲルはもう一度同じ問いかけをする。

「オレのキス好き?」
「好き、だ」
「もう一回言って」
「好きだ」

 確認するように聞いたミゲルはにんまりと笑みを浮かべる。

「じゃあさ、オレのキスが好きってことは、オレのことが好きだってことだよな?」
「――っ!」

 いきなり思ってもみないことを言われ、マリアは一気に赤くなる。

「照れてんの? 可愛いねぇ」
「う、ぐ……」

 反論したいが言葉が出てこない。

「言ってよ、オレが好きだって。オレはちゃんと言ったから、今度はアンタの番」
「へっ!?」

 思わず驚きの声をマリアは上げてしまった。

「なに驚いてんの? 誇り高いマリアが自分の気持ちを偽るなんてことはしないよな? まして正々堂々と気持ちを伝えたオレの心を踏みにじるようなマネはしないだろ?」

 彼女の性格をわかっているミゲルは、ここぞとばかりに弱みを突いてくる。

「そっ、それは…………」

 マリアはしばし沈黙する。己の中に蟠る葛藤ゆえだ。

 今ほどマリアは自分が吸血鬼であることを、疎ましく思ったことがない。

 なぜ自分が吸血鬼なのか。彼と同じ人であればなんの障害もないというのに。

 しかし、それでも無駄だとわかっているのに、ミゲルに惹かれている自分の気持を認めたくなくて、あえてマリアは考えないようにしていた。

(体はとっくに陥落させられていて、心まで落とされてしまったら、私は……)

 契約魔法が効果をなくしてしまえば、そばにいる理由が無くなる。

 だからマリアは素直に気持ちを認めるのが恐ろしかった。

(――嫌なんだ。ミゲルのそばを離れるのは。――怖いんだ。自分の気持ちを認めるのが)

 ミゲルの傍は安心できて、ドキドキして、初夏の木漏れ日の中に居るような感覚を覚える。

 そこはマリアにとってとても居心地が良くて、失いたくない場所だ。

(今ここで好きだと認めてしまったら……私はもうアストルティーアの領土に居られないかもしれない。いや、私のことはどうなってもいい。人間相手、しかも神父を好きになったと知れたら、ミゲルの命が狙われてしまうかもしれない。あのサミュエルのように襲ってくる者も出てくるだろう。事実がどうあれ、誇りあるアストルティーアの血族を誑かした、不届き者と……)

 どう転んでもハッピーエンドには程遠く感じられて、マリアの胸が切なさにぎゅっと締め付けられる。

「マリア……アンタがなにをそんなに悩んでるのか想像はついてる。オレはそれでもアンタが好きだって言ったつもりだ」

「ミゲル……」

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吸血鬼と不良神父~
~桜猫*日和~