★2/15:雑記更新 ・「嘘つき聖女候補~」と「座学の女王さま~」をメインに更新中。

自称婚約者の再来2

各話:表紙

「拒む理由ならあるさ。貴殿は勝手に私の婚約者を騙った上に、私に何も説明せず一方的に契約魔法を発動した。そればかりか、彼を侮辱した。理由はどうあれ、私は今、彼に命を繋いで貰っているんだ――貴殿の浅はかな行為のせいでな!」

(彼はある意味、被害者だ。私の事情で巻き込んでしまったのだから。その上、私は彼に詫びのひとつもいれていない。だけど彼は、ミゲルは一度も私を退治しようとしないばかりか、追い出そうともしなかった。それなのに、貴殿と言う男は……どこまで私を失望させる)

「たかが人間の男一人のことでなにをそうピリピリする必要が? あんなすぐに死んでしまう神父なんかどうでもいいじゃないか。血と精気以外なんの役にも立たない」

 低く唸るような声がマリアの口から発せられる。

「……やめろ。それ以上あいつのことを悪く言うなら私も黙ってはいない」
「どうしたんだ、マリア。君だってやつの事を下等生物だと見下しているじゃないか」

「……貴殿と一緒にするな」
(確かに出会った当初はそうだった……だが今は――)

 そしてマリアはサミュエルに向けて静かに言い放つ。

「ミゲルは、貴殿などよりよほど頼りになるし、信頼できる男だ。なにより姑息な手段を使わない」

「どうしてそうあの神父の肩ばかり持つのかわからないなぁ。ああ、気分が悪い。痛めつけて自我を奪い、必要なときだけ血を絞り取るだけの器にしてしまおうか? そしたら君もここから離れて自宅に戻り、今までどおり暮らせるよね?」

 サミュエルの目に剣呑な光が宿る。どうやら嘘や冗談で言っているのではないらしい。

 マリアは一瞬背中が寒くなった。恐怖からではない。いや、ある意味で恐怖と言える。

(万が一にもミゲルがサミュエルの手に落ちてしまったら――)

 そう考えるとすぐにでも彼の元へ駆けつけたくなった。ミゲルを守り逃がすために。

「……」

 マリアはサミュエルの問いに無言を貫く。

 恩を仇で返すなど、そんな愚かな行為はしたくない。

「どうして返事をしてくれないのかな?」
「ミゲルに手を出すな。私と敵対したくないのであれば」

 二人を冷たい雨が容赦なく塗らしていく。

 お互い水気を拭うこともしないで、対峙し続ける。

 

 一方その頃、自宅に戻ったミゲルは、部屋にマリアの姿がないことに違和感を覚えていた。

 ベッドに横たわるバートは相変わらず熟睡している。

 玄関には雨だというのに、傘が置きっぱなしだ。

「てことは、傘を差す手間すら省くほどの、なにかのっぴきならない事情があるってことか」

 成り行きで同棲することになったとはいえ、マリアは出会ったあの日追われていた。

 今になってみれば、この数ヶ月なにも無かったのがおかしいと気付くべきだったのだ。

「追っ手が来たのか?」

 そうだとしたら彼女の身が危ない。

 ミゲルは濡れた傘を再び差して、雨の街へ飛び出していった。

 冷たい雨が石畳の路地を叩きつけるように降る。

 マリアの頬に張り付いた髪を伝い水滴が落ちる。

 濡れたまま対峙する相手を灰色がかった淡い緑の瞳が、一見冷たく、しかしその奥に怒りを宿らせて見据えている。

「神父をやる前に、少々君を躾けたほうがいいみたいだね。聞き分けの悪い子にはお仕置きが必要だ」

「ぬかせ。礼節を弁えていないのは貴殿のほうであろう」

 思わず耳を両手で塞いでしまいたくなるような、激しい雷鳴が空気を震わせた。

 それを機にマリアとサミュエルは行動を開始する。

 サミュエルが一瞬速く<加速>を使い、一気にマリアとの距離を詰める。

 それを察知した彼女は後方に跳躍し、民家の屋根に着地する。

 が、それを先読みしていたサミュエルが彼女の足元めがけ、鋭い刃と化した爪を持つ手で鋭い一撃を叩き込んできた。

 そのせいで屋根の一部が凹み、マリアはとっさに避けそこない体勢を崩してしまう。

「くそっ」

 

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吸血鬼と不良神父~
~桜猫*日和~