★2/15:雑記更新 ・「嘘つき聖女候補~」と「座学の女王さま~」をメインに更新中。

マリアの王子様

各話:表紙

 ミゲルが一人で歩けるようになると、マリアは共にアストルティーアに戻ってきた。

 その際ミゲルは、メイザースの客人としてマリアが世話をするという体で赴いた。

 次期当主であるメイザースの客人ともなれば、無礼を働こうとするものは皆無に等しい。

 サミュエルさえ大人しくしていれば、平和だろう。

 そのサミュエルだが、教会から送還され、現在はアストルティーアのはるか北にある塔に軟禁されている。

 これで事実上の脅威はほぼ無い。

 豪華な館の回廊で時折すれ違う吸血鬼たちは、貴族風の衣装を身にまとったミゲルを見るや、メイザースの面影を見て取り頭を垂れていく。

「なんか拍子抜けだな……オレなんかが来たらもっと殺伐とした雰囲気になるだろうと思ってたのに」
「悪さをする輩とは違って、本来我々は無駄な争いは好まない。清く誇り高くあるのが理想だからだ」
「そんなもんかねぇ」

「それに……ミゲルが兄上と血が繋がっていることも伝達済だ。ミゲルに手を上げるということは兄上に仇なすということにほかならない」

「……親子って言ってもずっと会ってなかったけどな」

 口調が刺々しくなるのも無理はない。ミゲルは未だメイザースを恨んでいるのだ。

「……」
 それにしても、とマリアは思う。

 いつもの神父服姿も良いが、上流貴族の衣装を来たミゲルはどこぞの国の王子と言われても納得してしまう気品が溢れている。

 ……口を開かなければ、という条件が付くが。

 以前読んだ恋愛小説に出てきた王子様のようにかっこよくて、マリアは内心ドキドキが収まらない。

 そしてそんな彼女が、仄かに目元を赤く染めちらちらとこちらを盗み見ていることを、ミゲルはすでに気付いている。

 笑いを堪えるのに非常に苦労している。

 回廊を出て少し外を歩くと離宮に着いた。

 ここが今日からマリアとミゲルが暮らす家だ。

 貴族が避暑を過ごすために立てた別邸のような館だ。

 白い壁で所々に蔦などの繊細な装飾が施された優美な建物だ。

 館の回りには薔薇が咲き乱れ、赤、白、ピンク、黄色、水色と庭を彩っている。

 少し離れると背の高い木が等間隔に植えられている。

「ミゲルこっちだ」

 マリアに手を引かれ、館の玄関に案内される。

 ドアノブを回してマリアが中に入ると、辺りは薔薇の香りで満たされている。

「謹慎と言う割には、立派な館だな」

「多分、建前だ。兄上は心配性だから、私をしばらくここに留めておきたいのだろう。この館にいる限り自由にしていいと言われている」

「なるほどね」
「それよりお茶にしよう。前もって準備させてあるんだ」
「そういや喉が乾いたな」

 マリアはミゲルを日当たりの良いテラスへ案内する。

 そこには繊細な装飾の施された丸い白テーブルと椅子のセットが置いてある。

 テーブルの上にはすでにティーセットが置いてあり、後は注いで飲むだけの状態だ。

 ミゲルを先に椅子に座らせると彼女も向かいに腰掛けた。目の前には薔薇が咲き誇り、広い庭が続いている。

 そして二人の座るテーブルセットの辺りは、背の高い木がちょうどいい具合に木陰になっている。

 さわさわと新緑をそよ風が撫でていく。

 なんとも新鮮で心地よい空気が流れている。 

 マリアは紅茶を注いだ、縁に蔦模様の入った白い陶器のカップを、ミゲルの前にことりと置く。

「ありがとう、なんか柑橘系の匂いがするなコレ」

 カップを手に取りミゲルはすんすんと紅茶の香りを嗅いだ。

「今日は爽やかな天気だから、グレープフルーツのフレーバーティにしたんだ。夏場はこれを冷やすととても美味しい」

 そう言いながら、やっぱりマリアは恋する少女のような瞳でミゲルを見つめる。

 どうやら、よほど彼の貴族服姿がお気に召したらしい。

(素材は良いとは思っていたが……本当に、見惚れてしまうな。これで口調がもう少し上品だったら、申し分ないのに。ああ、この姿のまま優雅に振る舞い続けてはくれないものだろうか)

「へえ、そうなのか。……旨いな」

 紅茶を口にしたミゲルが言う。

(カップを手にしているだけなのに、絵になる……本当にどこぞの王子みたいだ。やはり兄上の血を引いているだけあって、優雅なものが似合うのだな)

 

↑読了ついでにポチッと(*´ω`*)桜猫にちゅ~るが贈られます。
↑読了ついでにポチッと(*´ω`*)桜猫にちゅ~るが贈られます。
吸血鬼と不良神父~
~桜猫*日和~