★2/15:雑記更新 ・「嘘つき聖女候補~」と「座学の女王さま~」をメインに更新中。

追う者と追われる者5

各話:表紙

「く……契約が完了してしまったか」

 マリアとミゲルをじっと見つめていたサミュエルが呟いた。

 彼は今にも襲いかからんばかりの敵意をミゲルへ向ける。

 契約が完了したということは、マリアはミゲルの血と精によってしかしばらく生きながらえることが出来ない。

 本来はサミュエルがその相手になるはずだった。

 しかし、殺したいほど憎たらしい神父を今ここで殺してしまえば、マリアも道連れにすることになる。

 うまく行かない苛立ちと焦りに、サミュエルは唇をぎり、と噛み締めた。

 その瞳には明らかな嫉妬が含まれ、目の前の神父を射殺さんばかりだ。

「そんなにオレを睨むなよ色男。こっちは巻き込まれただけなんだからよ」

「神父如きが、契約者になるとは予想外だったよ。今日のところは出直そう。……だけど僕は諦めないからね、マリア」

 そう言い残しサミュエルはそこから一瞬にして姿を消した。

「なんなんだ一体……それよりアンタ、襲われてたみたいだが、なにかやらかしたのか?」

「人間如き下等生物がこの私に気安く話しかけるな。私にはマリーティア・デ・アストルティーアという名がある」

 やや不機嫌そうにマリアは言う。

 そこにはいくらか照れ隠しも入っているのだろう、ほんのりと目元が赤く染まっている。

 理由はどうあれ、いきなりキスをしてしまったのだ。

「なるほど、それでマリアって呼ばれてるのか。オレはミケロット・ルーデベルク。ミゲルでいいぜ」

 それからミゲルはマリアの額をつん、と指先で小突きなにか唱えた。

 その瞬間わずかな魔力を感じマリアは瞠目する。

「貴様、今、私になにをした?」

「なぁに、ちょっとしたマーキングさ。人間の女ならともかく、アンタは吸血鬼。しかもあのアストルティーアの血を引くと来たもんだ。保険はかけておくに越したことはないだろ?」

 神父であるミゲルが今発動したのは<聖印>という神聖魔法だ。

 これをかけられた相手はどこにいても居場所がわかる。

 これは逃げ回る敵や誘拐された人間の護衛や追跡をする際に役立つ。

 さらに魔法を発動しやすくするための補助にもなっている。

「……っ」

(なんたる侮辱! なんたる不甲斐なさ! 人間ごときに魔法をかけられるとは!)

 自分のうかつさと目の前の神父への苛立ちで、思わず睨みつけてしまう。

「そう睨むなよ。睨んでもアンタは可愛いけどな。それよりこれからどうする? 聞いてた限りじゃ、今後アンタはオレが居ないと生きられないみたいだが」

「…………」

 マリアの睨みを軽くいなし、人を食ったような笑みを浮かべるミゲル。

 痛いところを突かれマリアは言葉が出てこない。

(私はこれからどうしたら良いのだろう。とっさにこの男の精気を吸ってしまったが……。……黙っておとなしく血や唾液を分けてくれそうな人間には見えない。かといって契約が発動している限り、この男がしばらく私の食事代わりになるわけだ。多少手荒になるが舘まで連れ帰るか? その後は拘束するなり何なりして、必要なときだけ血を吸えば良い)

 マリアの瞳が剣呑な光を宿す。

「マリアちゃん」

 はっと我に返ると、いつの間にか壁際に追いやられ、逃げ場を塞ぐように体の両側にミゲルが腕をついていた。

「気安いぞ、下等生物」
「気が強いな。今なんか物騒なこと考えてただろ? 生憎オレはアンタの言う通りにはならない」

 マリアとミゲルの視線が交錯する。

「なにを言っている。貴様に選択権はない」

 そうマリアが口にしたときだった。

 ドクン、と体の中から強烈な渇きが沸き起こってきたのは。

(しまった……サミュエルにほぼ一日中追い回されたせいで、能力を使いすぎたか。今すぐ血か精気を摂取しなければ……!)

「く……っ」

 先ほどミゲルの精気を吸ったばかりだというのに、喉が渇いて飢えて仕方がない。

 マリアはそのままずるずるとその場に崩れ落ちた。

 ポケットに入れてきた赤の錠剤を飲み込む。

 これで少しは楽になるはずだ……そう思っていた彼女の期待は見事に裏切られる。

「そんな……」

 通常であれば即効で渇きが緩和されるはずだ。

 それなのにまったくその兆候が現れない。

 むしろさらに渇きが強くなった気すらする。

「ずいぶん辛そうだなぁ、マリア。てか、その耐えてる顔すごくそそるな」 

↑読了ついでにポチッと(*´ω`*)桜猫にちゅ~るが贈られます。
↑読了ついでにポチッと(*´ω`*)桜猫にちゅ~るが贈られます。
吸血鬼と不良神父~
~桜猫*日和~