★2/15:雑記更新 ・「嘘つき聖女候補~」と「座学の女王さま~」をメインに更新中。

追う者と追われる者4

各話:表紙

 建物の屋根から屋根へと跳躍しながら考える。

 人間とは極力関わりたくないが、夜になれば彼らは昼間ほど出歩いていない。

 身を潜めるだけならちょうどいいのではないかと思った。

 そのときだった。

 サミュエルの手が跳躍中のマリアの足首を捉えたのは。

 不意に足を掴まれガクンと体が傾きバランスを崩す。

 そのままマリアは屋根に叩きつけられてしまう。

 そしてその頃、依頼を終えたミゲルは屋根の上でもみ合う二人の近くを歩いていた。

 空腹な彼の頭の中は、今夜の夕食のことでいっぱいだ。

「やっぱ今夜は肉だな。吸血鬼退治で余計に動き回ったし」

 ミゲルが酒場を目指して歩きつつ、曲がり角を曲がり路地に入る。

 しばらく歩き、路地の出口に差し掛かろうとしたとき。

「しつこいぞっ、サミュエル!」
「君が大人しく捕まらないからだろう?」

 男女の言い争う声が上のほうから、ミゲルの耳に入る。

 なんだろうと見上げてみれば、美男美女が言い争っている。

 見ただけでわかった。二人は吸血鬼だと。

 見たくないものを見てしまった、そんな表情になるミゲルである。

 そのまま彼は無関心を決め込み路地を出ようとした。

 だがそのとき、二人はミゲルの目の前に雪崩れるように落ちてきた。

 かと思えば、すぐにサミュエルがマリアに馬乗りになり動きを封じる。

「勘弁してくれよ……」

 愚痴めいた言葉がミゲルの口からぽろりとこぼれた。

 だが、二人の吸血鬼は彼の存在など歯牙にもかけない。

 サミュエルはそのままマリアの両手を押さえつけ、勝ち誇ったように彼女を見下ろしている。

「サミュエル、この無礼者め!」

 マリアは精一杯の抵抗を試みるが足がじたばたするだけで、上に乗られていてはまったく意味がない。

「強がっていられるのも今のうちだよ、マリア。契約が完了すれば、君は僕から離れられなくなる。この契約はね、一定期間特定の相手の血と精しか受け付けなくなるんだ。赤い錠剤だって飲んでも効かないよ? 渇きの衝動に耐えられなくなるんだ」

 楽しそうに微笑みながらサミュエルは続ける。

「君はもう僕を受け入れるしかないんだよ。キスを交わすことで契約は成立する。正確には相手の体液を摂取すればだね」

 うっとりと睦言を告げるように甘やかな声で言いながら、彼はマリアに顔を近づける。

「嫌だ! やめろ……っ」

(こんな男のものになるなんて、まっぴら御免だ! 兄上のような人じゃないと嫌だ!)

 そのときだった。

 彼女に迫ったサミュエルのこめかみに銃口が突きつけられたのは。

 はっとして持ち主に目をやると、こともあろうに神父だった。

「なんかよくわからんが、その子いやがってるだろ。やめとけ」

 そういうミゲルの右手には銀色の拳銃が握られている。

「神父風情が……っ」

 サミュエルが口を開くと同時に発射する。

 が、さすが吸血鬼だけあって動きが速い。ミゲルの撃った銀弾は的に当たることはなかった。

「<加速>か……つくづくめんどくせぇな、吸血鬼ってのは」
「おい、そこの人間!」
「なんだ、……よ!?」

 それはほんの一瞬の出来事だった。ミゲルは呼ばれたと思ったら、すでに唇を奪われていた――マリアによって。

 驚いて口が開いたミゲルの咥内に、強引にマリアが舌を捻じ込み、唾液を貪るように飲み込んでいく。

 そしてマリアはそうしながら不思議な感覚を覚えた。

(なんだ、これ……この男の唾液から摂取できる精気が美味しくて美味しくてたまらない)
「ん……ふう……ぅん、ん……」

 マリアは我を忘れてミゲルの唾液を飲み込んでいく。

 自然と激しく舌が絡み、彼も心地良さにややうっとりしながらマリアの腰をぐっと抱き寄せる。

 マリアからすればサミュエルに頼るくらいなら、それ以外の男のほうがましだと思って唇を重ねただけだった。

「ぷはっ! おいおい、いきなり濃厚だな……」

 ようやくキスから解放されたミゲルは思わず深く息を吸い込む。

 そのときマリアの体が淡く発光し徐々に元に戻っていった。

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吸血鬼と不良神父~
~桜猫*日和~