★2/15:雑記更新 ・「嘘つき聖女候補~」と「座学の女王さま~」をメインに更新中。

追う者と追われる者2

各話:表紙

 そんな兄が身近にいるものだから、マリアはメイザースが予防線を張る必要がないほどに男を見る目が厳しく理想が高くなっていた。

 メイザースと同等かそれ以上の相手でなければ、誰とも結婚する気はないと舞い込む縁談を片っ端から跳ねのけてきたのだ。

 なかにはメイザースがかなり推している相手がいたというのに、それすらあっさりと彼女は切り捨てた。

『私はマリアをこんな我侭に躾けた覚えはないのだが』
『そうはいっても、兄上には遠く及ばない。……兄上と結婚できたらそれが一番いいのに』

 不満そうに言うマリアを見てメイザースは苦笑する。

『やれやれ、しょうがない子だ。いづれお前にも胸を焦がすような相手が見つかることを祈っているよ』
『そんな相手、永遠にでてこなくていい。兄上さえいればそれで良い』

 といった感じだ。

(――そういえば最近兄上を見かけないな……どこに行ってるんだろう?)

 マリアは風呂から上がりバスローブを身に着ける。

 長い髪をタオルで巻き、脱衣所からリビングに移動する。

 それからテーブルの上にあらかじめ用意しておいた天然水の入ったグラスに、側に置いてある赤い錠剤を一つポトリと落とす。

 一秒もかからずパッとグラスの水が赤く染まった。

 赤いといっても赤ワインほど濃くなく、ロゼワインといったところだ。

 額の汗をタオルで拭くと、マリアはグラスを手に取りそれを一気に飲み干した。

 火照った体に常温の水が喉元を過ぎ体内に染み込んでいく。

「ふう……風呂上がりの一杯は最高だな」

 体の隅々まで丁寧に水気を拭き取ると、さっと普段着に着替える。

 ビスチェ風の上着と体にぴったりとしたミニスカート、足には太腿まであるロングブーツ、そしてロングコートを羽織る。

 色調はすべて深紅が基調となった服だ。

 耳には純金のイヤリング、腕には繊細な装飾を施され、黄水晶を埋め込んだブレスレットを身に着けた。

「さて、今日はなにをして過ごそうか……」

 室内からベランダへ出て新鮮な空気で肺を満たす。

 少し冷たい朝の空気は頭をしゃきっとさせてくれる。

 そうしてしばらくベランダでのんびり過ごしていると、一匹の蝙蝠がマリアの前に現れた。

 その蝙蝠からは少し魔力の気配がする。

「使い魔か。一体誰の?」

 指で肩にとまった蝙蝠をあやしながら辺りに視線を飛ばす。

 すると遠目に舘から正門まで続く道の木陰から、男が一人姿を現した。深緑のコートの下に貴族風の服を着て膝丈のブーツを履いている。

 日向に出たことで彼の金色の髪は一層眩しく輝く。

 それはマリアも良く見知った青年だ。

「サミュエルか、こんな朝からなんの用だ……?」

 そうマリアが呟き終わったときには、彼はすでにマリアの前に立っていた。

 <加速ヘイスト>を使い一気に距離を詰めたのだ。

「急に近寄るな、びっくりするだろう」
「これは失礼いたしました。アストルティーアの高貴なる血を引く姫君……マリーティア様」

 謝罪の言葉を口にしながらサミュエルは大げさすぎるほどに、恭しく頭を垂れる。

「なんだ、いつにもまして気色悪い。それに私は姫などではない」


「ご謙遜を。君はそこいらの国の姫など足元にも及ばないほど強く美しいじゃないか。婚約者としてとても鼻が高いよ」

 小首を傾げてくすりとサミュエルは笑う。

「一つ訂正しておくが、私は貴殿の婚約者ではないし、まだ誰とも婚約していない。勝手なことを言わないでもらいたい」

 マリアはぷいとそっぽを向く。

「そうは言っても、他に同年代の異性は僕以外に最適な相手はいないと思うけど? 君とは兄妹のように育ったし、そこそこ気心も知れている」

「誰が最適だと? 私は兄上以上の人が現れない限り誰とも一緒になるつもりはない。それに貴殿の本当の目的は私ではなくアストルティーアの血筋に加わることだろう。そんな男と結婚などできるか」

 マリアの淡い緑の瞳がサミュエルを冷たく見据える。

「なにか不満でも? よりよい血筋、力を求めるのは僕たち吸血鬼の中では当たり前のことじゃないか」

 

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吸血鬼と不良神父~
~桜猫*日和~