★2/15:雑記更新 ・「嘘つき聖女候補~」と「座学の女王さま~」をメインに更新中。

追う者と追われる者

各話:表紙

 吸血鬼であるマリアが、ミゲルに抱かれる羽目になったのには理由があった。

 時は、昨日の朝まで遡る――。

 マリアたち吸血鬼は、本来自分たちが住む領土から人里に出てくることはほぼない。

 下手に関われば双方問題を起こすことがほとんどで、よいことなどないからだ。

 吸血鬼と人類はお互い暗黙の了解で、それぞれの領土を不可侵としている。

 かと言ってまったく繋がりが無いわけではないが。

 直接、人間を襲い血を吸っていたのはもう昔の話だ。

 現在は血の代わりに『赤の錠剤』と呼ばれる血液代わりのものを飲むことで、乾きの衝動が抑えられるのだ。

 長い時を経て、この世界の吸血鬼たちは昼間も活動できる者が多い。

 それでもやはり夜のほうが活動頻度が高いのが事実だ。

 マリアはいつものように、アストルティーアの一族が治める広大な領土の中心ともいえる場所に立つ舘で優雅なときを過ごしていた。

 舘というよりは一国の城と言ったほうがしっくりくるかもしれない。

 目覚めると汗ばんでいたため、彼女は朝から湯浴みをすることにした。

 清々しい、気持ちの良い朝だ。

 大きめの白のバスタブには深紅の薔薇の花弁が浮かび、乳白色の湯が張られている。

 上品で雰囲気が華やぐような薔薇の香りが室内に溢れ、その香りを存分に味わいながらマリアはうーんと伸びをする。

 瑞々しい肌は見事に水分を弾く。

 吸血鬼だからといって特に夜行性でもなく、太陽の光も平気であるが、彼女の肌は透き通るような白い肌をしている。

 口からたまに垣間見える犬歯は少しばかり鋭い。

 実際、彼女は生まれてからずっと、人間の血を直に吸ったことがなかった。

 物心ついた頃には血液を凝縮した赤い錠剤を飲まされていたし、大量に魔力を消費しなければ、それでこと足りた。

 そして彼女たちアストルティーアの血を引く純血種だけは、血液だけでなく精気からも活力を得ることができる。

 その代表的なものが精液だ。

 血液であれば大量に魔力を消耗していたらその分多く飲まなくてはならないが、精液はわずかな量でも血液より桁違いに回復することができる。

 これは相手が吸血鬼だろうが人間だろうが変わらない。

 そういう背景もあり、アストルティーアの一族は早婚が多かった。

 しかし、マリアはすでに成人しているのに未だ独り身だ。

 この事実は吸血鬼たちの間では知らない者はいない。

 とくれば、アストルティーアの末席に名を連ねたい輩が押し寄せてくるのは想像に難くない。

 彼女の元には日を置かず縁談の申し込みが舞い込み、彼女に手を出してくる輩も少なからずいた。

 しかし大事にならないのにはわけがあった。

 彼女の兄であるメイザースが方々に睨みを利かせていたからだ。

 メイザースはアストルティーア家の次期当主として絶大な権力を持っている。

 ある意味彼に気に入られなければ、マリアに近づくことすら許されないのと同意だった。

 メイザースが睨みを利かせているのにはちゃんと理由があった。

 マリアはアストルティーアの血を引く魔力の強い妹ではあるが、吸血鬼としては赤子も同然だった。

 そう、彼女はほぼ見た目通りの年齢なのだ。

 約三百年ぶりに出来た妹をメイザースはそれはそれは可愛がっていた。

 アストルティーアの一族は高い魔力と身体能力を誇るが、その生殖率はきわめて低かった。

 砕いて言えば、子供が出来にくいのだ。

 彼女はまだこの世に生を受けて二十二年しか経っていない。

 そんなわけでメイザースは可愛くてたまらない妹である彼女を庇護下に置いていた。

 要するにマリアは箱入り娘といってもおかしくない環境で育ってきたということだ。

 故に彼女の男性の基準というものは、すべて兄となっている。

 兄であるメイザースは次期当主として申し分ない実力と容姿を兼ね備えていた。

 美男美女が多い吸血鬼の中でも彼は群を抜いて美しかった。

 その優雅な振る舞いは一国の王にも引けを取らず、聡明さは賢者に劣るところがない。

 器が大きくいかなるときもどっしりと構えていて安心感がある。

 そして戦闘においても彼の強さは秀でていた。

 マリアのどこか男らしい口調や態度も、この兄の影響を多大に受けている。

 

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吸血鬼と不良神父~
~桜猫*日和~