★2/15:雑記更新 ・「嘘つき聖女候補~」と「座学の女王さま~」をメインに更新中。

ミゲルと教会6

各話:表紙

「聞きました? 来ないとは言わないんですよ。私の息子は可愛いなあ」

 二人並ぶと兄弟にしか見えない法王は、楽しそうにそう口にしたのだった。

 

 

 ミゲルが帰宅するとマリアはまだ部屋にいた。

「ただいま」
「ミゲル! やっと戻ったな。血相変えて出て行ったから心配したぞ」

 ミゲルが帰って来たのがわかり、マリアは玄関まで小走りで駆け寄った。

 そんなマリアにミゲルは小動物が駆け寄ってきたような感覚を覚え、小さく笑う。 

「マリア」

 名前を呼ぶと同時にギュッと抱き締められる。どこかミゲルの体が強張っているようにマリアは感じた。

「どうしたんだ、なんか少し疲れてるみたいだ」
「そんなことねぇよ。アンタの顔見たら吹き飛んだし」

 言いながらミゲルはマリアの腰を撫で下ろし、そのまま腰の下の柔らかな丸みを撫で回す。

「悪い知らせがある」

 耳元で話すミゲルの息が肌にかかり、マリアはくすぐったそうに身を捩る。

「それは私のお尻を撫で回しながら言うことなのか?」
「落ち着くんだよ。それで悪い知らせなんだが、マリア、アンタのことが教会にバレた」

(え……? バレ……? それはつまり私の正体が吸血鬼だと――!!)

 驚きにマリアの目が見開かれた。

 日頃から吸血鬼だとばれないように行動しろと言われていたのだ、その動揺は大きくて当然だ。

「そうか。……なら私はここを出て行ったほうがいいな」

 マリアはほんの少しだけ気落ちした声で言った。

 実際はもっと心が沈んでいるが、ミゲルに余計な負担をかけさせたくないという思いから、なるべく平静を装う。

(離れたく、ないな……。出会いは最悪に近かったが、ミゲルなしでは生きられなかったから今までここに居た。だけど、離れたくないと思うほど私は彼に気を許してしまっていたのか……。 いや……そんなのはあってはならないことだ――)

「なんでそうなる。今オレと離れたら退治してくださいと言ってるようなもんだろ。それに精気の補充だって」
「だが、契約の効果は二ヶ月ほどで切れると奴は言っていた。だからある程度我慢すれば……」

「馬鹿なこと言うな。今更迷惑かけたくないとか言うなよ。もう十分オレとアンタは係わってる。それにオレは不利になるとわかっていて、アンタが離れるのを認めるほどオメデタくもないんだよ」

「……しかし私のせいで、貴様の教会での立場が悪化したんだろう?」

 ただでさえ居候させてもらっているのに、彼の立場まで悪くしてしまっては恩を仇で返すようなものだ。

 そう思うとマリアは自分が情けなく、拳をぐっと握り締めた。

「アンタに気にしてもらう前から十分悪いから大した問題じゃない。法王と煩い枢機卿以外の偉そうな奴には大体嫌われてるからな。今更だ」

「そう、なのか」
「ああ。ついさっき大司教に銃口向けてきたばっかだし」

 ミゲルはニヤリと人の悪い笑みを浮かべる。

「なに!?」

 これにはさすがにマリアも驚いた。

(こいつ、こんな性格でよく神父続けてられるな……)

 しかしマリアは知らない。

 ミゲルが彼女の名誉のために大司教に銃を向けたことを。

「だから、アンタが心配することなんてなにも無い。教会の連中が攻めてきてもオレが守ってやる」 
「馬鹿な! そんなことをすれば、下手をすれば教会を敵に回すことになるかもしれないんだぞ」

 そうなれば間違いなく、ミゲルは神父として教会にはいられなくなるだろう。

「まあな。そうならないように祈ってて?」

 ミゲルはあっさりと言い切り、いつものように笑った。

「……どうして、そこまでしてくれるんだ。私は神父である貴様からすれば敵で、このまま共にいても迷惑がかかるばかりで、なんのメリットもないじゃないか」

 マリアのもっともな言い分に、しかしミゲルは、はあ、と盛大な溜息をついてみせる。

「アンタこそいつまでもシラを切るのはやめたらどうなんだ?」
「――っ」

 とっさになにも言い返せず、マリアの唇が小さく震えた。

 彼の一言はマリアがずっと、気付くまい、見まいと心の奥に押しとどめてきたことを示唆していた。

 ミゲルはそっとマリアの頬に触れながら、さらに言葉を続ける。

「気付いてないはずがない。アンタは、オレのことが好きなんだ。だがそれに蓋をし続けてきた」

 一番触れられたくない部分をあっさりと看破され、マリアは瞠目した。

 ひたすら蓋をしようとしてきた感情を揺さぶられ、どくどくと心臓が激しく脈打つのがわかる。

 視線を反らしたいのに、真っ直ぐに自分を見つめてくるミゲルの熱い瞳から目を反らすことができない。

「自分が吸血鬼でオレが神父だってことを言い訳にして、な」
「違う……違う、こんなのは……」

 ミゲルの視線に射られたまま、マリアはふるふると頭を振る。

「なにが違う。オレを納得させることも出来ないくせに。ホントにアンタの口は素直じゃないな」
「私が下等生物など好きになるわけがない」

 否定するマリアだったが、声自体にまったく力強さが感じられない。明らかに動揺していた。

「まだ良くわかってないようだな。今一度教え込んでやるよ。アンタが誰を好きなのか」

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吸血鬼と不良神父~
~桜猫*日和~