★2/15:雑記更新 ・「嘘つき聖女候補~」と「座学の女王さま~」をメインに更新中。

ミゲルと教会4

各話:表紙

「なんだってんだよ……」

十分ほど歩くと教会の門が見え、彼はそこをくぐると回廊のような入り組んだ廊下を足早に進んでいく。

そして幾つか扉が両側に並ぶ廊下の奥、他の扉より多めに装飾された扉のある部屋の前で立ち止まる。

扉の向うからは静謐な雰囲気が漂ってきている。

本当はすぐにでも勢いよく開けてしまいたい、という逸る気持ちを抑えミゲルは数回扉をノックした。

それにすぐ穏やかな声が返ってくる。

「そろそろ来る頃だと思っていたよ。どうぞ入って、ミゲル神父」

許可が出たのを確認したミゲルが室内へ入る。

「邪魔するぜ。ったく、人を色気の無いラブレターで呼びつけやがって」
「まあまあ、ミゲル。そんなつれないこと言わないで。一週間ぶりの再会じゃないか」
「オレは別に会いたくねぇっての」

タメ口調で話してはいるが、今ミゲルの目の前にいる男性は最高位を示す法衣に身を包んでいる。

しかし少しも気分を害した様子はなく、にこにこと穏やかな笑みを湛えている。

外見だけならミゲルの兄といった年頃だ。

長く垂らした銀髪に明るい緑の瞳の、中性的な美貌の持ち主だ。

「口を慎みなさい、ミゲル神父。猊下の前でそのような物言いをするものではない」

猊下と呼ぶ人の側に控えていた中年の神父が厳しく指摘した。

眉間に刻まれた皺は深く、しっかりとした鋭い眼差しはひと睨みされれば思わず後ずさってしまいたくなるだろう。

もっともミゲルにはまったく効果は無いのだが。

「良いんだ、グランツォ。弟であり息子でもあるミゲルを育てたのはこの私だからね。多少言葉遣いに品はないけど良い子なんだよ」

「ミカエル様、あなたがそのように甘やかすからこうなるのです」

ふう、と枢機卿グランツォは溜息を吐く。

法王であるミカエルは養子として引き取って育てたミゲルにとても甘いのだ。

コホンと他に控えている大司教のうち一人が咳払いをした。

彼を一瞥し、法王ミカエルは話を続ける。

「さて、ミゲル神父。私が手紙で書いた内容だけど、君が吸血鬼と一緒に住んでいるというのは事実で間違いないのかな?」

ミゲルと呼び捨てず神父をつけて呼ぶのは、法王として尋ねているからだ。

「はい」
(どうせわかった上で聞いてるくせに……と思いながらミゲルは素直に認めた)

ミゲルの肯定にその場にいた大司教たちがざわついた。無理も無い。

教会から見れば敵対する種族である吸血鬼と行動を共にしているのだ。

「なぜその吸血鬼と共にいるのか、そうなった経緯を話してくれるね?」

断られるとは微塵も考えていない笑みをミゲルに向け、ミカエルはやさしく促す。

「ちっ。……申し上げます。仕事を終えて家に向かって歩いていたところ、目の前に言い争う男女が揉み合いながら屋根から落ちてきました。触らぬ神に祟りなしと思い通り過ぎようとしたのですが、嫌がる女性に無理矢理圧し掛かったのを阻止したことがきっかけです」

その後はマリアが契約魔法をかけられたことにより、特定の人物のそばに居なければならないことを話した。

勿論、その相手が自分で血の変わりに精気を与えていることはうまく誤魔化した。

「なるほど。それで魔法の効果が切れるまで保護して、返すつもりだったと」
「はい。不要な争いは教会の望むところではありませんから」
「ふむ。特に危害を与えられる恐れはなさそうですね」
「当たり前だ。わざわざ自分が不利になるようなことするかよ」

どうにも丁寧語が堅苦しいのか、すぐにミゲルはいつもの口調に戻ってしまう。

「ですが、君にかけられた疑いは消えたわけではありません。最近この辺りで吸血鬼による被害が増えています」

ミカエルの緑の瞳がすっと鋭くなる。

ミゲルは教会に来る途中で祈りを捧げた女性のことが脳裏を掠めた。

(ああ、あの時感じた嫌な予感はコレか……)

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吸血鬼と不良神父~
~桜猫*日和~