★2/15:雑記更新 ・「嘘つき聖女候補~」と「座学の女王さま~」をメインに更新中。

ミゲルと教会3

各話:表紙

「はぁ、たまんねぇな……アンタ全身媚薬ででもできてんの?」
「そんなわけ、あるか……あっ……」

 口に含んだままの胸の粒を甘噛みされて、思わず喘ぎが漏れる。

 しかし、そのときミゲルの愛撫がピタリと止まった。

「ミゲル?」
「誰か来た」

 彼の視線はすでに入り口の扉へ向いている。

「これからってときに……」

 ミゲルは溜息を吐くとゆっくりと身を起こし、扉の方へ歩いていった。

 扉の前にミゲルが立つと同時にノックする音がした。

「ミゲル神父、いらっしゃいますか?」

 マリアには聞き覚えのない若い男の声だ。

 だがミゲルはその声を聞くともう一度溜息をついた。

「へいへい、いらっしゃいますよ。今度はなんだ?」

 顔が見える程度に扉を開けると、外にいたのは教会からの使いだった。

「猊下からです」

 赤い封蝋の押された白い手紙を渡される。

 ミゲルがそれを受け取ると使いの者は一礼してさっさと行ってしまった。

「……開けたくねぇ」

 人差し指と中指で挟んだ封筒を苦い表情で見つめるミゲル。

 猊下からと言われ届いた手紙は、開封すれば大抵厄介な問題ばかりだ。

「ミゲル、どうかしたか?」

 すっかり乱れた衣服を整えたマリアが、すぐ隣まで来ていた。

「いいや、いつものことさ」

 苦笑しつつ白い封筒を開封する。

 マリアには見せないように文面に目を通し……ミゲルはぐしゃりと握りつぶした。

 珍しくその顔から笑みが消えうせる。

「ちょっと教会に呼び出されたから行ってくる」

 そうマリアに言い残すと、ミゲルはさっと身支度をし部屋を飛び出していった。

「なんなんだ、一体……」

 一人部屋に残されたマリアは、呆然とするしかなかった。

 

 

「あーあ、こんな天気のいい日に呼び出しとはな」

 ミゲルは少しばかり気分を害しつつ、教会までの道を歩いていく。

 いつもと変わりばえしない見慣れた景色に少々うんざりしていた彼だったが、ふとその目が担架で運ばれる人物に止まる。

 すかさずミゲルは駆け寄った。

「おい、なにがあった?」
「吸血鬼が出たんだよ」

 担架を持つ男の一人がそう口にした。

「なに?」
「酷いもんだ……こりゃ根こそぎ吸われたな」
「ちょっと見せてくれ」

 言うと同時にミゲルは被害者にかけられた白い布を胸元までめくった。

 一見ただ女性が眠っているように見える。

 しかし首筋に食い込んだ牙の痕だけはくっきりと残っていた。

 あまり行儀の良い吸血鬼ではなかったのだろう。

 彼女の首周りとその周辺の服は血で赤く汚れていた。

 触れた亡骸の皮膚は思ったより柔らかい。恐らく昨夜遅く襲われたのだろう。

 この地に住む吸血鬼に致死量の血を吸われた人間は、徐々に肌が青白くなり弾力がなくなっていく。

 それからミイラのように干からびて、灰となって崩れ落ちてしまう。

 これには個人差があるが、能力の高い吸血鬼であれば吸血とほぼ同時に人を灰に出来てしまうだろう。

 だがこの遺体は薄らと肌の変色が始まったばかりだ。死後数時間といったところか。

「憐れな魂に救いがあらんことを――」

 神父お決まりのセリフを口にし、ミゲルは被害者の女性に祈りを捧げた。

「ありがとよ、神父さん」

 偶然通りかかったとはいえ、祈りを捧げてもらったことに担架を運ぶ男は素直に礼を述べた。

 そうして、ミゲルは遺体を運ぶ男たちを少しの間目で追った後、再び教会へ向け歩き出す。

(どういうことだ? もう何年もこの辺りに出てくる馬鹿な吸血鬼は居なかったはずだ)

 ミゲルの胸に不安がよぎる。自然と教会へ向かう足が速くなる。

 

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吸血鬼と不良神父~
~桜猫*日和~