★2/15:雑記更新 ・「嘘つき聖女候補~」と「座学の女王さま~」をメインに更新中。

吸血鬼退治5

各話:表紙

「ミゲル……」
「アンタが無事で良かった」

 ミゲルはそっとマリアを抱き寄せる。

 マリアはほっとして彼の胸に頬を寄せる。

「知らなかった。ミゲルはすごく強いんだな。さっきは心臓を貫かれるかと思って、すごくヒヤヒヤした」
「はは、もう十年以上神父やってるからな。それなりには戦える」

 軽く笑い、ミゲルはマリアの髪に顔を埋める。

 目を閉じ彼女の温もりに浸る。

 そのミゲルの耳に、わずかな風切り音が聞こえた。

 神父としてのキャリアが長い彼だからこそ、奇跡的な勘で気付いたのだ。

 一気に緊張の色が走り、ミゲルはマリアを庇うようにその身を反転させる。

 ちょうど向きを変えたとき、ミゲルの右腕に銀弾がめり込んだ。

「ちっ」

 銀弾だということはなんとなく直感でわかった。

 教会の者がマリアを狙って銃を放ったということだ。

 ミゲルは銀弾が飛んできた方向へ視線を飛ばす。

 法王で家族であるミカエルには、見張りはつけないようにと言っておいたはずなのに、なぜだとミゲルの脳裏を疑問がよぎった。

「出てこい」

 ミゲルの斬るような鋭い一言に、物陰から二人の人影が現れた。

 一人は昼間ミゲルが銃口を向けた大司教で、もう一人は彼の部下の神父のようだ。

「ミゲル、血が!」

 左腕に続き、右腕からも血を流すミゲルを見て、マリアは動揺する。それとは対象的に、ミゲルは静かな殺気を大司教に向けて放っている。

「大丈夫だ、マリア。それよりも大司教、なんでアンタがここにいる。しかも依頼の対象にもなっていない彼女を撃ったのはどういうことだ?」

「ひっ!」

 大司教のそばに控えている神父は、ミゲルの殺気があまりにも恐ろしく短い悲鳴を上げた。

「ふ、ふん! 吸血鬼はすべて悪だ! こんなものが教会のそばをうろついていては安心して眠れん。退治されてしかるべきなのだ!」

 大司教もやや怯えつつ、それでもちゃっかり自分の主張を述べる。

「つまりアンタは、法王の命でもないのに、独りよがりな判断で勝手な行動をしたってことでいいんだな?」

「うるさいっ。若造が知ったふうな口を聞くな! 大人しくその吸血鬼を始末すればよし、できぬというのなら……ん?」

 ミゲルは無言でずんずんと大司教に歩み寄っていく。

「な、なにかね、ミゲル神父」

 さらにミゲルは歩み寄る。その差は大人一人分ほどまで迫っている。

「ミゲ……ぎゃっ」

 次の瞬間、ミゲルの振り上げた右の拳が、大司教の頬に深くめり込む。

 それから小太りの彼は勢いよく吹っ飛んだ。

「痛ぇんだよ、馬鹿が……こんな痛いものを、マリアに撃ち込もうとしやがって、ムカつく」
「ひっ、ひいいっ!」

 このままでは殺されると思った部下の神父は逃げてしまった。

「あっ、こら、待たんか! 私を置いていくな!」

 大司教は慌てて立ち上がり、逃げた神父の後に続こうとした。

「動くな。今後マリアに手を出さないと誓え」

 負傷しているとはいえ、大司教に追いつくのは容易かった。

 ミゲルは悲鳴をあげる彼の口の中に銃口を突きつけた。

「ひ、ひはう、ひはう!」

 どうやら大司教は誓うと言っているようだ。

「……誓いを破ったらどうなるかわかってるな?」

 ミゲルの恐ろしく冷めた言葉に、大司教は必死に頷く。

「いいだろう」

 ミゲルは彼の口から銃を引き抜く。

 しかし、ブチ切れていたミゲルは一瞬大司教が彼の後方を見て、頷いたのに気づくのが遅れた。
 

 辺りに銃声が響き、ミゲルが膝をついた。

 脇腹に弾丸がめり込んだのだ。

「よくやった!」

 一気に大司教が勝ち誇った笑みを浮かべる。

 その視線の先には、逃げたと思われた神父が銃を構えて立っていた。

「ふざけ、やがって」
「ミゲル!」

 駆けつけたマリアがミゲルを支えるように抱きしめる。

「逃げろ。さすがにこの状態じゃアンタを守る余裕がない」

 ミゲルの脇腹からじわじわと血が溢れ、石畳の上に血溜まりを作っていく。

「嫌だ! このままではミゲルが死んでしまう!」
(なんとか安全なところまで一緒に逃げなくては)

 そうマリアが思っていると、カチリと銃のハンマーを引く音がした。

 はっとして大司教に目をやれば、いつの間にかその右手に銃が握られていて、銃口はマリアに向けられている。

「オレが隙を作る。その間に行け」
「そんなこと言ってる場合か! 今ここで貴様を見捨てるなど、愚か者のすることだ」
「ちっ」

 マリアとミゲルが会話を続ける間にも、大司教と神父は二人めがけて銃を発射していた。

 ミゲルは痛む腕で銃を構えると、こちらに飛んでくる二発の銀の弾丸を器用に撃ち落とした。

 並大抵の腕ではない。

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吸血鬼と不良神父~
~桜猫*日和~