★2/15:雑記更新 ・「嘘つき聖女候補~」と「座学の女王さま~」をメインに更新中。

吸血鬼退治3

各話:表紙

 が、突き刺さったはずの刃は自分の体に埋まっておらず、痛みもない。

 ふわり、と鼻腔を血の香りが満たす。視線の先に血が滴る腕があり、それが自分を庇っているのだとわかった。

 そして、その腕は――。

「ミゲル!」
「油断大敵だぜ、マリア」

 左腕から血を流しながらミゲルが冗談めかして笑う。

 痛くないはずはないのに、ミゲルはいつもと変わらない。

「馬鹿が! 私など庇わなくとも」
「オレが嫌なんだよ。アンタが傷ついたり、辛い目にあって苦しむ顔を見るのが」

 回復能力があるとかそんなことは関係ない。

 関係なくマリアが少しでも苦しむ姿を見たくないのだ。

 彼女にはずっとゲス神父などと軽口を叩きながら、隣で笑っていて欲しい――それがミゲルの願いだ。

「馬鹿な神父だ。たかが人間の分際で。そしてマリア、久しぶりだね。相変わらず君は美しい」

 ミゲルの腕を貫いた刃をもとの爪に戻し、サミュエルはにこりと微笑んだ。

「貴様……よくもミゲルを……!」

 マリアの瞳が怒りに赤く染まる。

 この世で最も大切なものを傷つけられ、全身が怒りでぶるぶると震える。

「これでおあいこじゃないか、ねえ、神父さま? 君のせいで僕の右手は義手になってしまったのだから」

「なにがあいこだ。オレの利き手は無事だ。アンタを仕留めるくらいわけないぜ?」

 左腕を貫かれたというのに、ミゲルは動揺するどころか全く戦意喪失していない。

「それよりもマリア。よくも僕を騙してくれたね」
「なんのことだ」

 聞き返せば、サミュエルがすっとマリアの肩を指す。

 視線を移してみれば、そこに一匹の紫の翅をした蝶が止まっている。

「その蝶はね、契約魔法の魔力に反応すると模様が緑に変色する珍しい蝶だよ。まったく、契約が続行しているなどと、見え透いた嘘をついてくれたものだね」

「な、ち、違うっ! あのときは本当にそうで、効果がなくなったと感じたのは次の日で……」

 必死に言い繕うマリアの顔は耳の先まで真っ赤だ。

 二人のやり取りを聞いていたミゲルがマリアを見つめる。

「……アンタ、契約魔法が切れてからも、オレと……」

 寝てたってこと?

 言外にそう聞かれたのがわかると、マリアはさらに赤くなり俯いてしまった。

(ああ、どうしよう! ずっと黙っているつもりだったのに、こんな形で暴露されてしまうとは。恥ずかしい、恥ずかしすぎて死んでしまう! だって、契約が切れたら、そばにいる理由がなくなると思ったから――だから言えなかった)

「ふーん、そっか……こりゃ良いこと聞いた」

 ミゲルは嬉しそうに口元を釣り上げた。

「契約が切れた今、そこの神父を始末してもう一度君にかけなおしてあげるよ」
「ふざけるな」

 サミュエルの一言に、マリアとミゲルの声が重なった。

 言うと同時にミゲルは引き金を引き、発射された銀弾がサミュエル目がけて飛んだ。

 元々当たると思って撃ったものではない。避けられるのは想定内だ。

 そして、銀弾を避けて隙が生じたところをマリアが殴りかかる。

 しかし、サミュエルはそれも軽々と躱した。

「そうそう、教会に君の情報を流したのも僕だよ」
「なんだと……」

(なるほど、それなら私がいくら正体を隠し身を潜めていてもバレるわけだ。そうか、こいつだったのか。つくづくこの男は私を失望させるのが得意なようだ)

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吸血鬼と不良神父~
~桜猫*日和~