★2/15:雑記更新 ・「嘘つき聖女候補~」と「座学の女王さま~」をメインに更新中。

吸血鬼退治2

各話:表紙

 ミゲルの視線の先は、人気のない狭い路地だ。

 人形のように無造作に肢体を投げ出した女性が壁を背にし座っている。

 その回りを四人の吸血鬼が取り囲むように断っている。

 おそらく被害者の女性は催眠をかけられているのだろう。

 それは視線が虚ろなことからすぐわかった。

 銀色の銃を手に取ると、ガンベルトから一つずつ銀弾を取りながら、ミゲルは拳銃に込めていく。

 セットできる銀弾は一度に六発だ。

 その一連の動作は芸術のように無駄がなく速い。

 思わずマリアは見惚れてしまった。

「まさかこんなすぐ出くわすとはな。あんまお目にかかりたくはねぇけど」

 右手に銃を構えたミゲルが、壁から少しだけ顔を覗かせ吸血鬼たちの様子をうかがう。

(……かっこいい、な)

 いつものふざけた様子を見慣れているせいか、真面目になにかをしているミゲルを初めてマリアは見た。

「まだ突入しないのか?」

 雑念を振り払うべく、目の前のことを話題にするマリア。

「タイミングがあるだろ? もうちょい待って」

 ミゲルと共に吸血鬼たちを観察する。

 どうやら誰が一番に血を吸うかで揉めているようだ。

 数分言い合いが続いていたが、やがて収まり四人のうちの一人が女性に近づき側に膝を折る。

 女性の服を胸元まではだけさせると、露になった白い首筋に男はごくりと唾を飲み込んだ。

 軽く身を屈め大きく口を開く。

 鋭い犬歯が姿を表し、そのまま女性の首筋へ移動する。

 そして彼女の柔らかな喉に、刃のような牙が突き刺さる。

 思わずマリアは出ていこうとしたが、ミゲルの腕に阻まれた。

 それとほぼ同時に銃声が上がった。

「えっ」
「見たな? 先に手を出したのはあいつらのほう。ってことで行くか」

 突然仲間の一人を撃たれ、吸血鬼たちはおろおろしている。

 撃たれた男は耳障りな悲鳴を上げ、石畳の上をのたうち回っている。

 その隙を見逃すミゲルではない。

 続けざま他の三人の吸血鬼たちの体を撃ち抜いた。

 時間にしてほんの数秒のことだ。

 いきなり激痛が体を走り、銀弾に撃たれたのだと気付いたときはもう遅い。

「悪いな、血じゃなくて銀弾がてめぇらの晩飯だ」
「神父!!」
「なぜ神父がここにッ」

 他二人の吸血鬼は痛みで声も出ないようだ。

「なぜってそりゃあ、悪さをする吸血鬼を狩るのがオレの仕事だからな。被害者リストをもとに山を張ったらビンゴだったってこと」

 被害者の女性を庇うように前に立ちミゲルは告げる。

「ま、正式な依頼じゃないが、俺の可愛いご主人サマのためだ。金にならなくても仕事するっての」
「人間ごとき下等生物が我々に苦痛を与えるなど、許さんっ!」

 手負いの吸血鬼たちは、一斉にミゲル目がけて<加速ヘイスト>を使い襲いかかかる。

 しかしミゲルは慌てた様子もなく、ただ一言こう言った。

「<魔封縛バインドり>」

 相手の動きを封じる神聖魔法が言葉と同時に発動する。

 ミゲル目がけて飛びかかった哀れな輩達は、彼に届く前にその場に倒れ伏した。

 いとも容易く赤子の手をひねるように。

「よし、これで静かになったな。あとはこいつらが目覚めたら尋問して終了」
「……」

 女性を介抱しながら、鮮やかすぎる手並みにマリアは絶句する。

 あまりにもあっさりと片がついて拍子抜けだ。

 毒気を抜かれたのだ。

 だが、それが良くない方向に働いた。

 ミゲルの手並みに感心していたマリアは、背後から襲ってくる脅威に気づくのが遅れた。

「――!?」

 殺気を感じたときには眼の前に鋭い刃が迫っていた。

 そして次の瞬間、ズブリと肉を突き抜ける音がした。

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吸血鬼と不良神父~
~桜猫*日和~