★2/15:雑記更新 ・「嘘つき聖女候補~」と「座学の女王さま~」をメインに更新中。

吸血鬼退治

各話:表紙

 ミゲルに抱かれてから、解放される頃にはすっかり日が落ちていた。

 風呂に入り身なりを整えた二人は、部屋を出た。

「アンタはのんびりしてて良いんだぜ?」

 当てはないが教会方面へ歩きながらミゲルがマリアに問いかけた。

「私が疑われていると聞かされて、大人しくしていると思うのか?」
「はは。ホント、アンタは男前で痺れるわ」

 教会での顛末をすべて聞いたマリアは、ミゲルと共にならず者の吸血鬼を倒すことにしたのだ。

 人間に捕食目的で手を出してはならないという禁忌を犯した下種を、これ以上野放しにしておくわけにはいかない。

 アストルティーアの誇りに泥を塗るという許しがたい行為だ。なんとしてもこの手で捕まえたい。

「せっかくいい夜なのにアンタを抱けないとは」

 ぶつくさとなにか言いながら、ミゲルは<魔力感知センス・マジック>を発動する。

「貴様の頭の中はそれしかないのか。ついさっきまで私を抱いておいて」

 発動した魔法がミゲルを中心に、光の魔法陣を描き波紋のように瞬時に広がりすうっと消えた。

「アンタが魅力的なのが悪い。さーて、何匹オレの感知にひっかかるかな。半径五百メートルくらいに居れば楽なんだが」

 月明かりに浮かぶ、整った顔立ちのミゲルを見つめながら、マリアはくすりと笑った。

「ああ、やっぱり抱きたい……家帰ったらもう一回、イイ?」
「……断る理由は、ないな」

 これから吸血鬼退治をするとは思えないほど、二人を取り巻く空気が甘い。

 どちらともなく、そっと顔を寄せる。鼻先が触れるほど顔が近づき、ふわりと唇が重なる。

 重なった部分から温かな愛情が染み込んでくるようで、マリアはうっとりと瞳を細める。

 出会った当初はこんな穏やかな気持ちで、唇を重ねるようになるとは誰が想像できたというのだろう。

(――幸せとは、こういうことを言うのだろうな……)

 そっと腰に手を添えられ、やさしく唇を啄まれるととても心地よくて、ずっとこうしていたいと思ってしまう。

 しかし、その甘く穏やかな時間はミゲルが不意に口を離したことで終わった。

「ミゲル?」

 問いかければ、彼はすでに仕事の顔になっていた。

「引っかかったぜ。ここからそう遠くないところに数人居るな」

 そう口にしながらもすでにミゲルは、西に向かって歩きだしている。マリアもその後についていく。

 時が止まったような静けさのいい夜だ。

 半分だけ欠けた明るすぎない銀の月の光が石畳の走る民家を控え目に照らす。

 前を歩くミゲルの亜麻色の髪が月明かりで銀色に煌めき、マリアはそれをぼうっと眺める。

 そっと触れて指に絡め取りたいと思ってしまう。

 黒の神父服も似合っているのは勿論だが、その禁欲的な服を着たミゲルは殺気をまとっているのに相反するように色香が漂う。

 広い背中はこのまま抱きついて頬ずりをしたくなるほどだ。

「……っ」
(わ、私はこんな時になにを不埒なことを考えているんだ。ミゲルは私の汚名を晴らそうとしてくれているのに。しゃんとしろ!)

 心の中で活を入れたとき、ミゲルが立ち止まり物陰に身を潜める。

「こっちだ」

 慣れた様子でマリアを背に庇うように壁を背に立つ。

 これまであまり庇われるという経験が無かったため、これだけのことにマリアの胸はときめいてしまった。

「三人、いや四人か……」

 

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吸血鬼と不良神父~
~桜猫*日和~