★2/15:雑記更新 ・「嘘つき聖女候補~」と「座学の女王さま~」をメインに更新中。

殺したいのに殺せない相手9

各話:表紙

「私は、どけと言ったんだ」

 強がってみせるマリアだが、彼女にはハッキリわかっていた。ミゲルの指先に絡む液体が、間違いなく自分の体力と魔力を回復するものであると――。

「いらない、ってんなら、すぐ拭き取るが」

 マリアの言うことをあっさりと二度も無視したミゲルは、なんの躊躇もなくそばにあったタオルを手に取る。

「まっ、待て……っ」
「ふっ」

 思わず静止の声をかけたマリアの焦りを見て、ミゲルが小さく噴き出す。

「だよな? 今のアンタにとっちゃ、喉から手が出るほど欲しいもんな? で、人にものを頼むときはなんていうか知ってるか?」
「ぐ……」

(なんて奴だ、人の弱みにつけ込んで……! なんでこいつにしてしまったんだ。もっと扱いやすい人間にすれば――)

 非常に腹は立つが背に腹は代えられない。渋々とマリアは重い口を開く。

「それを、ください……」
「それじゃわからないな。もっと具体的に」
「この……っ! ……ミゲルの精液を……ください……」

 悔しさと、ひもじさ、そして羞恥でマリアの淡い緑の瞳がにじむ。

 一瞬、目の前のふざけた男を殴りたくなったが、今だけ我慢すればいいと自分に言い聞かせ、マリアはお願いした。

「そんな可愛い顔で言われたら、やらないわけにいかないな。ほら……舐めな」

 今のマリアの表情にくるものがあったらしく、ミゲルの目元がわずかに赤い。

(ああ、やっとだ。やっと精気にありつける……)

 マリアはうっとりとした表情で、ミゲルの指に舌を這わせる。

 が、次の瞬間、マリアはミゲルの長く形のよい指に激しく舌を絡めた。

「ん……」
(なんだこれは……体が勝手に求めてしまう。なんて美味しいんだ……もっと、もっと欲しい――!)

「お、おい。ずいぶん激しいな?」

 マリアの食いつきっぷりにぎょっとしたミゲルだったが、もう片方の手でも精液をすくい、マリアの口元に差し出した。

 するとマリアは両手でミゲルの手を掴み、貪るように彼の指を滴る精液を舐め取った。

「あ……体が、熱い……」

 そう呟いた瞬間、マリアの体から魔力が迸り、パリンと<魔封縛り>の陣が破られる音がした。

 自分の中に取り込んだ精が、即活力となって体に染み込んでいく。力が漲ってくる。

「さすがに始祖の血を引いてると、全快すりゃこの程度の陣は破られるか。凄まじいな」

 ミゲルが感心していると、束縛を解かれ体が自由になったマリアが反撃する。

「殺してやる!」

 目にも見えぬ速さでマリアの手がミゲルの首を捉えた。しかし彼は別段慌てた様子もない。

「やれるもんならやってみな?」

 嘲りと共に返された言葉にマリアは唇をきつく噛み締める。

 ミゲルが強気なのにはちゃんとした理由がある。

 マリアにとっては不利で彼にとっては有利な理由が。

「……ゲス神父……」

 マリアの口から紡がれた声は底冷えがするほど低かった。

 

 

 

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吸血鬼と不良神父~
~桜猫*日和~