★2/15:雑記更新 ・「嘘つき聖女候補~」と「座学の女王さま~」をメインに更新中。

変わらぬ想い4

各話:表紙

 

「欲情しちゃった?」
「そ、そんなことはない」
「ふうん、オレはアンタを抱きたくて仕方ないってのに、寂しいな」

 笑い混じりの声で彼は言う。

「今日は駄目だ。やっと脇腹の出血が止まったばかりなのに」

(そりゃあ、私だってミゲルとしたくないわけではない。どちらかといえば、したい。……って、怪我人の前でなにを考えているんだ、私は!)

 そうしてマリアが内面で盛り上がっていると、ふとミゲルが口にする。

「そういやさぁ、契約魔法の効果がすでに切れてたって?」

 できれば一番触れられたくないことに触れられて、マリアの心臓がドクンと波打つ。

「なあ、どうなの?」

 ドキドキするマリアをよそに、ミゲルは楽しそうに聞いてくる。

「いや、その、なんというか……」

 無性に恥ずかしくなってきて、マリアは身を引き椅子に座り直す。

「とっくに自白してるくせに、隠さなくてもいいだろ。確か色男が襲撃してきた翌日には契約が切れてたって言ってたよな。それなのに、どうしてオレとずっと体を重ねてたのかな~知りたいな~?」

 ミゲルの問いかけに、マリアはどんどん色づく林檎のように顔を赤くしていく。

「わかってるなら聞くな……っ」
「だーってマリアはあまり好きだって言ってくれないし、態度でわかるが想いを確認したくなるときもある」

 穏やかな視線を向けられると胸がキュンと締め付けられる。

「ただでさえ神父と吸血鬼という敵対関係にあるのに……契約が切れたら堂々と側に居られる理由がなくなる。だから……ずっと言い出せなかった。ミゲルが好きになってたから」

 どうも面と向かって本心を伝えるのは気恥ずかしい。

 それをわかって聞いてくるミゲルを意地悪だと思いつつも、答えてやりたいマリアである。

「それに……抱かれる理由もなくなってしまう、から……」
(ああ、なんでこんなこと言わなくちゃならないんだ。顔が熱い……恥ずかしい。のぼせそうだ)

「はあ……やっぱり抱きたい。可愛すぎる……なにこの拷問。なんでオレは動けないの、アソコだけビンビンで辛い」

「なにっ、なんでこの状況でそうなるんだ」
「それはオレのムスコに聞いて?」

 怪我よりもそっちの方が辛そうに言うミゲルを見て、思わずマリアは笑ってしまった。

「笑うなんて酷いわっ……とまあ、冗談はおいといて、昨日倒した吸血鬼共はあの後どうなった?」

 ミゲルから茶化すような表情が消えた。

 吸血鬼はもとより、同じ聖職者である自分に発射してきた大司教と神父の行方が気になっているのだ。

「あの後は兄上が引き継いでくれた。事後処理はお手の物だからな。詳しい処遇は決まっていないが、人を襲った連中は教会経由でこちらの領土に送還されるみたいだ。大司教と連れの神父は、投獄されているらしい」

 因みに被害者の女性はあの後、無事自宅に送り届けられた。

 その際、マリアが催眠を使いその夜の記憶を消しておいた。

「そうか、とりあえずは安心ってわけだ。あいつら二人、怪我が治ったらぶっ飛ばしに行きてぇな」

 そうして二人の間に短い沈黙が訪れた。

 マリアは腰掛けた膝の上でもじもじと手を弄ぶ。

 ミゲルに伝えなくてはならないことがあるが、どうも言いあぐねている。

 その様子に気づかないミゲルではない。

「なんか、言いたいことがあるんじゃないか? 遠慮しないで言ってみな」

 ミゲルにやさしく促され、マリアはゆっくり頷くと話しはじめる。

「その、実は、アストルティーアに戻らなくてはならなくなった。無断で領土外に出た挙げ句、二ヶ月以上家を留守にしたから、一ヶ月の謹慎処分を受けてしまった」

「そうか……」

 無理もない、とミゲルは納得する。

 マリアは吸血鬼の中でも名門のアストルティーアの血を引く存在だ。

 こちら側に居たことで身を危険に晒すことがあったとなれば、謹慎くらいは受けるだろう。

「それで、だな……私は一人で戻るつもりはない」
「と言うと?」
「ミゲル、一緒に来てほしい。謹慎中だけでいい」
「へ!?」

 思わぬ提案にミゲルは間抜けな声を上げた。

「駄目、か? 怪我をしたままのミゲルとこのまま離れたくないんだ……」

 あ、やばい。可愛い。

 そう思った瞬間に、断れないことは確定済だ。

「敵の巣窟に来いなんて、お断りしたいところだが、アンタが居るなら別だ。どこまでも付き合ってやるよ」

 そう言ってミゲルは不敵な笑みを浮かべたのだった。

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吸血鬼と不良神父~
~桜猫*日和~