★2/15:雑記更新 ・「嘘つき聖女候補~」と「座学の女王さま~」をメインに更新中。

乾きと熱2

各話:表紙

 食い入るようにミゲルの男らしい首筋を見つめるマリア。

 皮膚の下の血管が等間隔で脈打っているのがわかる。

 気づいたときには、マリアはその首筋に指を滑らせていた。

 指先から伝わる力強い鼓動は、確かな熱を持って脈打っている。

(なにを迷うことがある。こっちは命がかかっているんだ、死なない程度に吸えばいい……)

 無理やり自分にそう言い聞かせ、マリアは口を開く。

 ミゲルの喉元に鋭い牙を突き立てるために。

 蝶が花の蜜に引き寄せられるようにマリアもミゲルの喉元に顔を埋める。

 そして牙の先端が首筋の皮膚に触れた。

「……っ、私は、なにを……」

 牙の先がミゲルの皮膚に触れた瞬間、弾かれたようにマリアは顔を上げた。

 マリアの視線の先では、ミゲルが安らかな寝息を立てている。

 長い睫毛、どこか品を感じさせる顔立ち、朝日の中で煌めく瑞々しい肌。

 猫科の獣を思わせるしなやかな体つき――ミゲル自身から力強い生命力が伝わってくる。

(人間なのに、なんて綺麗な男なんだ……きっと血も美味しいんだろうな――)

 マリアの手のひらが、ねっとりとミゲルの首筋を撫で回す。

 手のひらに伝わってくるミゲルの脈が自分を誘っているような気分にすらなってくる。

 乾きは徐々に強くなっている。

 マリアの中で血を飲みたい衝動が色濃くなり、赤い舌が唇をペロリと舐めた。

 ふたたびミゲルの喉元に顔を埋めたマリアは、脈打つ血管を撫でるように、乾きに震える熱い舌を這わせる。

「あぁ……」

 極上の精気の持ち主だ。

 その血はどれほど美味しいのだろう……そう思うと焦れた吐息がマリアの口から漏れた。

 もう少し噛みつきやすいように体勢を整えようとして、手の位置をマリアは変えた。

 自分の手が押し戻される感覚がして、マリアは肩越しに振り返る。

(なんだか温かい、というより熱い)

 視線の先になにがあるのか確認したマリアは小さな悲鳴を上げた。

「きゃあっ! な、な……これって!」

 ――マリアが何気なく手を置いた場所は、ミゲルの股間だったのだ。

 焦ったマリアはそこから手を引こうとしたのだが、いつの間に起きたのかミゲルの手が自分の手首をしっかり掴んでいてできなかった。

「朝っぱらからやけに刺激的な起こし方してくれるなと思えば、死人みたいな顔色だな、マリア」

「そんなことはどうでもいいっ。さっさと手を放せ! ……っ」

 勢いよく叫んだはいいが、衰弱しているマリアはそれだけで頭がくらくらして、そのままミゲルの胸に倒れ込んだ。

「バカだな、オレが狸寝入りしてる間に血を吸えばよかったものを」

「……気づいてたのか。私だってそうしたかった。だけどもう、潮時かな――短い間だったが世話になった。私が暴走したら……遠慮なく仕留めてくれ」

(……血は欲しいが、またこの男に借りを作ることになる。それは嫌だ。しかも無抵抗の相手の血を奪うなど……出来るわけがない。そんな卑怯なことをするくらいなら、潔く朽ちてやるまでだ)

 さっきまで血を飲む気満々だったマリアは、すっかり毒気を抜かれてしまった。

「サミュエルも道連れに出来たら、良かったのに……」

(ああ、体が鉛のように重い……呼吸が苦しい……。でもこれなら暴走する心配もなさそうだ。このまま灰になって、それすらも消えて――私という存在そのものがこの世から消失するんだな)

 目の端から、すうと涙が伝い落ちた。

(――兄上、勝手に居なくなってごめんなさい。さようなら……)

「なに勝手に一人で話を進めてやがる」

 少し苛立ちを顕わにしたミゲルに唇を奪われた。

 衰弱したマリアの口はすぐに開き、ミゲルの熱い舌が捩じ込まれる。

 それと同時に彼の熱い唾液も口の中で混ざり合い、急速にマリアの中へ精気が吸収されていく。

「んぅ、ふ……っ……」
(ああ、なんて極上なんだ――!)

 乾いた土地に水が染み込むように精気が身体に浸透し、青ざめていた頬にほんのりと色が戻り桜色に染まっていく。

 呼吸が楽になり、手足にも力が戻ってきた。

「少しは楽になったみたいだな。なんでそんなになるまで黙ってたんだ」

 唇を離したミゲルが、労るようにマリアの頬を撫でる。

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吸血鬼と不良神父~
~桜猫*日和~