★2/15:雑記更新 ・「嘘つき聖女候補~」と「座学の女王さま~」をメインに更新中。

乾きと熱

各話:表紙

 二人が出会った日から三日が過ぎた――。

 出会ったその日に身体を重ねてしまった。

 そのことに、マリアは少なからず罪悪感を覚えている。

(いくら成り行きとはいえ、この私がこうも簡単に……人間の男などと関係をもってしまうとは――)

「はあ……」

 寝起きのベッドで盛大な溜息をつく。

 いくら生きていくためとはいえ、神父に抱かれてしまった。

 しかも相手はあのミゲルだ。

 二度とこんなことがあってはならないと、マリアはミゲルに出会った当日に釘を差した。

「私は貴様なんぞと寝る趣味はない。同じベッドで寝ることもしない。貴様も必要以上に私に触れるな」

「ふーん。なるほどなるほど。そりゃアンタの自由だが、大前提を忘れてないか?」

 ミゲルが人を食ったような笑みを向けてくる。訝しげに見つめ返すマリア。

「なにが言いたい」

「ここはオレの家。そしてアンタはただの居候だ。決定権はどっちにあると思う?」
「そ、それは……」

 マリアはすぐに言葉に詰まる。ミゲルの言うことはもっともだ。

 自分はこの神父に結果的に助けられ、ここに置いてもらっている立場なのだ。

 その上、ミゲルは自分を助けてやると、精気を分けてやると言い実際行動で示した。

 ある意味感謝すべきだろう。

(それは、わかっている……だけど、愛してもいない男に、しかも人間の男なんぞに身体を触られるのは、どうしても耐えがたい。いつまで保つかわからないが、精気が枯渇したら……その時は誇り高きアストルティーアの血を引く者として――死を受け入れるつもりだ)

 このままズルズルと好きでもない男に縋って生き長らえるよりは、誇りある死を――それがマリアが下した決断だった。

「オレは今日からあっちのソファで寝る。アンタはベッドを使え」
「は? 普通、逆だろう」

 予想外の答えに驚きそう言えば、

「これでもオレは女にはやさしいの。男だったらその辺の床に転がすけどな、ははっ」

 と返ってきたのだ。

「なぜ貴様が赤の他人の、ましてや憎むべき吸血鬼の私にそこまでする?」

「好きだって言っただろ。アンタがオレ好みの美女だったことに感謝するんだな」
「そんな、つまらない理由で……」

「つまらなくなんてないさ。アンタがただの人間の女だったら即プロポーズしてる」
「……」

 マリアはもう言葉が出てこなかった。

「そんな微妙な顔するなよ。ちょっと悲しくなるだろ。じゃ、おやすみ」

 そう言うとミゲルはさっさとソファに横になってしまった。

 ――とまあ、こういうわけで今現在、ミゲルのベッドを占領しているマリアである。

 その日から今日まで、ミゲルは必要以上にマリアに触れてこようとはしなかった。

(……根は悪い人間ではないのだろう。ここに置いてくれていることも感謝している。だが、それだけだ。それ以上の感情もなにもない)

 身支度をしようとマリアはベッドから起き上がり、洗面所へ向かう。

 が、少し歩いたところでガクンと膝が折れた。

 一気に顔が蒼白になり、頭がくらくらする。

 手足が指先から冷たくなっていくのが自分でわかるほどだ。

 呼吸が苦しく口を開けてはあはあと荒い息を繰り返す。額には嫌な脂汗がにじむ。

「……っ」

 この覚えのある感覚は――乾き、だ。

 ミゲルに助けられたあの日、赤の錠剤を飲んでも微塵も楽にならなかった症状だ。

 手っ取り早く回復するには、血液か精液を直接飲む必要がある。

 自然とマリアの視線がソファに横たわるミゲルに引き寄せられる。

 無防備に寝ている今なら、容易く血を吸えるだろう。

 マリアは体を引きずるようにしながら、ミゲルの枕元まで移動した。

 規則正しい寝息が聞こえる。

 それとは対照的に、マリアは朦朧として息が荒い。

 一刻も早く血を吸わなければ気が狂いそうだ。

 それなのに彼女の瞳はしっかりとミゲルの首筋を捉えている。

 それからマリアは、ミゲルに覆いかぶさるような体勢で両脇に手を付く。

「……っ」

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吸血鬼と不良神父~
~桜猫*日和~