★2/15:雑記更新 ・「嘘つき聖女候補~」と「座学の女王さま~」をメインに更新中。

変わらぬ想い

各話:表紙

「……」
(こうして眠っていると、綺麗な人形のようだな。せっかく素材は良いのに、こいつは言動で損をしている)

 マリアの白い手がミゲルの亜麻色の髪に触れ、そっと頭を撫でる。

 やや癖があるが柔らかな手触りだ。

 ミゲルを撫でながら、マリアの視線が傷口に移る。左の二の腕に包帯が巻かれ、右肩にも同様に包帯が巻かれている。

 そして薄い毛布の下に隠れて見えない脇腹の傷。

 すべてマリアを守ろうとして負った怪我だ。

(私を守るためとはいえ、ここまでするとは……人間は我々のように回復能力があるわけではないのに)

 たまたま運が良かったが、あと数センチずれていたら、左手は再起不能になっていたかもしれないのだ。

(私なんかのために、馬鹿だこいつは。だけど……生きていてくれて、本当に良かった――)

 頭を撫でていた手で、今度は頬に触れる。

 手のひらに確かに温もりが伝わってくる。

 ちゃんと生きているのだと実感できて、じわじわとマリアの瞳が潤んでいく。

 ミゲルがベッドに伏してから半日が経っていた。

 今はもう昼過ぎだ。

 マリアはほんの少し仮眠をとった以外は、ずっと起きていてミゲルに付き添っている。

「なに泣きそうな顔してんの?」

 寝起きのためか少し掠れた声でミゲルが言う。いつの間にか目覚めていたらしい。

「起きたのか、具合はどうだ?」
「そうだな、今すぐアンタの涙を拭ってやれないのがもどかしい感じだ。あと、アンタを抱けないのが嫌だ」
「な……っ」

 予想外の返答がきてマリアは言葉に詰まる。それと同時にほっとする。

(ああ、ミゲルの声だ……よかった)

「それにしても、無茶をしたな……両腕ともこれまで同様使えるから良かったものの」
「惚れた女を守る時に無茶しないで、いつするってんだよ……アンタが無事で良かった」

 ミゲルはふわりと笑みを浮かべる。

 その笑顔が、自分に向けられる真っ直ぐな愛情が惜しみなく伝わってきて、マリアの瞳は溜まった涙が今にもこぼれ落ちそうだ。

 まだきついだろうに、自分に向けてくれるミゲルの笑顔が、この世でもっとも尊いものに見える。

「ミゲルのおかげだ」

 泣いてはいけないと笑顔を浮かべたのに、許容量を超えた涙が、すうとマリアの目尻から溢れ頬を伝っていく。

 一粒涙がこぼれ落ちるともう我慢の限界だった。

 自分でも意外なほどの量の涙がぼろぼろとこぼれていく。

「マリア、悪いけど拭ってやれないから、オレの胸で泣いてくれないか?」

 苦笑するミゲルにマリアは頷き、彼の胸に顔を押し付ける。

 手当のため服を着ていないミゲルの肌から、生命の鼓動が聞こえる。

 触れた胸板からミゲルの体温が伝わってきて、その温もりを感じるとほっとする。

「こんなに可愛くて綺麗なご主人サマを泣かせるなんて、オレは悪い下僕だな……はは」

 胸に落ちてくるマリアの涙が思いの外熱く、ミゲルの胸が締め付けられる。

 なんとか動かせそうな右手の肘から先を持ち上げ、マリアの背中をあやすように撫でてやる。

 するとそれは違うと、胸に顔を押し付けたままマリアが首を横に振る。

 マリアの背中を撫でていると、俯いた彼女の髪が首を境に流れ落ち、白いうなじが姿を表す。

 自然とそれが目に入り、ミゲルはそこへ顔を埋めようとして、出来ないもどかしさに溜息を吐く。

 あそこに顔を埋めれば、マリア自身の良い香りがすることはすでに知っている。

 ミゲルはマリアを抱きたくて仕方がないに違いない。

「マリア……泣いてるところ悪いんだが、抱けない代わりにキスしてほしい」
「っ、今は、駄目だ……こんな顔、見せたくない……」

 涙で目元はぐしょぐしょで、きっと赤く充血している。

 こんなみっともない姿は見せられない。

「アンタは泣いてても笑ってても、いつも可愛いけどな。……そうだな、アンタが泣き止むまで話を聞かせてやるよ」

「話?」

「帰り際にオヤジが言ってただろ。オレとあいつの関係……血の繋がった実の親子なんだ。最もオレも昨日十数年ぶりに再会したんだけどな。相変わらず、別れたときのままと同じ姿で少し驚いた。吸血鬼が不老不死に近いというのは本当なんだと実感したよ」

 それからミゲルは自分の生い立ちを語りはじめる。

 

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吸血鬼と不良神父~
~桜猫*日和~