★2/15:雑記更新 ・「嘘つき聖女候補~」と「座学の女王さま~」をメインに更新中。

bittersweet5

各話:表紙

「子供の前だから恥ずかしいってことにしといてやるよ」
「そういえば、いたな……」
「なに、オレとのちゅーでバートの存在忘れてたのか?」
「るさいっ」

 急に恥ずかしさが込み上げてきて、マリアはプイとそっぽを向いた。

(ああ、もう。きっと気のせいに違いない。キスをしているのに、寂しいと感じてしまったことなんて――)

「ホント、アンタは可愛くて困るな」

 笑いながら、ミゲルはマリアの頭をぽんぽんとやさしく撫でた。

 そのとき二人の背後で小さな呻き声が聞こえ、バートが目を覚ました。

「ここは……」

 見慣れない天井にぱちくりと目を瞬かせるバート。

 まだ少し重い頭を右に倒してみれば、見知った顔と見知らぬ顔が目に映る。

「よう、バート。目が覚めて良かったな」
「ミゲル兄ちゃん……痛っ」
「おいおい、全身あちこち痣になってんだ。無理に起きなくて良いから、そのまま寝てろ」
「うん……」

 慌てて起きようとしたのをミゲルにベッドへ押し戻され、大人しくなる。

 しかし、そんなバートの無垢な瞳にじわじわと涙が溜まっていく。

「……っ、こんな呑気に寝てる場合じゃ、ない、のに……っ」

 ぼろぼろと大きな目から涙がこぼれ落ちていく。

 悔しさと情けなさで体が震えているのが見て取れる。

 思わずマリアの胸も熱くなった。

 こんな年端もいかない少年が苦労しているのだと思うと、他人事ながら辛いものがある。

「仕事、行かないと……っ」

 滞納している家賃三か月分が重く心に圧し掛かっているのだ。

 指の一本でも動けば、這ってでも働きに行かなくてはとバートは思った。

 が、それはミゲルによって拒否される。

「駄目だ。お前のかあちゃんには連絡入れとくから、今日はここに泊まってけ。まずはその体を回復させることが先決だろ?」

「だけど、僕が行かないと……っ!」

 辛そうに声を絞り出すバートを見ていると、マリアは思わず抱きしめたい衝動に駆られた。

「安心しろ。家賃ならオレが立て替えとく。お前たちの居場所はオレ達が守ってやるさ。な、マリア?」

 よしよしと泣きじゃくるバートの頭を撫でながらミゲルは笑った。

 彼の言葉にマリアもこくりと力強く頷いてみせる。

「あり、がと……ミゲルにいちゃ……うぅーっ、うう……」

 緊張の糸が切れたのか、バートは顔をぐちゃぐちゃにして涙を零す。

 心細くて怖くて逃げたくても逃げられなくて、心が潰れそうなほど辛かったはずだ。

 まだ十にもならない少年に、ミゲルの言葉はどれほどありがたいと感じたことだろう。

「はははっ、よく泣くなーお前は」

 涙と鼻水でぐしょぐしょになったバートの顔をタオルで拭いてやりながら、ミゲルは笑った。

 それを近くで眺めていたマリアは、彼の笑顔が万民に光をもたらす太陽のように眩しく見えるのだった。

 そのあとバートは疲労のためかすぐに眠りに落ちた。

 なので、マリアとミゲルは貰ったパンと、ミゲルが作った簡易スープを夕飯に食べた。

 食事が済むとミゲルはバートを預かっていると伝えるために幼い少年の家へ向かった。

 

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吸血鬼と不良神父~
~桜猫*日和~