★2/15:雑記更新 ・「嘘つき聖女候補~」と「座学の女王さま~」をメインに更新中。

bittersweet2

各話:表紙

「なんだぁ? ここはあんたみたいなねーちゃんが来るところじゃないぜ。それとも体を売りにでも来たのかい?」

 三人のうちの巨漢が冗談めかしてそう言った。

 それに合わせ残りの二人がげらげらとはしたない声をあげて笑う。

 ところどころ汚れ、ほつれた服はきちんと手入れしていないのだろう。

 まさにゴロツキといった様相にマリアの中で嫌悪感が強くなる。

「本当に品位の欠片もないのだな。それはまだ良いとして、その少年こちらに引き渡してもらおうか」

「いくら別嬪さんの言うことでもそれはできねぇなぁ」
「大人三人でよってたかって子供に乱暴をして恥ずかしくないのか?」

 マリアの真面目な問いに、三人の男たちはさも愉快だといわんばかりに、下品な笑い声をあげた。

「恥ずかしいだって? 恥ずかしいのはこの坊主のほうさ。家賃を三ヶ月も滞納してんだからな。俺たちは全うな代金をいただきに来ただけさ」

「なるほど。それがなくなればその少年を解放するんだな?」
「ああ、もちろん。あんたが肩代わりするのかい?」

 リーダー格の男に問われマリアは少し考える。

 今手持ちの金は全てミゲルが用意してくれたものだ。

 彼女はミゲルの家に居候しているだけで、特に働いているわけではない。

「今は手持ちがない。だが私の知り合いが肩代わりする。それでどうだ?」
「ほう? で、その知り合いってのは誰だ?」

 そこでマリアは今一番この街で信頼している男の名を口にする。

「この近くに住んでいる神父のミゲルと言えば伝わるか?」

 ミゲルという名を聞いて男たちは一瞬怯んだ。どうやらよくない因縁でもあるらしい。

「あの神父か……わかった、今回はそれで引き下がってやる。明日にでも請求書を送りつける」

 あくまで目的の金を取り立てることが主な仕事である彼らは、金さえ手に入れば必要以上の暴力を振るうことはしない主義だった。

「わかった」
(よかった、なんとか人を殺さずに切り抜けることができたな)

「いくぞ、おまえら」

 マリアがほっと胸を撫で下ろすと、リーダー格の男に促され男たちはその場を去っていった。

 そして彼らがいた場所にはボロボロの少年が横たわっている。

 そっと近づいて抱き起こすが、意識を失っていて目を覚まさない。

「……」
(人間は、脆いな……こんな小さな体で、折れそうな手足で、辛かっただろう)

 そっと少年を横抱きにして、来た道を引き返す。

 この少年をこのままにはしておけないので、とりあえずマリアは家に戻ることにした。

 痩せた少年を抱きかかえたまま歩いていると、ぽつりと頬を水滴が跳ねた。

 空を仰げば辺りはすっかり薄暗くなり、空は灰色の雲で覆われていた。

 ぽつ、ぽつ、とまばらなリズムで小雨が降り始める。

 春先とはいえ、まだ雨に濡れると肌寒い季節だ。

 少年の体を少しでも濡らすまいと、自分のコートを脱いで彼を覆うように被せる。

 そして足早にミゲルの部屋を目指して歩く。

(人目が無ければ加速を使えるんだがな……)

 少し焦れた気持ちで石畳を蹴るように足早に歩く。

 すると後ろから呑気な声がかかった。

「こんな天気なのに傘も差さないのか、お嬢さん?」

 何気なく振り向けば、マリアの後ろに立っていたのは他の誰でもない、ミゲルその人だ。

「……仕事だったんじゃ?」

「雑魚だったんですぐ終わったんだよ。もっとこっちに寄れ、せっかく傘差してやってんのに濡れるだろ」

「あ、ああ……」

 言われるままにマリアはミゲルの側へ寄る。

 確かに傘に入ったお陰でいくらか雨がしのげる。

 思っても見ないミゲルの登場に、なぜかマリアは安心していることに気付く。

(ミゲルが通りかかってくれてよかった――)

 そう思ってしまった。

↑読了ついでにポチッと(*´ω`*)桜猫にちゅ~るが贈られます。
↑読了ついでにポチッと(*´ω`*)桜猫にちゅ~るが贈られます。
吸血鬼と不良神父~
~桜猫*日和~