★2/15:雑記更新 ・「嘘つき聖女候補~」と「座学の女王さま~」をメインに更新中。

天啓

各話表紙:聖女

 フィアーナが誕生日を迎えてから一ヶ月後。

 いつものようにラミレスにパンをあげて、神殿まで行ったついでに祈りを捧げてフィアーナは自宅に戻ってきた。

 だが、今日は朝から体が重いことに彼女は気づいていた。

(なんだかいつもとちがう……体が重いというか、心が重いというか……この訳のわからない重苦しさはなんなんだろう?)

 体が痛いわけでもなく、熱があるわけでもない。しかし、明らかに体調がおかしい。

「なんで……」

 とうとうフィアーナは立っていることすらできず、雪崩れるように自分のベッドに倒れ込む。

 その重苦しさは、まるで魂までも押しつぶしてしまいそうなほど、強力なものだ。

 フィアーナがベッドで横になっていると、洗濯物を干し終えた母親がやってきた。

 母親はすぐに子供の異変に気づいた。

「どうしたの、フィアーナ。顔色が悪いわ」
「お母さん……なんだか重苦しくて……体はどこも痛くないのに、なんでかな……」
「熱もないみたいね。だけど、フィアーナは起き上がれないのね」

 母親はフィアーナの額に手を当て、熱がないことを確認すると、そっとフィアーナに毛布をかけた。

「これからお医者さまを呼んでくるから、少しだけ我慢して待っててね」

 額に口づけられたあと、母親は医者を呼びに行った。

 半刻ほどして年のいったベテランだと言わんばかりの医者がやってきた。

 フィアーナが赤子の頃からお世話になっている、信頼できる先生だ。

 今ではすっかり髪の毛は真っ白である。

「大丈夫かい、フィアーナ。ちょっと口を開けて、喉を見せてごらん……」

 医者の言う通り口を開け、そのまま色々チェックされたが、フィアーナの体におかしなところは見当たらなかった。

「体の機能的にはすべて順調に動いている。これといった原因が見当たらないね……」

 長年医者をやっている彼でさえ、この体調不良の原因は特定できなかった。

 かなり稀なケースに相当する。

「また後で様子を見に来よう。一旦、気付け薬だけ出しておくよ」
「はい、ありがとうございます。先生」

 もう口さえ開くことがつらいフィアーナの代わりに、母親が答えた。

 フィアーナが寝込んでいるという情報は、神殿にいるラミレスの耳にもすぐに届いた。

「フィアーナ!」

 酷く焦った様子で名前を呼ばれ、フィアーナが視線だけそちらに向けると、肩で息をするラミレスが駆け込んできた。

 余程急いできたのか、息も荒く眼鏡がずり落ちかけている。

 授業を終えた彼は終業の鐘と同時に神殿を飛び出したのだ。

「……っ」

 名前を呼ぼうとしたが、フィアーナの口は言葉を紡がなかった。

(ラミレス、来てくれたんだ……ああ、だけどもう目を開けているのもつらい……)

「おばさん、フィアーナは大丈夫なんですか?」

「それが、先生も原因がわからないって……あと一日様子を見て聖女さまに癒やしてもらうか迷っているのよ」

「そう、ですか……」

 ラミレスはベッドに近づき、フィアーナの側に座った。

 フィアーナはラミレスがお見舞いに来てくれて嬉しいことを伝えたいのに、それができずにもどかしい。

 しかも、ますます瞼は重さを増し、とうとうフィアーナは瞳を閉じてしまった。

 不安な顔をしたラミレスが、フィアーナの額にそっと触れる。

 それから労るように銀色の頭をやさしく撫でた。

 フィアーナの頭から手を離した彼は、はっとなにかに気づく。

「光ってる……」

 フィアーナの額が白銀に光っている。

 その光はどんどん大きくなり、やがて部屋全体を覆い尽くすほどまでになった。

 あまりの強烈な眩しさに、ラミレスも母親も目を開けていられない。

 だが、フィアーナはその瞬間覚醒した。

 それまであった重苦しさが一気になくなり、目を開ける。

(わたしの中に……なにか入ってくる……)

 力強く、温かく、そして包み込むようなもの。

 聖なるもの。生命の源ともいえるもの。

(ああ、これは……これが、聖なる力なんだ――)

 

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癒やしの聖女は~
~桜猫*日和~