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神官長とラミレス

各話表紙:聖女 癒やしの聖女は~

 午後のお務めが終わると、フィアーナは長い溜息をついた。

(少し前からお腹が痛い……きっと痣ができてるんですね)

 幸い皆帰ったあとで、癒やしの聖堂に今いるのはフィアーナとラミレスだけだ。

 そのラミレスが心配そうに自分を見つめている。

「歩くのは……無理そうですね」

 聖女の守護者であるラミレスには、フィアーナの腹部の痣が視えているのだろう。

「部屋まで運びます。すぐ浄化しますから、もう少し頑張ってください」

 ラミレスに横抱きにされ、フィアーナはその男らしい首に両手を絡めた。

「ごめんなさい、最近運ばせてばかりで……」
「そんなの今更です。フィアーナは私に一生甘えていればいいんです」

 癒やしの聖堂をあとにしたラミレスは、夕日が照らす廊下を歩いていく。

 神殿内に入ると、帰宅に向かう神官たちとすれ違う。

 フィアーナやラミレスのように個室が与えられるのは役職がある者だけだ。

 一般の神官や見習いたちは自分たちの家に帰る。

 フィアーナの私室に続く廊下を歩いていると、昼間とは別の神官が向こうからやってくる。

 だが一般の神官とは違い、その身に纏うのは青い法衣だ。

 神官長が身につけるものだ。

 神官長はフィアーナに気づくとさっそく話しかけてきた。

「フィアーナ、君に会えるとは幸運だ。聖女としての役割は順調かい?」
「ゴア神官長、ご無沙汰しております……」

 フィアーナは微笑みこそしたが、この神官長が苦手だった。

 フィアーナが聖女になったばかりの頃から、度々性的な視線を感じてきたからだ。

「最近また一段と綺麗になったね。その相変わらず柔らかそうな肌に、細い腰が……ギャアッ!」

 神官長が悲痛な声を上げたのは、ラミレスが思い切り足を踏んだからだ。

「足元がよく見えず、間違って踏んでしまいました。申し訳ありません」

 ちっとも申し訳なさそうではなくラミレスは音を発した。

 そのあまりの抑揚の無さに内心フィアーナは笑ってしまった。

「ラミレス、貴様っ」
「申し訳ありません、あいにく両手が塞がっておりまして」

 ラミレスがにこやかに告げると神官長は怒りを露わにする。

「前から思っていたが、聖女に馴れ馴れしいぞラミレス! 聖女付きの神官とはいえ、度々彼女をそうやって抱いているだろう?」

「必要だから横抱きにしているのです。先を急ぐので失礼いたします」

 ラミレスが会釈して神官長の横を通り過ぎようとすると、彼は行かせまいとラミレスの肩を強く掴んだ。

「なんの真似です? 急ぐのですが」
「フィアーナを運ぶなら私が運ぼう。君は自分の部屋に戻りたまえ」

 一気に場の空気が緊張に包まれる。なにか良からぬことが起こるのではとフィアーナは焦る。

「神官長、ラミレスに運んでもらいますから大丈夫です」
「君は黙っていなさい」
「――っ!」

 フィアーナが神官長にピシャリと言い切られた瞬間、ラミレスの口元から笑みが消えた。

「さあ、ラミレス。彼女を渡しなさい」
「神官長、あなたはフィアーナに命をかけられますか?」

 ラミレスの真剣な問い。だが、問いを投げかけられた神官長は鼻で笑った。

「なにを馬鹿げたことを。そんなことできるわけないだろう」

「でしょうね。だからあなたにフィアーナは渡せない。覚悟がないものがフィアーナに触れることは許さない。フィアーナにおかしな真似をしようとすれば、次は足では済ませませんよ」

 落ち着いた声だが、隠しきれない威圧感と殺気に近いものが言葉の端々ににじみ出る。

 それに加え、射殺さんばかりの青く凍った目で睨みつけられ、神官長は寒気を感じたのか身震いした。

「失礼します」

 毅然と言い切り、フィアーナを横抱きにしたラミレスはその場をあとにした。

 廊下の突き当りまで歩き、右に曲がるとラミレスはやれやれと溜息をついた。

「災難でしたね、フィアーナ」

 ラミレスに穏やかな笑顔を向けられ安心する。

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癒やしの聖女は~
~桜猫*日和~