★2/15:雑記更新 ・「嘘つき聖女候補~」と「座学の女王さま~」をメインに更新中。

聖痕のような2

各話表紙:聖女

 ラミレスの腕から解放される。

 まずは右腕から浄化が始まった。

 二の腕から手首へと、三つの痣にラミレスが口づけると、いつものように光の粒子になって消えていった。

 そのことにホッとしたフィアーナは、剥ぎ取られ床に投げ出されたままの自分の聖衣に目が行く。

 おもだっては見えなかったが、服の裏地には所々赤い染みができていた。

「……ラミレスがいてくれて、本当に良かった……きっとわたし一人だったら、取り乱して大変なことになってましたから……」

「ああ、そうだな」

 フィアーナの言葉に短く答え、ラミレスは次々と痣を浄化していく。

 しかしなぜか、その表情は晴れない。

 繰り返しフィアーナの肌に口づけるラミレスの唇は、赤く染まっている。

「まって、ラミレス。唇が……」

 フィアーナは脱がされた聖衣からハンカチを取り出すと、そっとラミレスの唇を拭った。

 フィアーナの痣ににじむ血で紅を引いたようになっていた。

「……こんな形でお前の血の味を知ることになるなんてな」

 まだ残る痛々しい痣を見つめながら、ラミレスは切なげに瞳を細めた。

「仕方ありません。これも聖女としての役割ですから」

 フィアーナは儚い笑みを浮かべる。

「俺はそうは思えない。お前一人がこんな負担を背負わされて。最近は攫われることも減ったが、もしお前がこの状態で連れて行かれたらと思うと――」

 そこまで話すとラミレスは顔を隠すように手で覆った。

 手に阻まれて見えないが、もしかしたら泣いているのだろうか。

「ラミレス、大丈夫ですか?」

 石のように動かなくなってしまったラミレスに声をかけるが反応はない。

 だから、フィアーナはそっとラミレスの頭を胸元に抱き寄せた。

 母が子を抱くように。

「……俺はなんて無力なんだ……目の前で苦しむお前を、ちっとも楽にしてやれない。今月に入ってからは、ずっと痣のことで悩まされてる。歴代の聖女はこんなことなかったのに、なぜお前だけ……」

 呻くように話すラミレスの声からは、フィアーナに対する苦渋と慈しみの思いが感じられた。

「お前の痣に口づけるたびに血の味がして、泣きたくなる……」

「あなたのせいじゃありませんよ、ラミレス。それにわたしはちゃんと知っています。これまであなたがどれほどわたしのために尽くしてくれたのかを。わたしのためを思って、攫われたことやそれに付随する出来事も、ずっと隠してくれてきたことも」

 初めて弱音を吐くラミレスを前に、フィアーナの胸が切なく締めつけられる。

 ただの護衛なら、聖女が攫われそれを救ったことを逐一上に報告し、手柄を立てようと考えただろう。

 しかしラミレスはそれを良しとしなかった。

 頻繁に聖女が攫われるようなことが表沙汰になれば、フィアーナは噂の的にされる。

 それはラミレスはもちろん、フィアーナにとっても良くないことは明白だ。

 聖女にマイナスなイメージはつけたくないし、そうなればフィアーナは日々を安心して生きられないだろう。

 だからラミレスはこういったことは、法王にのみ打ち明け報告していた。

 法王もまた彼の考えに賛同していた。

 何かあったときのために、記録もしっかりと残してある。

 なぜならフィアーナを付け狙う輩は、一度では飽き足らず二度、三度と襲ってくることがあったからだ。

「俺はお前が大切だ……この命よりも」

「ありがとう、ラミレス。でも自分を一番大切にしてください。だって、わたしが一番つらいのは、あなたを失うことだから……」

「ああ……わかってる」

 むくりと顔を上げたラミレスは泣きそうな様子だが、口元には笑みを浮かべている。

(なんて顔するの……あなたにそんなつらそうな顔されたら、聖女なんて投げ出したくなってしまう……これから先、ずっとラミレスがこんな顔を見せるくらいならいっそ――)

「……っ」

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癒やしの聖女は~
~桜猫*日和~