★2/15:雑記更新 ・「嘘つき聖女候補~」と「座学の女王さま~」をメインに更新中。

聖痕のような

各話表紙:聖女

 翌日。

 その日の午前中までは、フィアーナは絶好調だった。

 いつもの痣も、大きな痣も現れなかったからだ。

 しかし、午後のお務めを終えたとたん、ラミレスが険しい表情で近づいてきた。

「え、ちょっと、ラミレス。どうしたんですか?」
「油断した」

 たったそれだけ呟くと、ラミレスはフィアーナを抱き上げ彼の私室に駆け込んだ。

 鍵をかけることも忘れない。

 ラミレスはフィアーナを椅子に座らせると、有無を言わせず、服の袖を捲った。

 そこにはいつもの硬貨大の痣があり――。

「え、赤く……これって……」
「痣だけならまだしも、血が滲んでる……まるで聖痕スティグマだ」

 フィアーナの白い柔肌に、赤く痛々しい痣が浮かぶ。

 痣の一部がひっかき傷のようになっていた。

「……少し、痛痒いような感覚はありましたけど……」

 フィアーナはまじまじと自分の痣を見つめる。

 現在進行系で血がじわりとにじみ出る。そこでフィアーナは、ハッとする。

「聖衣が汚れちゃうっ!」
「馬鹿か、お前は。そんなことはどうでもいい。自分の体を心配しろ」

 溜め息を吐きながら、ラミレスがフィアーナの肌ににじむ血をタオルで拭いた。

「お前の体に傷跡が残るなんて冗談じゃない。血を拭いたらすぐに浄化するぞ。脱げ」
「いきなり脱げって言われても……」
「お前には見えないところにもたくさん痣ができてる……二十は超えてる……」
「そう、ですか……」

 こんな血がにじむような痣が二十個もあるとは、さすがに想像していなかったフィアーナは呆然とする。

「俺が脱がす」

 ラミレスの言葉にこくりと頷くフィアーナ。

 衝撃の事実を告げられ、とても自分で服を脱ぐ気力などない。

 痣ができるだけならまだいい。

 しかし、そこに自分の血がにじみ出るのを見たあとでは、さすがに楽観視はできなかった。

 珍しくラミレスも焦っているようだ。

 もどかしいといった様子でフィアーナの服を剥ぎ取り、下着姿にした。

 晒された己の肌を見てフィアーナはゾクリとした。

「あ……っ……」

 手足に確認できただけでも十個以上の痣があり、血がにじみ出ていた。

 とても見ていて気持ちの良いものではない。

 ひっかき傷のような痕からじわりじわりと、一滴ずつ染み出すように赤い血がにじみ出る。

「や……こわい、どうして……ラミレス、助けて……」

 初めてフィアーナは自分の体に起きた変化が恐ろしいと思った。

 大きくなっても、色が濃くなっても、ただ痣ができているだけなら、それほどショックは受けなかった。

 しかし、蝋燭が溶けるように自分の肌から血が出るのを見ていると、急に恐ろしくなってしまった。

 恐怖から顔は青ざめ、怯えた青い瞳は涙で潤む。

 あまりにも痛々しいフィアーナの様子に我慢できなかったのだろう。

 ラミレスは服が血で汚れるのも構わず、フィアーナを力強く抱きしめた。

「大丈夫だ、フィアーナ。俺に視えるということは、浄化で治るということだ。大丈夫だ」
「うぅ……っ……ふ……」

 恐怖からか、安心感からか、フィアーナの頬を涙が伝う。

「安心しろ。俺が治す」

 やりきれない思いがラミレスの表情を歪ませる。

「くそっ、なんでお前だけがこんな……! 聖女として多くの人々を救ってきたお前が、こんな仕打ちを受けるなんて納得行かない。痛いのも苦しいのも全部俺の役目でよかったのに……!」

(ああ、ラミレスはこんなときまでわたしにやさしい……。血が滲んで怖くてびっくりしたけど、頑張らなきゃ。ラミレスにこんな顔させたくない……)

「ごめんなさい、ラミレス。少しびっくりしただけです。浄化をお願いします」

 とても笑みを浮かべることはできなかったが、それでもフィアーナはラミレスを少しでも安心させようと、浄化を頼んだ。

「ああ、わかった」

↑読了ついでにポチッと(*´ω`*)桜猫にちゅ~るが贈られます。
↑読了ついでにポチッと(*´ω`*)桜猫にちゅ~るが贈られます。
癒やしの聖女は~
~桜猫*日和~