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お務め2

各話表紙:聖女 癒やしの聖女は~

「頭を上げてください。わたしがすごいのではありません。神さまの力を代行しているだけですから。あなたの大切な人のためにこの力を使えたことを、嬉しく思います」

 フィアーナは患者と付き添いの者に、穏やかな笑みを向ける。

(本当によかった。ここに来るのは医師にも治せないと言われ、絶望した人ばかりがやってくる。楽しいことばかりではないけれど、こうやって一人でも多くの人を救えるのは、とても嬉しいこと)

「聖女さま……! ああ、なんておやさしい……この御恩にどうやって報いたらいいのですか?」

 顔を上げた付き添いと元患者は、ボロボロと涙をこぼしながら問う。

 それに対しフィアーナはこう答えた。

「あなたがたが、幸せだと思う人生を生きてください。これまで苦しんだ分、幸せになってください。それがわたしにとって一番の報酬です」

 フィアーナが慈愛に満ちた眼差しで見つめると、彼らは再び額を床に擦り付けんばかりに頭を下げた。

 そんなフィアーナをラミレスは愛おしげに見守るのだった。

 それから順番に患者を癒やしていき、昼前になり、あと一人を残すところとなった。

 午前中最後の一人は、金髪の勝ち気そうな少女だ。

 執事が後ろについている。

 車椅子に座っているが、その身に纏うのは豪華なドレス。

 公爵家クラスの令嬢だろう。歳は十四前後といったところか。

「では最後の方、どうぞ。申し訳ありません。かなり待たせてしまいましたね」

 ラミレスがやさしく話しかけると、少女は僅かに頬を染めた。

 フィアーナが癒やしの力を使うと、少女はたちどころに完治した。

 車椅子から立ち上がりトコトコと歩くことができた。

「ありがとうございます、聖女さま! こんなにすぐ治るなんてびっくりしちゃった」
「うふふ、よかったですね。これで自分の足で好きなところへ歩いていけますね」
「ええ、あなたにはいくら感謝しても足りないわ」

 少女は年相応のとても可愛らしい笑みを浮かべた。

 そして一礼すると、なぜかラミレスの方へ向かって歩き出した。

「私になにかご用ですか?」

 ラミレスの前で立ち止まった少女に彼は問いかけた。

 すると少女は少しもじもじしながらラミレスを見上げた。

「あなた素敵ね。朝ここに来てからずっと気になっていたの」
「おや、それは光栄ですね。小さなレディのお眼鏡にかなうとは」

 にっこりと微笑むラミレス。少女も微笑み返すと、ラミレスの腕をギュッと両手で掴んだ。

「あなた合格よ。見た目もいいし、私のお婿さんにしてあげる!」
「積極的なお嬢さまですね。大変光栄ではありますが、辞退させていただきます」

 話しながらラミレスは少女の手を自分の腕から離した。

「だめよ、あなたは私のお婿さんにするの! 嫌だと言っても無駄よ? 私のお父様は王さまの次に偉いんだから! 私が頼めばなんだって叶えてくれるの」

 二人のやり取りを眺めているフィアーナは動揺する。

 王の次に権力を持っているなら、有無を言わさず実行することも可能だからだ。

「それでも、はっきりときっぱりとお断り申し上げます。私は聖女付きの神官であり、この身も心も聖女に捧げておりますので」

「そんなの関係ないわ。お父さまの権力でなんとでもなるもの」

 絶対逃さないからと少女は勝ち誇った笑みを浮かべた。

 しかしラミレスは微塵も動揺せず、こう返す。

「本当にそうでしょうか? 権力でどうにでもなるなら、なぜあなたはここに来たのです? 父君の権力をもってしても、その足を治せなかったからではありませんか?」

 その瞬間、少女ははっとした。言われて初めて気がついたようだ。

「……あなたの、言うとおりだわ……権力があっても、どうにもならないこともあるのね……」

「ええ。それは私に関しても同じです。いくら権力を振りかざそうが、金を積まれようが、私はあなたのものにはなりません」

「……そう、ね……」

 少女は一気に落胆する。さらにラミレスは続ける。

「それに、私には心に決めた女性がいますから」

 言葉とともにラミレスが自分を見つめ微笑んだのに気付き、フィアーナは頬を赤らめた。

(なんだかくすぐったい気分です……)

「なら仕方ないわね。あなたはとっても素敵だけど、諦めてあげる」

 あくまで上から目線だが、少女はラミレスのことを諦めたようだ。

「それが賢明です。私なんてすぐおじさんになりますから。あなたに似合う素敵な男性がきっと現れますよ」

「それもそうね。じゃあ私帰るわ」
「はい、気を付けてお帰りください」

 ラミレスが笑顔で見送ると、少女も笑顔で去っていった。

 

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癒やしの聖女は~
~桜猫*日和~