Oops! It appears that you have disabled your Javascript. In order for you to see this page as it is meant to appear, we ask that you please re-enable your Javascript!

穏やかな日常2

各話表紙:聖女 癒やしの聖女は~

 などとフィアーナが思っているうちに、癒やしの聖堂に着いてしまった。

 聖堂に入ると、今日もたくさんの患者が並んでいる。

(さて、今日もお務め頑張らないといけませんね)

 フィアーナは不安を抱える者たちに向けて、聖女として穏やかな笑みを向ける。

 そんな些細なことでも、心に大きな負担を背負っている者たちにとっては、ときには言葉以上に励みになるのだ。

「ああ、聖女さまがきてくださった……これで助かる」
「なんと神々しい」
「聖女さま……!」

 中にはフィアーナを拝みはじめる者までいる。

 自分が与える一挙一動が、彼らにとって大きな意味を持つことを十分理解しているフィアーナは、人前では決して手を抜かない。

「それでは一番の番号札をお持ちの方からどうぞ」

 いつものようにラミレスの説明が一通り済むと、最初の患者がフィアーナの前に歩み出る。

「今日までよく頑張ってこられましたね。すぐ治しますから」

 フィアーナが微笑むと、患者はポロポロと涙を流す。

 七十歳ほどであろうか。

 やせ細ってはいないが、膝に大きな瘤のような物ができていた。

 体を支える杖と付き添いの物が一人。

 ここまで歩いてくるのは、さぞ大変だったことだろう。

 フィアーナが老婆の額に手のひらを翳すと、たちまち白銀の光が包み込む。

 苦痛に歪んでいた老婆の顔は徐々に安らかなものへ変化する。

 そうして数分後には、彼女をこれまで苦しめていた瘤は光の粒子になり消えた。

 治癒が終わると、今度は老婆は感謝の涙を流しながら、何度も頭を下げて聖堂をあとにした。

 二人目、三人目と順調に患者を治していき、残すところあと二人となった。

(今日は人数は多いけど、深刻すぎる患者がいなかったから、あまり疲れていませんね。午後も頑張れそうです)

 ちらりとラミレスに視線を向ければ、ふわりと微笑み返され、フィアーナは思わずサッと視線を逸らしてしまった。

(どうしてかしら。なんだかいつにも増して胸がドキドキします……ラミレスの顔なんて見慣れているのに)

 物心つく前からラミレスと共にいたのだ。

 毎日見ない日はなかった。

 それくらいラミレスはフィアーナの日常の一部なのだ。

 幼い頃は兄のように慕っていたが、ラミレスのためにパンを焼くようになり、成長する彼をいつしか異性として意識するようになっていた。

 いつでもラミレスは礼儀正しく穏やかで、共にいてとても安心できる存在だった。

 しかし、フィアーナが十八を迎えると、ラミレスは徐々に変わってきた。

 つまりフィアーナを女性として扱うようになり、今ではとても人前では話せないような恥ずかしい行為までしてくるようになった。

(でもこの数日はブラックラミレスになっていないし、本当に平和……)

「……アーナ、フィアーナ、次の患者が待ってますよ」

 そのラミレスに呼ばれていると気づくのに、数秒かかった。

「きゃっ。あ、ごめんなさい! すぐに治癒します。お待たせして申し訳ありません」

 どうやら自分は今、完全に心ここにあらずだったらしい。

 フィアーナは羞恥に頬を朱に染めながら、目の前の患者に詫びた。

 それから最後の一人の治癒を終えるまで、フィアーナは集中してことに当たったのだった。

 すべての治癒を終えると、ラミレスにぽふりと頭を撫でられた。

「お疲れさまでした。あなたにしては珍しく上の空だったようですが、なにか思い悩むことでもあるんですか?」

「ううん、わたしがまだ未熟だっただけ……ラミレスがフォローしてくれて助かりました」

 フィアーナの言葉に安心したらしく、ラミレスはふっと笑みを浮かべる。

「そうですか。今日は特に痣も出てませんし、食堂に行きますか?」
「ええ。こんな晴れた気持ちのいい日には、太陽の下で食べたいです」

 この日は午後も問題なく、穏やかに一日が過ぎていったのだった。

 

8+
↑読了ついでにポチッと(*´ω`*)桜猫にちゅ~るが贈られます。
↑読了ついでにポチッと(*´ω`*)桜猫にちゅ~るが贈られます。
癒やしの聖女は~
~桜猫*日和~