★2/15:雑記更新 ・「嘘つき聖女候補~」と「座学の女王さま~」をメインに更新中。

穏やかな日常

各話表紙:聖女

 数日後。

 珍しくこの数日は、痣が現れていない。

 その分フィアーナの心は軽い。

(一時はどうなることかと思ったけど、たまたま痣がたくさん出ただけなのかもしれませんね)

 癒やしの聖堂までを、いつものようにラミレスのエスコートで歩いていく。

「嬉しそうですね、フィアーナ」
「ええ、最近調子が良いですから。癒やしも問題なくできてますし」
「そうですか。私は少し残念です」

 ラミレスの背中を眺めながら、フィアーナは小さく首を傾げる。

「どうしてですか? わたしが好調だとラミレスの負担が減るでしょう?」

 するとラミレスが振り向き、次のように告げた。

「だって、あなたに触れる大義名分がないではありませんか。私は常に飢えているんです、あなたに」

 ラミレスの顔に浮かぶのは穏やかな笑みで、遠くから見れば日常会話をしているようにしか見えないだろう。

 しかし、朝からこんなことを聞かされたフィアーナはたまったものではない。

 ほんのりと目元を朱に染めた。

「なんてこと言うんですか……」

 先日ラミレスにされた淫らな行為を思い出し、フィアーナは体の奥が疼くのがわかった。

「あの程度の触れ合いでは、とても満足できません。あなたを快楽の海に沈めておけたらどんなにいいか……」

「こ、怖いこと言わないでください」
「怖いですか? 私にとっては至福の時間でしたが」

 ラミレスの青い瞳がわずかに熱を孕む。

 先日の逢瀬を思い出させるような、色気が漂う。

「至福の時間って……」

 フィアーナの鼓動がドクンと跳ねた。

「覚えているでしょう? あなたもずいぶん感じていましたから」
「言わないで……」

(お務めの前に、そんな恥ずかしいこと思い出させないで。顔が火照ってしまう)

「あなたに触れて、少しは落ち着くと思ったんですが逆効果でした。触れたら触れた分だけ、もっとあなたを肌に感じたくなる」

 繋いだ手からラミレスの体温が少し高くなったのを感じ、フィアーナは更に頬を赤らめた。

 これ以上思い出したくないのに、そう思うほど先日の逢瀬をありありと思い出してしまう。

「やぶさかでは、ないですが……」

 思わずフィアーナは本音をこぼしてしまう。

 人生で最も恥ずかしい体験だったが、気持ちいいのも確かだった。

 フィアーナとて女性だ。男女の交わりに興味が無いわけではない。

「本当ですか? 今更ですが、少しやりすぎたと思っていたので……私が触れることを怖がっていないかと、気になっていました」

「そうなんですか? なんだか意外です」

 日頃あれだけ抱かせろと言うラミレスである。

 だからフィアーナは彼がそんなふうに思っていると知り、ほんの少し安心した。

「あなたに飢えていることは確かですが、嫌われたら元も子もありませんから」
「うふふ、それはそうですね」
「はい」

 ふわりと風が吹いた。

 その風に乗って薄桃色の花びらが二人の目の前をひらひらと舞う。

 愛を言葉にして具現化したらこうなるのではないかというような、美しい光景だ。

 花びらが雪のようにやさしく二人を包み込む。

「綺麗な花吹雪ですね……時と場所が変わっても、こうやってずっとあなたと共に過ごして生きたい。そう思います」

「はい……」

 穏やかなラミレスの声が、胸にすうっと染み込んでくる。

 ラミレスの想いが嬉しくて、フィアーナは微笑む。

 体を求めてくるときは獰猛な獣のようだが、普段の彼は温厚で、フィアーナが世界で一番安心できる場所を提供してくれる。

 フィアーナは自分の前をゆったりと歩くラミレスの背中を見つめる。

 とても大きくて頼りがいのある背中だ。

「……」
(人目がなければ、この背中に抱きつくのに……頬ずりしたい、です……)

 

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癒やしの聖女は~
~桜猫*日和~