★2/15:雑記更新 ・「嘘つき聖女候補~」と「座学の女王さま~」をメインに更新中。

名誉聖女と大神官

各話表紙:聖女

「きゃっ」

 眩しさに思わず両目をギュッと閉じた。

 それでも肌に感じるのは太陽の光だとわかる。

 フィアーナが恐る恐る瞳を開けると、目の前には大勢の民衆で埋め尽くされた神殿内の広場が広がっていた。

(え? なに? どういうこと?)
「ラミレ……ス、その、格好……」

 隣りにいたラミレスに助けを求めようと見上げれば、神官服よりずっと豪華な服を纏った彼が横にいた。

 水色の神官服よりも、もっと深く濃いロイヤルブルーの聖衣を着ている。

 法王にも引けを取らないほど豪華な衣装だ。

 左手には聖杖ロッドを持っている。

「はは、どうやら神の奇跡というやつみたいです。水色の聖衣もお似合いですよ、フィアーナ」
「え? あ、いつの間に……」

 着慣れた聖衣とは違って、少し落ち着いた、やや体の線がでるドレスをフィアーナは身につけていた。

 これまでの聖衣より女性らしさが強調されたデザインの衣装だ。

 広く開いた胸元には、繊細なカットを施されたダイヤモンドのネックレスが、陽光を弾き煌めく。

 フィアーナとラミレスの近くに控えていた神官が、二人に話しかける。

「お二人共、そろそろ出番です。皆、新しい大神官と名誉聖女に沸き立っています。頑張ってください」

「そうですか、ありがとうございます」

 ラミレスは動じることなく穏やかな笑みを神官に向けた。

(大神官? それに名誉聖女って……)

「行きますよ、フィアーナ」

 戸惑うフィアーナにラミレスはそっと右手を差し出す。

 フィアーナはなんの疑いもなく、最初からそうであるかのように、ラミレスの手を取った。

(これからなにが起きようと、ラミレスが隣りにいるなら大丈夫……)
「はい」

 少し緊張しながらも、フィアーナはラミレスに向けて微笑んだ。

 ラミレスに手を引かれ進んだ先には半円型に飛び出たバルコニーになっている。

 その先には豪華な装飾が施された椅子にゆったりと腰を落ち着ける法王がいる。

 彼がこちらに向ける眼差しはとても穏やかなものだ。

 法王の足元まで深紅の絨毯がが敷かれていて、二人はそこを優雅に歩く。

 一歩、また一歩と法王と距離が近づくにつれ、彼が喜んでいることが伝わってくる。

 二人は指定の位置まで来ると、その場に膝を付き頭を垂れた。

「面を上げよ」

 法王カールの言葉に、フィアーナとラミレスは静かに頭を上げる。

 法王と目が合うとにっこりと微笑まれた。

(よくわからないけど、とっても歓迎されているみたい……なにかいいことでもあったのかしら?)

「ラミレス・ファーウッド」
「はい」

 法王に名を呼ばれ、ラミレスが返事をした。一体何を言われるのだろうか。

「我々はそなたの偉大な功績を認め、そして称え、そなたを大神官に任命する」

 法王の宣言とともに、広場から歓声が上がる。

 法王は椅子から立ち上がり、壇上を優雅に降りると、フィアーナたちの傍に控えている神官が銀のトレイに載せているものを手に取った。

 それは大神官だけが身につけることが許される聖帽だ。

 その聖帽が今、ラミレスのやわらかな銀髪の上にそっと置かれた。

「謹んで拝命いたします」

 ラミレスの揺るぎない言葉に、法王は満足気に頷いた。

「フィアーナ・エルスワイヤー」
「はい」

 ラミレスに習い、フィアーナも名を呼ばれたので返事をした。

「十年という長きに渡り聖女を務めた功績は今までに例がなく、そなたに救われた者は数知れぬ。その功績を称え、そなたを名誉聖女に任命する」

 法王はもう一つ銀のトレイからあるものを手に取ると、フィアーナの頭にそっと載せた。

 それはフィアーナが聖女であったとき身につけていたサークレットと非常によく似たものだった。

「謹んで拝命いたします」

 フィアーナはそれだけ答えるので精一杯だ。

 すでに癒やしの力がない自分を、このように表彰してくれるとは全く予想していなかった。

 今の自分はただの娘でしかないのだ。

(ああ、なんてありがたいこと……)

「フィアーナ、ラミレス、立って皆さんに晴れ姿を披露してあげなさい」

 二人は法王にやさしく促され、立ち上がる。

 ゆっくりと振り向けば、広場に集まった民衆が喜びの声を上げている。

 ラミレスが小さく手をふると民衆から割れんばかりの拍手が沸き起こった。

「ほら、フィアーナ。あなたも手の一つくらい振ってあげないと」
「わ、わかったわ」

 ラミレスに習いフィアーナも小さく手を振った。

 すると先程と同じく大きな拍手が返ってきた。

 

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癒やしの聖女は~
~桜猫*日和~