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守りたいのに3

各話表紙:聖女 癒やしの聖女は~

「……これは表沙汰にしていなかったことだが、話しておく必要があるな。フィアーナは数回誘拐され、そのたびに騎士団が助けたことになっていることは皆知っていよう。だがそれは、ほんの一部のことだ。聖女という希少な存在である彼女は、過去幾度となく国を問わず攫われてきたのだ。……そして、彼女を毎回奪還してきたのがラミレスというわけだ」

「な……っ、なんだとっ!?」

 初めて明かされる事実に、ゴア神官長をはじめ、この場にいた全員が驚いた。

 まさか聖女付きの、一介の神官がそんなことをしていたとは想像もしなかったのだろう。

「ラミレスの働きはとてつもなく大きい。この神殿の威信だけでなく、この国自体の威信も守ってきたのだ。その数は尋常ではない。いとも容易く聖女を攫われるような国に誰が敬意を払う? 彼はそれを幾度となく回避してきたのだ――だが今日まで、フィアーナを大切に思うラミレスに他言は無用と口止めされていた……すまんな、ラミレス」

 秘密を暴露したことに対し、法王は申し訳なさそうにラミレスに頭を下げた。

「猊下……」

 ラミレスは法王を責める気持ちはなかったが、複雑な心境だろう。

 その表情には困惑が見て取れた。

「これだけの功績があれば、どれほどの富と名誉を得られるだろうか? しかしラミレスはなにも求めず、ひたすらフィアーナの幸せだけを願い、口外しないようにと今日まで聖女付きの神官を務めてきたのだ。私にはそんな彼が強引にフィアーナの純潔を奪ったとは思えないし、フィアーナ本人も否定している」

 法王の言葉に周囲の者たちは複雑な表情だ。

 ラミレスは私利私欲のためにフィアーナを抱いたわけではないのだ。

 それがわかるから全員押し黙ってしまう。

「癒やしの力を待っている人々がいるのは、重々承知しています……でも、聖女である前に、わたしも一人の女性なんです。神の教えが愛を尊ぶものならば、わたしにも適用されていいはずです。聖女だけ愛しい人と幸せになってはいけないなんて教え、わたしは知りません。神が慈悲深い存在だというのなら、この選択を否定するようなことはないと、信じたいです……」

 フィアーナの必死の訴えに、高官たちは難しい顔で唸る。

 確かに神殿の崇拝する神の教えは愛そのものだからだ。

 降り注ぐ太陽の暖かな光のように、万民に愛の尊さを教え愛を信じることが神殿の教えなのだ。

「し、しかし、聖女が力を失ってしまった今、我々はどうする?」

「もっともな質問だ。この件に関して、一度私に預からせてほしいのだが、皆はどうだ?」

「……私は異存はない」
「私もだ」

 ゴア神官長を筆頭に、他に考えが浮かばないのか、次々に賛同の声が上がった。

「ではこれにて、一旦閉会とする。解散」

 法王自ら会議の幕を引き、一同は退室した。

 フィアーナは自室へ向かう法王の背を追った。

「カールさま」

 猊下ではなく、法王の名を呼んだのは、聖女ではなくフィアーナ一個人としてだからだ。

「なんだい、フィアーナ?」

 まるで愛娘を見つめるような眼差しを法王に向けられる。

 彼の深い親愛が伝わってきて、フィアーナは胸がいっぱいになった。

「ありがとうございます。ラミレスを悪く言わないでいてくれて……ラミレスがわたしの純潔を奪ったと言ったときはどうしようかと……――っ」

「君もラミレスも私にとっては娘と息子同然だ。伊達に十年見守ってきたわけではないからね。できれば幸せになってほしいと思っている」

 法王は慈愛に満ちた深くやさしい笑みを浮かべた。

「カールさま、なにか不都合があれば、いつでも私を切り捨ててください。フィアーナが罵られる様など見たくありませんから……っ!?」

 ラミレスが言い終わるのと同時に、フィアーナの平手が彼の頬をぺちんと叩いた。

「ラミレスはちっともわかってない! わたしのために勝手に死のうとしないで! ばかっ!」

 あくまでも自分の身を削ろうとするラミレスに、フィアーナはキレてしまった。

 大粒の涙をこぼしながら、逃げるようにその場を走り去った。

「聖女を泣かせるとは、君も罪作りな男になったな、ラミレス」

「ご冗談を……猊下、私と取引をしていただけませんか? 神殿にとっても悪い話ではありません」

 フィアーナの後ろ姿を見つめながら、ラミレスは法王に交換条件を持ちかけたのだった。

 

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癒やしの聖女は~
~桜猫*日和~