Oops! It appears that you have disabled your Javascript. In order for you to see this page as it is meant to appear, we ask that you please re-enable your Javascript!

斑の痣2

各話表紙:聖女 癒やしの聖女は~

 唖然としたフィアーナの口の端から、肉汁が垂れ落ちる。

 それを見つめるラミレスの青い瞳がすうっと細くなった。

 それと同時にフィアーナの鼓動がドクンと跳ねた。

 無言なままラミレスに見つめられていると、どんどん羞恥が増していき、フィアーナの瞳が潤んでいく。

 加えて顎はきついし、口の中がいっぱいで少し息苦しい。

「そんな目で見つめないでください。襲いたくなるじゃないですか。私は一向に構いませんが」

「んんーっ……!」
(そんなのダメーっ!)

 フィアーナの心の叫びが届いたのか、そのとき肉が噛み切れた。

 慌てて口元をハンカチで拭き、肉を食道に流し込む。

「はあ……っ、疲れました」
「もう少し堪能できると思ったのに、残念です」

 一言呟くと、ラミレスは残りの肉をあっさりと食べてしまった。

「た、堪能ってなにをですかっ」
「フィアーナのいやらしい顔ですが」

 少しも悪びれた様子もなく、ラミレスは言い切った。

「いやらしくありません!」

 恥ずかしさと怒りがごちゃまぜになって、頬を熱くしながらフィアーナは叫んだ。

「そう思っているのはあなただけです。自覚がないとは罪作りですね」

 そう話すラミレスは何事もなかったかのように食事を続ける。

 もう少し文句を言ってやりたかったフィアーナだったが、口では敵わないのでやめておいた。

「ごちそうさまでした」

 昼食を取り終わると、ラミレスが隣に移動してきた。

「フィアーナ、少しいいですか?」

 ラミレスから先程のふざけた様子は消え失せ、昼食前の神妙な顔が覗く。

 なにか重要なことなのだと察知したフィアーナは静かに頷いた。

「どうしたんですか?」
「袖をめくりますよ」
「ええ」

 フィアーナが返事をすると、ラミレスは彼女の右手を取り、肘のあたりまで袖を捲る。

 すると手首から五センチ程度の場所に、内出血したような青紫色の不気味な斑模様の痣があった。

「昼が近づく少し前から視えていました。それと共にあなたが疲れていく様子も」

 ラミレスはフィアーナの守護者に選ばれ、神の祝福を受けたことで彼女の体の穢れ具合がわかるのだ。

「そう……まだ半分しか癒やしていないのに、もう痣ができてしまったんですね――」

 なるべく認めたくない事実だが、フィアーナ自身うすうす感じていることがある。

 それは年々、いや、日に日に痣のできる間隔が早くなっているということだ。

「前に痣ができたのは昨日の朝でした。でも翌日にまた痣が出るなんてことは今まで一度もありません。以前法皇に相談したときは、あなたの中で中和しきれない分の穢れが、皮膚に痣として現れるのだろうということでした」

「そうですか……」

 ラミレスの言葉にフィアーナは静かにそう答えただけだった。

「この程度ならすぐに浄化できますが、この一週間で痣が頻発して……あなたの身が心配です」

 フィアーナの白く細い腕に顔を寄せ、ラミレスが痣に口づける。

 すると青紫の斑の不気味な痣は、泡が弾けるように光の粒子となって宙に溶けた。

「ありがとう、ラミレス。あなたがいてくれなかったら、わたしは今頃体中痣だらけですね……そのうち肌にこびりついて取れなくなってしまうんでしょうか。……皆には絶対言えませんね。こんな不気味な痣が浮かぶ人間が、聖女だなんて」

「大丈夫です、なにがあっても私があなたを守りますから。それに痣の一つや二つあったところで、私にとってフィアーナが至高の花であることに変わりはありません」

 慈愛に満ちた笑みを浮かべるラミレスは、再びフィアーナの肌に丁寧すぎるほどに丁寧に口づけた。

 ――それはまるで真摯な愛を宣言する、聖なる儀式のようだった。

 

6+
↑読了ついでにポチッと(*´ω`*)桜猫にちゅ~るが贈られます。
↑読了ついでにポチッと(*´ω`*)桜猫にちゅ~るが贈られます。
癒やしの聖女は~
~桜猫*日和~