★2/15:雑記更新 ・「嘘つき聖女候補~」と「座学の女王さま~」をメインに更新中。

告白2

各話表紙:聖女

 フィアーナはラミレスに頼り切ることがわかっていた。

 だから早朝を選び、一人でここまでやってきたのだ。

 それもやはり心細さは拭えない。

 握りしめた拳の中は、じっとりと汗でにじむ。

「……癒やしの力を失ったというのは、どういうことかな、フィアーナ」

 法王の言葉にフィアーナはびくりと体を震わせた。

 これでもう真実を伝えないわけにはいかなくなった。

「猊下のご想像通りです……新たな聖女候補が現れていない今、わたしが聖女でなくなるということは――」

「純潔ではなくなったと、いうわけだね?」

 フィアーナは法王の言葉に小さく頷く。

 問いかける法王は特に怒った様子はない。

「自分が罪深いことをしたという自覚はあります。どんな罰でも受ける覚悟です」

 フィアーナは床に膝を付き、法王の判断を待つ。

「フィアーナ、そう結論を急ぐものではない。私とて君を十年聖女として見守ってきたのだ。なにか理由があるんだろう?」

「……」
(法王さま……こんなわたしの話を聞いてくださるのですか?)

 フィアーナの青く澄んだ瞳から大粒の涙がこぼれ落ちた。

「フィアーナ……十年という長きに渡り聖女の大役を務めてきたのだ。つらいこともたくさんあっただろう……」

 法王はゆっくりと椅子から立ち上がると、跪くフィアーナの前にかがみ、そっと頭を撫でた。

 そのやさしい感触にフィアーナはさらに涙を流した。

「……猊下はこれまでの事件もすべてご存知ですから、そのことに関して申し上げることはありません。ですが……」

 フィアーナは涙を拭いながら、必死に伝える。

「事件とは別に……わたし自身の体調の変化について、ラミレスからお聞きになっていることと思います」

「ああ、確かに聞いている。最近は浄化に時間がかかり、君の体にできる痣がひどく悪化していたようだね」

「はい……そのことで、さらにラミレスに負担をかけてしまっていて……泣かせてしまいました」

「ほう?」

 ラミレスが泣いたと聞いてさすがに法王も驚いたようだ。

 法王から見たラミレスは、常に穏やかで感情を露わにする神官ではなかったからだ。

 過去フィアーナが幾度となく攫われても何食わぬ顔で奪還して、神殿に戻っていた。

 そんな彼が泣いたというのだ。

 余程のことだと法王も思ったのか、神妙な顔つきになる。

「ラミレスがどこまで話しているのかわかりませんが、浄化を終えて涙を流す彼を見ていたら、わたしはなんて罪深いことをしているんだろうと思ってしまって……ううん、違うわ」

 フィアーナはふるふると頭を振った。

「わたしが嫌だったんです。ラミレスを泣かせてまで聖女を続けることが……彼を、愛しているから――」

「フィアーナ……そうか、そうだったのか」

 法王は困ったような嬉しいような複雑な笑みを浮かべた。

 二人が十代の頃から見守ってきたのだ。

 薄々二人の関係には気づいていたが、ここまでとは思っていなかった。

「申し訳ありません、猊下。わたしは、神より、民衆より、ラミレスを選んでしまったんです。全部わたしの心の弱さが原因です。ラミレスはなにも悪くありません」

「個人的には、君たち二人を祝福してやりたいが……困ったね……」

「お願いです、猊下。罰はわたしがすべて受けますから、ラミレスにはなにもしないでいただけませんか。ラミレスはやさしいから……わたしを聖女から解放してくれただけなんです。わたしがそう望んだんです」

 そこにはもう先程まで涙を流していたか弱い女性はいなかった。

 愛する者を守ろうとする、強い意志をもった気高い一人の女性がいた。

 

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癒やしの聖女は~
~桜猫*日和~