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気づかなかったこと2

各話表紙:聖女 癒やしの聖女は~

「ごめん、なさい……っ」

 一度堰を切った涙は止まることを忘れたかのように、どんどん仲間を引き連れてやってくる。

 止めたくても止められず、フィアーナはもどかしい。

「自分を責めるな、フィアーナ。お前の上辺だけしか見てない奴らとは覚悟が違うんだ。お前がなんの不安もなく聖女を続けて、笑っていてくれたら、それで十分なんだよ」

 ラミレスの穏やかで、いつになくやさしい声が鼓膜の奥まで染み込んでくる。

 いつの間にかラミレスはフィアーナの正面に膝をついていて、ハンカチで濡れた頬を拭ってくれている。

 その気遣いが嬉しくて、フィアーナはますます涙があふれて止まらない。

 ――十年。

 言葉にすれば一瞬だが、そこに存在する時間は想像以上に長い。

 世の中の様子もガラリと変わるほどの時間の流れだ。

 そんな途方も無く膨大な時間を、ラミレスは命の危険も顧みず、フィアーナのために費やしてきたのだ。

 美少年から美しい青年へと成長した彼が、若い娘たちから人気があることもフィアーナは知っている。

 聖女だからと体を重ねることさえ叶わない自分より、もっと相応しい相手を探すことだってできるのだ。

 見目麗しいラミレスに声をかけられて落ちない娘などいないだろう。

(それなのにラミレスは、ずっとわたしの傍にいてくれる……普通の恋人みたいに愛し合うこともできないのに)

「久しぶりだな、お前がそんなにボロ泣きするのは。俺が死にかけたとき以来か」

 やさしく愛情に満ちた眼差しをフィアーナに向け、ラミレスは微笑んだ。

「……っ……」

 あまりにもやさしく微笑まれ、フィアーナは胸が切なく締めつけられる。

 その切なさにはビターチョコレートのように、仄かな甘さが含まれている。

「ハンカチ持てるか?」

 ラミレスの問いにコクリと頷くフィアーナ。

「よし、じゃあ持ってろ。お前が泣いてる間に浄化を終わらせる。午後からのお務めが残ってるからな」

 もう一度フィアーナが頷くと、ラミレスは痣のある左腕の袖をぐいっと上まで捲る。

 そこには、上から五つ小さな痣が並んで出現していた。

 その一つ一つにラミレスはそっと口付けを落としていく。

 これまでと同じように、泡が弾けるようにして不気味な青紫の痣は光の粒になる。

 そして宙に溶けるように消えた。

 手首から二の腕に向けてラミレスの唇が移動する。

 距離が近づくにつれ、ラミレスの髪から僅かに甘い柑橘系の香りがする。

 ゆるいパーマのかかった銀髪はふわふわしていて、とても柔らかそうだ。

 フィアーナの一番近くまでラミレスの頭が近づくと、自然と顔を寄せていた。

(やわらかい……そしていい匂い……)

 うっとりとラミレスの銀髪に顔を寄せ、柔らかな感触を味わう。

 ただそれだけで、ものすごく心が落ち着いて幸せな気持ちになる。

「フィアーナ、キスなら髪じゃなくて口にしてくれ」
「きゃっ」

 ラミレスの髪の心地よさに浸りきっていたフィアーナは、いきなり彼が顔を上げたのでびっくりして反射的に顔を引いた。

「涙、止まったな」
「あ……」

 どうやら今の驚きで一気に涙が止まったらしい。

 フィアーナはキョトンとする。

「お前が泣いてる間に浄化を終わらせるつもりだったのに失敗した。まだこっちが残ってる」

 聖衣の裾を膝頭まで捲ると、フィアーナの白くすらりとした足にまた五つ小さな痣があった。

 膝から足首の間にポツポツとできている。

 ラミレスが膝から下の痣をすべて浄化し終えると、二人はようやく昼食を取ることになった。

 

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癒やしの聖女は~
~桜猫*日和~